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4、ついに始まる交通量調査
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受け取った腕章を付けるために、お気に入りのTシャツに安全ピンで穴を空けるのは、なかなか心を痛めるものだった。
そして、僕を含めた5人と高橋氏が円になり、もう1人は高橋氏から受け取ったデジカメを持ち、少し離れたところから円になった僕たちを撮影しようとしている。
一体、何の儀式だ??
高橋氏の指示で各々テキストを広げ、読んでいる風のポーズをする。
高橋氏も黙ったままだ。
「カシャッ」
撮影された…
一体何??
「じゃ、荷物持って付いてきて下さい。」
何事も無かったかのように荷物を持ち、7人全員でゾロゾロと移動を始めた。
後々聞いた話によると、あの撮影は「立ち上げ写真」といって、無事に全員揃い調査を開始したことの証拠になる、とのことだった。
しばらく歩くと、調査地点と思われる交差点に着いた。
幹線道路と一般道路からなる、交通量の多い交差点だった。
近くに学校があるのか、朝練に向かう中学生や犬の散歩をする高齢者も歩道を歩いている。
なんとなく、人通りがあることを不快に感じた。
雨は止んだものの、依然として空は曇っている。
ちなみに少し寒い…
「じゃあ、テキストの通りに椅子を配置して、順番を決めてください。7時から開始でお願いします。」
高橋氏はそう言い残し、ハイエースの方に戻って行った。
説明がシンプル過ぎる…
そして高橋氏の後ろ姿を目で追っていたほんのわずかな間に、6人のうち3人がすでにペアを組んで交差点の西側と南側に向かっていった。
どうやら面識のある3人だったようだ。
僕を含めた残り3人が必然的にペアとなり、順番の話になった。
「じゃあ、北側のスタートは私が入りましょう。2時間先に入りますね。」
年配男性の1人が率先してスタートをきってくれることになった。
すると、もう1人の年配男性が、
「東は私が入りましょうか…」
ん?
表情に少し不快感が表れている。
この時はその理由が分からなかったが、
「2時間仕事⇒1時間休憩」
を7時から19時まで繰り返していくと、
3人のうち、最初に2時間仕事した人だけが18時に勤務終了となる。
つまり「1時間早上がり」となるのだ。
この2名の年配男性達はおそらく交通量調査の経験者。
一方の、一見親切に見えたスタート2時間の勤務は実は自己中心的な行動で、話し合い無しに早上がり権利を奪われたことに対してもう一方の男性が腹を立てたのである。
交通量調査の世界で生きる人達の多くは、時間と金に対しての執着心が人一倍強いのかもしれない。
さて、必然的にスタートの1時間、つまり7時から8時がいきなり休憩となった僕は、北側の交差点に向かう男性に付いて行った。
男性はまず、テキストの指示通りの場所にパイプ椅子を設置。
高橋氏から手渡された手提げ袋の中から「交通量調査実施中」と書かれたA4サイズの札を出し、椅子の背もたれ外側に貼り付ける。
ちなみに、貼り付けるための養生テープは手提げ袋に貼り付けてあったものだ。
次に、座るためのパイプ椅子と向かい合わせる形でもう1脚のパイプ椅子を設置。
座面には手提げ袋から取り出した6連カウンターを並べた。
安全ヘルメット、安全チョッキ、私物のマスクを身につけ、
10分ごとにカウンターの数字を転記する「調査表」を手に持って準備完了。
手際が良すぎる…
間違いなくベテランだった。
6時50分。
調査開始10分前だ。
高橋氏が来た。
「準備OKですか??」
「OKです。」
4箇所全て確認して、どこかに電話をかけていた。
…
7時。
調査開始だ。
北側の男性も車が通る度に、カチカチとカウンターを押し始めた。
ついに始まった。
僕は出来るだけ平静を保っていたものの、実は焦っていた。
どうにか落ち着かせようと、また練習の意味も込めて、北側の男性と同じ方向を見ながらイメトレを始めた。
「東から大型貨物、普通車、普通車。」
「南からバス、普通車、普通車、2輪車、普通車」
なんとか、対応出来そうだ。
北側の男性が腕時計を見て、調査表に数字を転記している。
そして転記しながらもカウンターを押している。
10分ごとの転記が厄介だなと感じつつも、なんとか対応できそうなことを実感し、僕の焦りはだいぶ落ち着いていた。
7時30分。
僕は少し時間に余裕を持って、8時に交代する交差点の東側に向かった。
それにしても、東側の男性も手慣れたものだ。
調査表の書き方等を横から覗き見したり、軽くイメトレをしてついに交代の時間が来た。
ヘルメット、その他諸々を受け取り、着席。
カチカチ。
記念すべき最初のカウントは、軽トラだった。
カチカチ。
カチカチ。
時間は8時10分。
カウントも、最初の転記もなんとか無事に終え、少し安心。
だが、この後、
僕は大きな敵との闘いに遭遇することとなる…
そして、僕を含めた5人と高橋氏が円になり、もう1人は高橋氏から受け取ったデジカメを持ち、少し離れたところから円になった僕たちを撮影しようとしている。
一体、何の儀式だ??
