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19、王宮へ
ここに来るのは久し振りの気がするわ。
王宮の奥、王族の居館への廊下を進みながら、フルールは不思議な感慨に駆られる。
今日は母の名代で、王宮の居住者であるエリカ殿下に届け物をしに来たのだ。
エリカは先王の弟の娘で、現王の従妹にあたる。嫁ぎ先の某国が内乱で崩壊し、クワント王国に戻ってきたという苦労人の彼女は、ブランジェ公爵夫人の古い友人で、フルールの王太子妃教育の師でもあった。
フルールは博識な彼女が大好きであったが、婚約破棄による教育打ちきりで不義理をしたことを後ろめたくも思っている。
……公爵令嬢にはまったく非がないのだが。
すぐに終わるからと執事のエリックは馬車に残してきた。早く用事を済ませて帰らなくてはと考えていると、
「あ、フルール!」
突然、曲がり角からひょこっと天使のような柔らかい巻毛の少年が顔を出した。第二王子のセドリックだ。
「セドリック殿下、ごきげんよう」
「うん、君に会えてごきげんだよ。居館まで来るなんて珍しいね」
第二王子は人懐っこい子犬のようにフルールに身を寄せてくる。
「ええ、エリカ殿下にお届け物に」
「そっか。従叔母様のご用が済んだら声かけてよ。お散歩しよう。裏庭のミモザが花盛りだよ」
「まあ、素敵」
フルールはにっこり微笑む。
「でも、そろそろ学園の定期試験の時期ですけど、大丈夫ですか?」
「そりゃあ勿論……」
胸を叩くセドリックに、
「全然ダメです」
音もなく背後に立った秘書官マティアスがサラッと断言する。
「前回の試験も算術が酷い有り様で、担当のゴメス先生が泣いてしまうほどで」
「まあ! あのゴメス先生が……」
淡々と述べるマティアスに、フルールは大袈裟に驚いて両手で口を覆う。
「セドリック殿下、お気張りください。算術は基礎が肝心です。わたくしの中等部の頃のノートをお貸ししましょうか?」
「それはいいですね。フルール様は幼稚舎から首席の才女。ぜひお力添えを……」
「あー! もー!」
勝手に話を進める二人に、セドリックが爆発した。
「なんだよ、フルールもマティアスも僕を子供扱いして! 見ててよ、次の試験は良い点取ってやるんだからね!」
頬をパンパンに膨らませて、足音荒く自室に戻っていく第二王子。
残された二人は顔を見合せ苦笑すると、会釈を交わしてその場を後にした。
王宮の奥、王族の居館への廊下を進みながら、フルールは不思議な感慨に駆られる。
今日は母の名代で、王宮の居住者であるエリカ殿下に届け物をしに来たのだ。
エリカは先王の弟の娘で、現王の従妹にあたる。嫁ぎ先の某国が内乱で崩壊し、クワント王国に戻ってきたという苦労人の彼女は、ブランジェ公爵夫人の古い友人で、フルールの王太子妃教育の師でもあった。
フルールは博識な彼女が大好きであったが、婚約破棄による教育打ちきりで不義理をしたことを後ろめたくも思っている。
……公爵令嬢にはまったく非がないのだが。
すぐに終わるからと執事のエリックは馬車に残してきた。早く用事を済ませて帰らなくてはと考えていると、
「あ、フルール!」
突然、曲がり角からひょこっと天使のような柔らかい巻毛の少年が顔を出した。第二王子のセドリックだ。
「セドリック殿下、ごきげんよう」
「うん、君に会えてごきげんだよ。居館まで来るなんて珍しいね」
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「ええ、エリカ殿下にお届け物に」
「そっか。従叔母様のご用が済んだら声かけてよ。お散歩しよう。裏庭のミモザが花盛りだよ」
「まあ、素敵」
フルールはにっこり微笑む。
「でも、そろそろ学園の定期試験の時期ですけど、大丈夫ですか?」
「そりゃあ勿論……」
胸を叩くセドリックに、
「全然ダメです」
音もなく背後に立った秘書官マティアスがサラッと断言する。
「前回の試験も算術が酷い有り様で、担当のゴメス先生が泣いてしまうほどで」
「まあ! あのゴメス先生が……」
淡々と述べるマティアスに、フルールは大袈裟に驚いて両手で口を覆う。
「セドリック殿下、お気張りください。算術は基礎が肝心です。わたくしの中等部の頃のノートをお貸ししましょうか?」
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「あー! もー!」
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「なんだよ、フルールもマティアスも僕を子供扱いして! 見ててよ、次の試験は良い点取ってやるんだからね!」
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