BLゲームに転生した

白雪の雫

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死亡ENDなどご免被る!!

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「お父様、お母様、お願いがございます」
娘の奇妙なお強請りに眉を顰めた国王夫妻であったが、今の時世を考えてみたら当然の事だと考えた二人は第二王女の希望を聞き入れる。
第二王女ことフェリシアの願い
それは兵法と武芸の師を自分に付けて欲しいというものだった。
一国の王女といえば純粋無垢で世間知らず。
蝶よ花よと育てられフォーク(日本で言えば箸)より重たい物など持った事ないというイメージを抱く人がいるかも知れない。
本来であればフェリシアもそういう風に育つはずだったのだが、彼女にしてみればそれこそ己の生死に深く関わる事だったので、そのような姫になる訳にはいかなかった。
何故ならここはBLゲームに似た世界。
それもフェリシアは自分から夫を奪ったヒロインならぬ主人公を虐げる人物なのだ。
彼女がそのようになってしまったのは夫・ギュスターヴが正式な后でしかも跡取りを生んだ自分を疎ましく思い後宮の隅へと追いやっただけではなく腹違いの弟であるイシュティア───彼こそが後宮の主だと言わんばかりに寵愛したからだ。
ゲームの中ではイシュティアに仕える侍女達からもフェリシア及び彼女の侍女達が見下され馬鹿にされるのだ。
僅か十六歳で異国へと嫁ぎ夫からは子供を産む為の道具としか見做されず、お前にはもう用がないのだとその後は後宮で囚人のように閉じ込められる(役目を果たしたのだから自分も別の男と楽しめばいいと思ったのだが、夫の監視の目があったので出来なかった)
ゲームのフェリシアはある日、夫がいない時を狙いイシュティアを拷問にかける。





犯罪奴隷達による輪姦
発情期の犬や馬に犯させる





まぁ、このようにフェリシアはイシュティアに積年の恨みをぶつけるのだが、ヒロインのピンチに颯爽と登場する正義のヒーローみたく弟を救い出したギュスターヴは観衆の前で彼女を馬裂きの刑にしたのだ。
攻略対象としては異母兄以外に宰相の息子、近衛騎士団長の息子、幼馴染にして付き人、隣国の王、南国の皇子が、そしてライバルとなる女性達が存在するのだが、最終的に死ぬのはフェリシアだけだ。(隣国の王は奥さんとして迎えた姫を正妃として遇していたし、幼馴染には付き合っている彼女はいない。宰相と近衛騎士団長の息子、南国の皇子には許嫁がいるものの自分が彼女達をここまで追い詰めたと自覚しているのか、神殿送りで済ませている)
ギュスターヴを攻略する前のフェリシアの簡単な紹介を目に通しただけのプレイヤーからは





フェリシア、自業自得www
王女として育ったんだからさ、夫に愛人がいてもどーんと構えてスルーしろよwww





といった類の意見や感想が数多く出たのだが、先にも述べたようにギュスターヴはフェリシアを隣国の王のように正妻として扱わなかっただけではなく、子供を産むだけの道具としてしか見ていなかった。
そんなフェリシアに追い打ちをかけるかのようにギュスターヴは生まれたばかりのカレサリウス彼女から奪ったのだ。
嫁ぐと決まった時からゴルティーヌの皇太子妃として、未来の皇后として努力した結果がこれだった。





