ノスフェラトゥ

白雪の雫

文字の大きさ
27 / 32

⑧ハーネット王国の滅亡-5-

しおりを挟む










 「こうして、ハーネット王国は焼け野原の廃墟と化しました・・・」

 イビルゲイザーが記録している映像はここで終わっていた。

 「レオパルド、私の甥達は命を落としたのよね?自分の事を獅子だと勘違いしている雑種の犬はどうなったの?」

 財産を持って逃亡したと言っていたが、パリスがどうなったのかを知らないクリュライムネストラは、雌犬とその子供が夫とインフェル王国に戻ったという事に腑に落ちないと思いながらも尋ねる。

 「それは」

 ふぁ~っ・・・

 レオパルドがパリスの事を話そうとしていた時、気持ちよさそうに眠っていたヴェルナードが目を覚ます。

 「かあさま、おはなしはまだなのでしょ?」

 自分も聞くと言っているヴェルナードに、ハーネット王国の話はもう終わってしまったのだと教える。

 ぷぅ~っ

 自分だけ仲間外れにしたと頬を膨らませるヴェルナードに、もう少し大きくなったら話してあげると言えば納得したような納得してないような表情を浮かべたその時──・・・。

 くぅ~っ・・・

 ヴェルナードの腹の虫が鳴った。

 吸血鬼の主食が血というのはあくまでも物語の中だけであって、事実は大いに異なる。吸血鬼も生物の一種なのだから、液体だけではなく人間のようにパン・魚・肉・野菜といった食物も口にしないといけないのだ。

 「焼き菓子でも食べるか?」

 「はい」

 小腹が空いているヴェルナードをディナーまで待たせるのは酷だと思ったレーヴェナードは、侍女達に四人分のデザートの用意を命じる。










◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆










 侍女達が持ってきたのは、厨房を取り仕切っているドワーフの料理長お手製のフィナンシェとホットココアだった。

 「おいしいね~」

 「本当ね」

 ミルクの優しい甘さと、フィナンシェのしっとりとした食感が四人の心を癒す。

 「我が君、王后様、ヴェルナード様。よろしいでしょうか?」

 暫くの間、ティータイムを楽しんでいた三人に、レオパルドがハーネット王国を滅ぼした元凶の一人を御前に出してもいいかを尋ねる。

 「元凶の一人ってあの馬鹿・・・ではなく、アホ・・・ではなく、顔だけが取り柄の元第四王子の事よね?どこに居たの?」

 元婚約者であるクリュライムネストラの母の祖国であるメディクス王国を目指している途中のところを捕らえたので、ドラゴンに乗せてサクリフィス大陸まで連れて来たのだと話す。

 「げんきょう?げんきょうってわるいやつなの?」

 「そうよ。母様の故郷を滅ぼした悪い奴なの!」

 溺愛する息子が王子としてあるが為だけに、叔母に当たるクリュライムネストラの婚約者だった男を一目見てみたかったレーヴェナードは処刑室まで連行するようにとレオパルドに命じる。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

悪役令嬢の涙

拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど

ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。 でも私は石の聖女。 石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。 幼馴染の従者も一緒だし。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

処理中です...