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018. 私をお空へ連れてって
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——電子世界・商丘帝国
「このメタ世界からイルミナート政権は消え去ったのよね」
「まだ全世界から消え去った訳じゃないけどね」
「まあ、管理者権限を奪ったのは大きいよね」
この世界の管理者権限は、倒した人に移るようになっている。従って、管理者を倒した私に権限が転がり込んできたのである。それでいいのかよ。
「こうしてメタ世界は平和になりましたとさ、おしまい」
そう言いたい所であったが、新たな脅威が現れた。
「最近相次ぐ飛行機墜落事件の犯人から電信です」
直接話があるのかと思えば、一方的な音声メッセージであった。
「我が名はユミ、本日24時までに管理者権限の譲渡か、もしくは結婚を要求する」
いきなり無茶な要求である。
「さもなくば『空の民』一同を挙げて、貴様の身柄を確保する」
「はぁ?」
真っ先に声を挙げたのはミコであった。
「マサのお嫁はこの私ですが?」
もう1人の妻・ユキノの存在を忘れているのはさておき。
「こうなったら、逆に叩き潰してやるわよ!!! 全員準備しなさいっ!!!」
殆どミコの一存により、正体も分からない『空の民』との戦いが幕を開けた。
「まずはマサの身柄を先に確保するわよ」
何を言い出したかと思えば、ミコはいきなり私を連れ出して家に軟禁した。行動が早すぎる。
「次は不届き者を成敗しに行くわよ!!!」
「索敵機、全機発進っ!!!」
電信が来たのは西の方面から。という訳で、先の戦争に使って大量に余っている戦闘機を索敵に運用し始めた。
「相次いで墜落している部隊があります」
「そこよ、そこにロケットを撃ち込んで!!!」
最新鋭の兵器であるロケットを使い、『空の民』を撃破しようとするミコ。しかしその思惑は大いに外れた。
「ロケットを後方から確認、間もなく目標地点に……あっ!?」
「戦闘機よりも更に上空から、岩のようなものが落ちてきています」
「直径50cmほどの岩が次々落ちてきています、我が機も被弾っ……」
こうして討伐作戦の結果が出ないまま、24時間が経った。
「管理者権限も結婚も選ばなかったため、今宵、マサの身柄を確保する」
この音声メッセージが届くと同時に、家の中で物音がした。
「やあ、こんばんは」
知らない女の子が現れた。赤いドレスに身を包んだ金髪赤眼の少女。
「貴女が、今から私を連れ去るというユミさん?」
「そうよ」
ずっと監禁されるのも気に食わないし、ちょっと連れ去られてみよう。それに、あとでミコがゴネる姿も見てみたい。
「是非連れ去って頂けたら」
そう返答すると、ユミは驚きながらも言う。
「『私をお空へ連れてって』という訳ね」
透明化により堂々と警戒の輪を潜り抜け、ユミが乗ってきた乗り物まで辿り着く。
「これは……?」
玉ねぎ型UFOと言えば良いのだろうか。極北の国にありそうなデザインのUFOである。子供のお絵描きによくあるロケットにも近い形である。
「これに乗って、空まで行くわよ」
ユミの操縦する玉ねぎ型UFOは、外から見れば狭いのに、中はとても広かった。
——現実世界・マサの家
「ねぇ?」
ちょっとムスっとした顔で話しかけてくるミコ。十中八九『わざと連れ去られた事への文句』なのだろうけれど。
「どうしたの?」
「どうしたのも何も、わざと連れ去られるってどういうつもり?」
ニコニコした顔で話しかけてくるのが若干怖い。
「これは罰ゲームですよね? ね?」
有無を言わさず私に頷かせるミコ。
「今日は私じゃないわよ」
ミコじゃない? と不思議に思っていると、インターホンの音が聞こえる。
「既に呼んであるわよ」
何それ怖い。タイキックでもされるのだろうか。
「はーい」
ミコのウキウキ声も相まって、とても怖い。
扉の先に居たのは……雪乃だった。
「今日は雪乃ちゃんとデートして貰います!!!」
「えっ?」
