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5.荷物持ちだと思っていたのに荷物持ちではなかった-2-
しおりを挟む異世界と言えば童話に出てきそうな中世ヨーロッパ風の街並みと馬車がお約束だけど、古代中国風の街並みと牛車も趣と情緒、古代の息吹と風情を感じる事が出来る。
牛車って平安時代のイメージしかなかったけど・・・そういえば古代中国を舞台にした某ゲームをしていた時も偉い人の乗り物として牛車が出ていたわね。
鉄筋コンクリートのビルとアスファルト舗装を走る自動車を見慣れている私には新鮮な光景でしかなかったわ。
「ホクト、鳳凰州の街並みが珍しいか?」
「はい。まるで唐を舞台にした乙女ゲームの世界に迷い込んだかのようです」
「乙女?ゲーム?ホクト、そなたは時々俺が理解出来ぬ言葉を口にするのだな・・・」
「も、申し訳ございません!」
異世界に乙女ゲームという言葉が存在しない事を思い出した私は翠耀さんに謝ったわ。
「その言葉はきっとそなたと同郷の者でない限り意味が理解出来ないのであろうな・・・」
翠耀さんの顔がどことなく哀しそうに見えたのは・・・気のせいかな?
「まずは王母娘娘の廟を詣で、その後は食事をしないか?」
暁華国の一般常識は何とか覚えたけど、神話とかを知らない私は翠耀さんと一緒に王母娘娘の廟を詣でたの。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
絢爛豪華な廟の中央には夢(?)で見た妖艶美女こと王母娘娘の像が祀られていたわ。
この人・・・見た目は本当に綺麗なのよ。
像も忠実に王母娘娘の姿を再現しているのよ。
封神演義の紂王が女媧像を見て「人間の女より美しい」とか「傍に侍らせたい」という類の詩を書き記したのが何となくだけど分かる気がするわ・・・。
それくらいの佳人なの!
私にビッチになれと勧めるとんでもないクズな性格をしているけどさ!
誰がクズですって?
水川 北斗!
私は貴女に女の悦びと母になる喜びを知って欲しい一心でイケメン達を侍らせる事を勧めたのです!
突然聞こえて来た声に私は辺りをキョロキョロと見渡すのだけど・・・誰も居なかったわ。
「ホクト?」
「何でもありません。・・・・・・どうやら私の気のせいだったみたいです」
この世界には女性が存在しないもの。
女の人の声が聞こえるなんて・・・
もしかして二千年以上前に男に虐げられた無念が晴れず最強の怨霊と化してしまった女の人の声!?
最早ホラーでしかないじゃない!!!
水川 北斗!
私の話を聞きなさい!
王母娘娘を祀る廟から出て行こうとしたら、また声が聞こえてきたの。
んっ?
良く聞くと・・・この声、どこかで聞き覚えがあるような・・・?
(もしかして・・・異世界召喚に巻き込まれた私を日本に戻す事が出来ない王母娘娘、ですか?)
ええ!
貴女に女の悦びと母になる喜びを知って欲しい一心で、私を象徴する桃の花の痣と永遠の処女という能力を授けた王母娘娘ですわ!!!
私を罵った貴女に本当は盥を落としたかったのですが、そのような事をすれば私の沽券に関わるので我慢しましたわ!
(盥を落とすって〇リフのコントかよ!!!)
心の中でだけど思わずツッコミを入れてしまったわよ!
(王母娘娘!私は一夫多妻も一妻多夫も嫌です!神仙の世界の男女比率を正常にする為だけに一妻多夫をしなければいけないのであれば、私は死ぬまでティンカーベルでありたいです!!!)
ティンカーベル・・・
それは困りましたわね・・・
王母娘娘・・・女神なのにティンカーベルの意味を知っているのね
私としては吉田 真白のように、貴女にも女の悦びと母になる喜びを知って欲しいのですが・・・
水川 北斗
要するに貴女は一夫多妻も一妻多夫が嫌なのですよね?
ただ一人の男性を愛し、ただ一人の男性に愛される一生を送るのは嫌なのですか?
(それは・・・嫌ではないです)
寧ろそうあるのが理想だけど、誰かに女とばれたら皇帝に引き渡されるか、他の男に女児を産み落とす為の道具として利用されそうな気がするのよ・・・。
水川 北斗
それに関しては大丈夫ですわ
貴女の額には私を象徴する桃の花の痣がある
それは即ち私の加護を受けている証
私を象徴する花の痣を持つ者を粗略に扱う男など存在しませんわ
寧ろ貴女が殿方を選ぶ立場にある
それに・・・貴女には誰よりも貴女に想いを寄せている殿方が居るではありませんか!
(私に想いを寄せている殿方が居る?何て物好きな・・・!)
王母娘娘は誰の事を言っているのかしら?
心当たりがない私は首を傾げたわ。
幸いな事に私は魔法・・・仙術が使える。
無理やり襲われそうになったら護身術と仙術で撃退すればいいし、生理的に受け付けない男と結婚しなければいけないのであれば逃げればいい!
おひとり様が理想だけど、結婚するとしたら・・・そうね、小市民な私としては分相応な男性がいいわ。
私だけを愛してくれる男性が──・・・。
水川 北斗
貴女・・・本当に鈍いですわね・・・
彼が本当に気の毒ですわ・・・
(王母娘娘?)
呆れたように溜め息を漏らした後、本当に大切なものは身近にあるように貴女を愛する男性(ひと)は近くに居るのだと呟いたかと思うと王母娘娘の声が聞こえなくなったの。
「ホクト?どうかしたのか?」
熱でもあるのか?と呟いた翠耀さんの端正な顔が近づいてきて私の額に触れようとしたのだけど・・・今の私は鉢巻きで額を覆っているから触れる事が出来ないの。
「だ、大丈夫!大丈夫です!熱はありません!」
鉢巻きを取られたくない私は必死になって熱を測ろうとする翠耀さんを拒んだわ。
「そうか・・・。王母娘娘への祈りは済んだ事だし次は予約している飯店で食事・・・いや、仕立て屋に行くのが先だな」
「わ、分かりました!」
使用人が雇い主と一緒に食事をするなんて考えられない。
友人と一緒に食事する為に服を新調し、今着ている服を屋敷に持って帰って欲しいのだと思った私は翠耀さんと仕立て屋に向かったわ。
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