交通量調査物語

がしげげ

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15、偏見と後悔に反省

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カチカチ。
カチカチカチカチ。

7時からの交通量調査。
僕は7時から9時の2時間スタートになった。

カチカチ。
大型貨物、大型貨物、小型貨物、乗用車、大型貨物…
前回の調査とは明らかに車種の傾向が違う。
まだ2回目の調査だが、僕はその土地土地による交通の状況には違いがあることを実感した。

そして7時30分頃。
登校の時間帯に入ったのだろう。
田舎の国道だということもあり、小学生や中学生はヘルメットを被り、自転車で傍を通り始めた。

ブォーン!

それにしてもこの道路、歩道が整備されていない部分がある上に、大型貨物のトラックがなかなかのスピードで行き交う。
その路側帯をこうやって子供達が自転車で通行する。
自分が親の立場だったら心配でならないだろうな…
などと、思いながら、
カチカチカチカチ。

ちなみに今回は車だけでなく、
こういった自転車や、歩行者の動きもカウントしなければならなかった。
車も人も、田舎であることが幸いして母数が少ないからなんとかカウント出来るものの、なかなか忙しい作業だ。

以前、高橋氏から教えてもらった話に、交通量調査は、道路を管理する国土交通省や自治体からの発注が多いと聞いていたが、この忙しさもこういった子供達の命を守るための施策に役立てばなぁ、と純粋に思った。



時刻は8時、交差点の反対側では板野氏から指原氏へのバトンタッチが行われていた。

それにしても、なんだか先程から腕が痒い。 

ん…?
腕を見ると蚊にかまれた跡。
と、同時に、

プーン。

一瞬にして鳥肌が立つこの音。


確かに田舎で周りにこれだけ草が生えてたら、
そりゃいる…
最悪だ…
僕は1日、蚊に刺されのを耐え続けなければならない…

そんな時だった。

「おつかれさん。」

たった今、反対側の交差点で交代を済ませた板野氏が声をかけてくれた。

「蚊ぁおるやろ。蚊取り線香つけとくわ。」

板野氏は私物のリュックから、渦巻状の蚊取り線香とライターを取り出し、僕が座るパイプ椅子の下に備え付けてくれた。
と、同時に懐かしい香りが漂い始める。
そういや、祖父母の家にはいつもこれがあったっけ。毎年夏休みに帰省する度に嗅いでいた香りだ。

板野氏の心遣いと、大好きだった祖父母との思い出により、僕は油断したら泣きそうな心情だった。

「ありがとうございます。さっきから痒かったので、助かります。」

板野氏は砕けた敬礼のような仕草をして、休憩に出ていった。



このこともあり、高橋チームに入って間もない僕は、深く反省していた。
それは、交通量調査員裏メンに対して持っていた、自分の偏見に対してだ。
正直、日雇いという雇用形態や作業内容、見た目などから、僕は交通量調査に対して底辺の仕事といったイメージを持ってしまっていたのだ。    

もちろん色々な人がいるのは分かっているが、高橋チームに限らず、他のチームでもある程度は共通すると思う。
大変失礼な表現だが、

交通量調査員の裏メンは「まとも」だ。

まず、本来当たり前のことかもしれないが、決められた時間はしっかり守る。
集合時間や交代時間など、遅れるような気配を感じない。
次に、準備がしっかりしている。
蚊取り線香もそうだが、暗くなった際の懐中電灯、雨が降った際に荷物を守るための大きなビニール袋 などなど…
色んなことを想定した準備がしっかりなされている。
そして何より温かさがある。
チーム内の会話や、新人の僕への心遣いなど、人と人との間に生まれる温もりを僕は久しぶりに感じた気がした。

裏メンの人達は、僕がこれから進もうとしているサラリーマン社会や、これまで経験してきた学生社会のように、周りの目を気にして「演じる」ことは苦手な人達かもしれない。

ただ、温かさを持ったまともな人達であること、を僕は痛感し、反省していた。

そして、大学は行くだけで就職面接もドタキャンする自分が、心の底から情けないと感じた。


    
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