2人してハモってしまった。どうやら雪乃も聞かされていなかったらしい。
「雪乃ちゃんはマサを私に譲ってくれたのよねー。でも、遠慮する必要はないわよ!!!」
雪乃がポカーンとする中、ミコは私を扉から追い出して言う。
「2人で楽しんでいらっしゃーいっ」
バタンという音と共に扉が閉じられ、鍵を掛ける音もする。
「……どうする?」
「締め出されちゃったし……ミコちゃんの言うようにデートでも?」
雪乃の提案に乗ろう。しかし、どこが良いだろうか。
「地主神社に行ってみたいな」
うん。この流れどこかで見た事がある気がする。そんな事を考えながらも、私たち2人は市バスの清水道から歩き始めた。
地主神社は、清水寺の一角にある良縁祈願の神社である。
「あそこには恋占いの石っていうのがあってね」
ここも何か聞いたような。
「石から石へと目を閉じて辿り着けると、ご利益があるらしいの」
そういう訳で、清水寺境内の地主神社まで行く事となった。
「……どこ?」
今度は神社自体が見つからないという困った事態になった。暫く探していると、音羽の滝より少し戻った所に神社があった。
「こんな所に……」
清水寺は何度か来た事があったが、この神社に来るのは初めてである。
観光客の多い中、雪乃は恋占いの石に挑戦する。
「ちょっと右よ」
「いや、左」
周りから教えても良いとされているあたり、スイカ割りの元ネタなのではとも思う。
「着いたわ!!!」
結局1分もせずに達成してしまった。
「この石、早く到達すればするほど、早く恋が成就するんだって」
初めて聞いた話である。
「御神籤には『良い人です信じなさい』ってあったのよねー」
何だか上機嫌な雪乃。
「……という訳で、貴方を信じます!!!」
えっ。
ミコが言ってたの、ホントだったんだ。
確かに雪乃は可愛いし、ミコみたく無茶ぶりをしない。でもミコもまた好きである。
「実はね……もうミコにはOK貰ってるんだ」
どうして当事者でもないのにOK出してるの!? いや、ある意味当事者か(?)
「勿論、嬉しいけど……、取り敢えずミコも交えて話そうか」
そういう訳で、一旦家に戻った。
「このメタ世界からイルミナート政権は消え去ったのよね」
「まだ全世界から消え去った訳じゃないけどね」
「まあ、管理者権限を奪ったのは大きいよね」
この世界の管理者権限は、倒した人に移るようになっている。従って、管理者を倒した私に権限が転がり込んできたのである。それでいいのかよ。
「こうしてメタ世界は平和になりましたとさ、おしまい」
そう言いたい所であったが、新たな脅威が現れた。
「最近相次ぐ飛行機墜落事件の犯人から電信です」
直接話があるのかと思えば、一方的な音声メッセージであった。
「我が名はユミ、本日24時までに管理者権限の譲渡か、もしくは結婚を要求する」
いきなり無茶な要求である。
「さもなくば『空の民』一同を挙げて、貴様の身柄を確保する」
「はぁ?」
真っ先に声を挙げたのはミコであった。
「マサのお嫁はこの私ですが?」
もう1人の妻・ユキノの存在を忘れているのはさておき。
「こうなったら、逆に叩き潰してやるわよ!!! 全員準備しなさいっ!!!」
殆どミコの一存により、正体も分からない『空の民』との戦いが幕を開けた。
「まずはマサの身柄を先に確保するわよ」
何を言い出したかと思えば、ミコはいきなり私を連れ出して家に軟禁した。行動が早すぎる。
「次は不届き者を成敗しに行くわよ!!!」
「索敵機、全機発進っ!!!」
電信が来たのは西の方面から。という訳で、先の戦争に使って大量に余っている戦闘機を索敵に運用し始めた。
「相次いで墜落している部隊があります」
「そこよ、そこにロケットを撃ち込んで!!!」
最新鋭の兵器であるロケットを使い、『空の民』を撃破しようとするミコ。しかしその思惑は大いに外れた。
「ロケットを後方から確認、間もなく目標地点に……あっ!?」
「戦闘機よりも更に上空から、岩のようなものが落ちてきています」
「直径50cmほどの岩が次々落ちてきています、我が機も被弾っ……」