高橋氏の指示で各々テキストを広げ、読んでいる風のポーズをする。
高橋氏も黙ったままだ。
「カシャッ」
撮影された…
一体何??
「じゃ、荷物持って付いてきて下さい。」
何事も無かったかのように荷物を持ち、7人全員でゾロゾロと移動を始めた。
後々聞いた話によると、あの撮影は「立ち上げ写真」といって、無事に全員揃い調査を開始したことの証拠になる、とのことだった。
しばらく歩くと、調査地点と思われる交差点に着いた。
幹線道路と一般道路からなる、交通量の多い交差点だった。
近くに学校があるのか、朝練に向かう中学生や犬の散歩をする高齢者も歩道を歩いている。
なんとなく、人通りがあることを不快に感じた。
雨は止んだものの、依然として空は曇っている。
ちなみに少し寒い…
「じゃあ、テキストの通りに椅子を配置して、順番を決めてください。7時から開始でお願いします。」
高橋氏はそう言い残し、ハイエースの方に戻って行った。
説明がシンプル過ぎる…
そして高橋氏の後ろ姿を目で追っていたほんのわずかな間に、6人のうち3人がすでにペアを組んで交差点の西側と南側に向かっていった。
どうやら面識のある3人だったようだ。
僕を含めた残り3人が必然的にペアとなり、順番の話になった。
「じゃあ、北側のスタートは私が入りましょう。2時間先に入りますね。」
年配男性の1人が率先してスタートをきってくれることになった。
すると、もう1人の年配男性が、
「東は私が入りましょうか…」
ん?
表情に少し不快感が表れている。
この時はその理由が分からなかったが、
「2時間仕事⇒1時間休憩」
を7時から19時まで繰り返していくと、
3人のうち、最初に2時間仕事した人だけが18時に勤務終了となる。
つまり「1時間早上がり」となるのだ。
この2名の年配男性達はおそらく交通量調査の経験者。
一方の、一見親切に見えたスタート2時間の勤務は実は自己中心的な行動で、話し合い無しに早上がり権利を奪われたことに対してもう一方の男性が腹を立てたのである。
交通量調査の世界で生きる人達の多くは、時間と金に対しての執着心が人一倍強いのかもしれない。
さて、必然的にスタートの1時間、つまり7時から8時がいきなり休憩となった僕は、北側の交差点に向かう男性に付いて行った。
男性はまず、テキストの指示通りの場所にパイプ椅子を設置。
高橋氏から手渡された手提げ袋の中から「交通量調査実施中」と書かれたA4サイズの札を出し、椅子の背もたれ外側に貼り付ける。
ちなみに、貼り付けるための養生テープは手提げ袋に貼り付けてあったものだ。
次に、座るためのパイプ椅子と向かい合わせる形でもう1脚のパイプ椅子を設置。
座面には手提げ袋から取り出した6連カウンターを並べた。
安全ヘルメット、安全チョッキ、私物のマスクを身につけ、
10分ごとにカウンターの数字を転記する「調査表」を手に持って準備完了。
手際が良すぎる…
間違いなくベテランだった。
6時50分。
調査開始10分前だ。
高橋氏が来た。
「準備OKですか??」
「OKです。」
4箇所全て確認して、どこかに電話をかけていた。
…
7時。
調査開始だ。
北側の男性も車が通る度に、カチカチとカウンターを押し始めた。
ついに始まった。
僕は出来るだけ平静を保っていたものの、実は焦っていた。
どうにか落ち着かせようと、また練習の意味も込めて、北側の男性と同じ方向を見ながらイメトレを始めた。
「東から大型貨物、普通車、普通車。」
「南からバス、普通車、普通車、2輪車、普通車」
なんとか、対応出来そうだ。
北側の男性が腕時計を見て、調査表に数字を転記している。
そして転記しながらもカウンターを押している。
10分ごとの転記が厄介だなと感じつつも、なんとか対応できそうなことを実感し、僕の焦りはだいぶ落ち着いていた。
7時30分。
僕は少し時間に余裕を持って、8時に交代する交差点の東側に向かった。
それにしても、東側の男性も手慣れたものだ。
調査表の書き方等を横から覗き見したり、軽くイメトレをしてついに交代の時間が来た。
ヘルメット、その他諸々を受け取り、着席。
カチカチ。
記念すべき最初のカウントは、軽トラだった。
カチカチ。
カチカチ。
時間は8時10分。
カウントも、最初の転記もなんとか無事に終え、少し安心。
だが、この後、
僕は大きな敵との闘いに遭遇することとなる…
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