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124、四つの楔(1)
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何も持たず、リルは外へと歩き出した。
振り返った大樹は廃墟のようで、今にも崩れ落ちそうな儚さに悲しくなる。
それでも……前に進むしかない。
目的地は多分、解っている。リルが一歩足を踏み出そうとすると、
「りーーーるーーーぅ!!」
……目的地の方が先にやって来た。
投擲の礫みたいな勢いで駆けてきた黒狐は、走りながら人に姿を変えて体当たりするようにリルに抱きついた。
「無事か!? 遠くから大樹が枯れるのが見えて急いできたんだ。何があったんだ?」
ぜいぜいと肩で息をして気遣わしげに顔を覗き込んでくるノワゼアに、心が和みそうになるが……今はそれどころではない。
「私は大丈夫。でも……スイウさんが大変なの」
リルは顔を上げて、背の高いノワゼアと目を合わせた。
「私のせいでスイウさんがマガモノに憑かれて大樹が枯れそうなの。このままだと結界が壊れて五百年前の災禍と同じことが起こるかもしれない。だから……私が魔法使いになって、新しい結界を張る」
リルの強い決意に、ノワゼアはゴクリと唾を飲む。
「だからノワ君お願い、力を貸して。私の楔になって」
真摯な緑の瞳に、ノワゼアは自身の真紅の瞳を瞬かせて……、
「それって、リルが我の嫁になるということか?」
リルは驚きに目を見開いたが、すぐにふるふると首を振った。
「ごめん。私、ノワ君の気持ちには応えられない。私には……他に好きな人がいるから」
今まで誤魔化していた気持ちを、はっきりと認める。
「でも、私はノワ君のことを一番信頼している。この森で一番最初にできた友達だもん。あなたの望む形ではないかもしれないけれど、私は魔法使いになったら、森と共にずっとノワ君の傍にいる。だから、結界の楔になって、私と一緒に森を護って欲しい」
リルの懇願に、ノワゼアは呆れたため息をついた。
「リル、お前はどれだけ我儘なことを言っているのか自覚はあるのか?」
「うっ」
相手の好意は受け入れないが、自分の要求は受け入れろなんて、虫が良すぎる。
狼狽えるリルに、ノワゼアはまた一つ深いため息をついて、
「……仕方があるまい」
ポンッとリルの頭を撫でた。
「男を振り回すのは、いい女の特権だ。惚れた弱みだ、リルの願いをきこう」
それを聞いた瞬間、リルの顔にぱっと花が咲く。
「ありがとう、ノワ君!」
両手を取ってブンブン振り回しはしゃぐリルに、ノワゼアは苦笑する。
「今のところは待ってやっても構わない。我の時は長い。そのうちリルの心が我に傾く日も来るだろう。しかし、難儀な道を選んだな」
ノワゼアは意味深に言う。
「人の生は短いぞ。好きになっても、近い内に泣くだけだ」
主語のない台詞だが、何を指しているのかは解る。
……リルが魔法使いになったら、スイウは普通の人間に戻って、森を離れてしまう。
「それでも、好きになっちゃったんだからしょうがないよ」
リルはノワゼアに微笑み返した。
「じゃあ、私は残りの三人を探しに行くね。ノワ君は家でヒメちゃんとスイウさんを護っててくれるかな」
「任せろ」
力強い返事に後押しされて、リルは次の目的地へと走った。
振り返った大樹は廃墟のようで、今にも崩れ落ちそうな儚さに悲しくなる。
それでも……前に進むしかない。
目的地は多分、解っている。リルが一歩足を踏み出そうとすると、
「りーーーるーーーぅ!!」
……目的地の方が先にやって来た。
投擲の礫みたいな勢いで駆けてきた黒狐は、走りながら人に姿を変えて体当たりするようにリルに抱きついた。
「無事か!? 遠くから大樹が枯れるのが見えて急いできたんだ。何があったんだ?」
ぜいぜいと肩で息をして気遣わしげに顔を覗き込んでくるノワゼアに、心が和みそうになるが……今はそれどころではない。
「私は大丈夫。でも……スイウさんが大変なの」
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「私のせいでスイウさんがマガモノに憑かれて大樹が枯れそうなの。このままだと結界が壊れて五百年前の災禍と同じことが起こるかもしれない。だから……私が魔法使いになって、新しい結界を張る」
リルの強い決意に、ノワゼアはゴクリと唾を飲む。
「だからノワ君お願い、力を貸して。私の楔になって」
真摯な緑の瞳に、ノワゼアは自身の真紅の瞳を瞬かせて……、
「それって、リルが我の嫁になるということか?」
リルは驚きに目を見開いたが、すぐにふるふると首を振った。
「ごめん。私、ノワ君の気持ちには応えられない。私には……他に好きな人がいるから」
今まで誤魔化していた気持ちを、はっきりと認める。
「でも、私はノワ君のことを一番信頼している。この森で一番最初にできた友達だもん。あなたの望む形ではないかもしれないけれど、私は魔法使いになったら、森と共にずっとノワ君の傍にいる。だから、結界の楔になって、私と一緒に森を護って欲しい」
リルの懇願に、ノワゼアは呆れたため息をついた。
「リル、お前はどれだけ我儘なことを言っているのか自覚はあるのか?」
「うっ」
相手の好意は受け入れないが、自分の要求は受け入れろなんて、虫が良すぎる。
狼狽えるリルに、ノワゼアはまた一つ深いため息をついて、
「……仕方があるまい」
ポンッとリルの頭を撫でた。
「男を振り回すのは、いい女の特権だ。惚れた弱みだ、リルの願いをきこう」
それを聞いた瞬間、リルの顔にぱっと花が咲く。
「ありがとう、ノワ君!」
両手を取ってブンブン振り回しはしゃぐリルに、ノワゼアは苦笑する。
「今のところは待ってやっても構わない。我の時は長い。そのうちリルの心が我に傾く日も来るだろう。しかし、難儀な道を選んだな」
ノワゼアは意味深に言う。
「人の生は短いぞ。好きになっても、近い内に泣くだけだ」
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……リルが魔法使いになったら、スイウは普通の人間に戻って、森を離れてしまう。
「それでも、好きになっちゃったんだからしょうがないよ」
リルはノワゼアに微笑み返した。
「じゃあ、私は残りの三人を探しに行くね。ノワ君は家でヒメちゃんとスイウさんを護っててくれるかな」
「任せろ」
力強い返事に後押しされて、リルは次の目的地へと走った。
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