こうして討伐作戦の結果が出ないまま、24時間が経った。
「管理者権限も結婚も選ばなかったため、今宵、マサの身柄を確保する」
この音声メッセージが届くと同時に、家の中で物音がした。
「やあ、こんばんは」
知らない女の子が現れた。赤いドレスに身を包んだ金髪赤眼の少女。
「貴女が、今から私を連れ去るというユミさん?」
「そうよ」
ずっと監禁されるのも気に食わないし、ちょっと連れ去られてみよう。それに、あとでミコがゴネる姿も見てみたい。
「是非連れ去って頂けたら」
そう返答すると、ユミは驚きながらも言う。
「『私をお空へ連れてって』という訳ね」
透明化により堂々と警戒の輪を潜り抜け、ユミが乗ってきた乗り物まで辿り着く。
「これは……?」
玉ねぎ型UFOと言えば良いのだろうか。極北の国にありそうなデザインのUFOである。子供のお絵描きによくあるロケットにも近い形である。
「これに乗って、空まで行くわよ」
ユミの操縦する玉ねぎ型UFOは、外から見れば狭いのに、中はとても広かった。
——現実世界・マサの家
「ねぇ?」
ちょっとムスっとした顔で話しかけてくるミコ。十中八九『わざと連れ去られた事への文句』なのだろうけれど。
「どうしたの?」
「どうしたのも何も、わざと連れ去られるってどういうつもり?」
ニコニコした顔で話しかけてくるのが若干怖い。
「これは罰ゲームですよね? ね?」
有無を言わさず私に頷かせるミコ。
「今日は私じゃないわよ」
ミコじゃない? と不思議に思っていると、インターホンの音が聞こえる。
「既に呼んであるわよ」
何それ怖い。タイキックでもされるのだろうか。
「はーい」
ミコのウキウキ声も相まって、とても怖い。
扉の先に居たのは……雪乃だった。
「今日は雪乃ちゃんとデートして貰います!!!」
「えっ?」
2人してハモってしまった。どうやら雪乃も聞かされていなかったらしい。
「雪乃ちゃんはマサを私に譲ってくれたのよねー。でも、遠慮する必要はないわよ!!!」
雪乃がポカーンとする中、ミコは私を扉から追い出して言う。
「2人で楽しんでいらっしゃーいっ」
バタンという音と共に扉が閉じられ、鍵を掛ける音もする。
「……どうする?」
「締め出されちゃったし……ミコちゃんの言うようにデートでも?」
雪乃の提案に乗ろう。しかし、どこが良いだろうか。
「地主神社に行ってみたいな」
うん。この流れどこかで見た事がある気がする。そんな事を考えながらも、私たち2人は市バスの清水道から歩き始めた。
地主神社は、清水寺の一角にある良縁祈願の神社である。
「あそこには恋占いの石っていうのがあってね」
ここも何か聞いたような。
「石から石へと目を閉じて辿り着けると、ご利益があるらしいの」
そういう訳で、清水寺境内の地主神社まで行く事となった。
「……どこ?」
今度は神社自体が見つからないという困った事態になった。暫く探していると、音羽の滝より少し戻った所に神社があった。
「こんな所に……」
清水寺は何度か来た事があったが、この神社に来るのは初めてである。
観光客の多い中、雪乃は恋占いの石に挑戦する。
「ちょっと右よ」
「いや、左」
周りから教えても良いとされているあたり、スイカ割りの元ネタなのではとも思う。
「着いたわ!!!」
結局1分もせずに達成してしまった。
「この石、早く到達すればするほど、早く恋が成就するんだって」
初めて聞いた話である。
「御神籤には『良い人です信じなさい』ってあったのよねー」
何だか上機嫌な雪乃。
「……という訳で、貴方を信じます!!!」
えっ。
ミコが言ってたの、ホントだったんだ。
確かに雪乃は可愛いし、ミコみたく無茶ぶりをしない。でもミコもまた好きである。
「実はね……もうミコにはOK貰ってるんだ」
どうして当事者でもないのにOK出してるの!? いや、ある意味当事者か(?)
「勿論、嬉しいけど……、取り敢えずミコも交えて話そうか」
そういう訳で、一旦家に戻った。
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