フェリシア・・・マジで気の毒
ギュスターヴって君主として立派かも知れないけど、人として、いや男として最低の部類に入る!!!
天使のように愛らしいイシュティア(笑)が怪我をしてしまったのは、庭園の石を見落としていた庭師達の職務の怠慢という理由だけで首を斬り落とすのかよwww
いや、こいつは君主としてもマジで最低だわwww
跡取り息子の教育を失敗したんだからなwww
母親を殺した元凶は叔父さん大好きwww
毎晩ずっこんばっこんしてるんだから子供が捻くれるのも分かるわwww
父親が乱世を終結させ平和へと導いた国を滅亡へと導いたのも息子が育った環境を考えたら当然かもな
そんなにイシュティアと一緒になりたいのなら、ギュスターヴはフェリシアと結婚する前に皇太子の地位を返上してノン気のディアス(←第三皇子)に王位を譲ったら良かったんじゃね?
そしたらフェリシアは幸せな一生を送れたのかも知れん
第二皇子ではなく第三皇子が皇太子って何かおかしくね?って思うかも知らんけど、イシュティアって一言で言えばお姫様育ち。当然、政治や軍事についてなど何一つ学んでいない。そんなのが皇太子・・・未来の皇帝だなんてまず重臣が認めないし、近い将来国が滅びるのは火を見るより明らかwww
その点、ディアスは市井の暮らしにも馴染んでいるし政治がどういうものか理解している
言われてみればそうだよな。イシュティアって乙女ゲームにおける、慈悲深くて純粋無垢なヒロインという名の馬鹿だから国の運営が出来なくて当然かwww
こんなのが皇子って・・・
イシュティア・・・問題ありすぎだわwww





ストーリーを進めて行ったプレイヤー達からはフェリシアに対する共感と義憤、ギュスターヴに対する怒りの意見が多く寄せられただけではなく『ギュスターヴ、ざまぁwww』『イシュティア、ざまぁwww』的な二次創作が高い比率で掲載された。
悪役フェリシアとして転生した花園 沙織は鏡に映る己の姿を見てこれからの事を考える。
ゲーム通りの人生など真っ平ご免だ!!!
正直言ってフェリシアとしては未来の自分を苦しめるギュスターヴとイシュティア、そしてゴルティーヌ帝国を滅ぼしてやりたい。
いくら乱世とはいえ、現地点においてアルジェント王国と自分に対して何もしていない国を『安穏とした将来を送りたい。長く生きられないにしてもゲームのような形で死ぬのは嫌だ』という理由だけで、こっちから戦争を仕掛けるには分が悪すぎる。
最終的な結論は父と長兄に任せるとして、どうやって一方的に相手側を───ゴルティーヌ帝国を悪者に仕立てられるだろう?
ちなみにフェリシアがギュスターヴと結婚したのは、ゴルティーヌ帝国側が望んだものである事を先に言っておく。
国の懸け橋となるのが王族───つまり民に養われている者の義務であり勤めでもある。
当然の事ながらそこに個人の思いなど入る余地などないし、王命であれば例え王女であろうと逆らうなど出来ないのだ。
父からこの話がくるのは九年後───つまりフェリシアが十五歳の時。
幸いにして己の破滅フラグを折る対策を、ギュスターヴ兄弟を陥れる為の策を練る時間はある。
それまでの間にフェリシアがやる事と言えば───。
謀略に秀でている父王より策略のいろはを、猛将と名高い次兄より武芸を、政治手腕に秀でている長兄より政を、美貌の誉れ高い母より女性としての嗜みを学ぶ。
もしかしたら、ゲーム補正が働くかも知れない。
ゴルティーヌ帝国皇太子との結婚が避けられない事態を想定した上で、かつ紛れもない現実であるこの世界で生き抜いていく事を決意するフェリシアであった。





補足
本編では語られなかったけど、カレサリウスが生国を滅ぼしたのは、自分と母親を引き離した父親と叔父に対する復讐、父親が築いたものを全て壊したいという破壊衝動があった事、母方の祖父・・・フェリシアの父が買収した側近達によってゴルティーヌ帝国を滅亡へと導いたという設定があります。
あと、フェリシアはゲームの上では悪役と位置付けられているので輪姦・獣姦という形でイシュティアに復讐しましたが、本来は高貴なる者の義務を実行しなければならいと自覚しているだけではなく、それを実行した人の上に立つに相応しい女性です。
彼女がそうなってしまったのは、全て旦那のせいです。





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