乙女ゲームに転生した男の人生

白雪の雫

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⑩報告と決意-1-

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 室内を温めるのは薪ストーブ。
 灯る炎が心を癒し、薪の燃える音が何とも心地良い。
 薪ストーブで温めたミルクを飲んでいるレンちゃんと七大精霊の姿はとても愛くるしく、見ているだけで微笑ましい気分になってくる。

 「アイドネウス、聞いてもいいかしら?」
 「何だ?」
 「彫刻と絵画だけではなく、壁画や壷や皿に描いているアイドネウスって、髭を生やした中年のお・・・ナイスミドルか壮年のロマンスグレー、稀に長髪のお兄さんという風になっているけど、昔はその日の気分でナイスミドルや長髪のお兄さんになって地上に降りていたの?」

 先日、アイドネウスが持って来てくれた書物───現代風に言えば図鑑に目を通しているミストレインがイケメンの天空神に尋ねる。

 「昔は何となくという感覚で髪を伸ばしていたから、俺が長髪になっている男の方は事実の一部を捉えていると言ってもいいが、髭のおっさんになった事はないな」
 「長髪のアイドネウスってどんな感じ・・・・・・いえ、何でもないわ」

 アイドネウスがポニーテールやツインテール、縦ロールといった髪型をしているところを思い描いてしまったミストレインは、筋骨隆々な青年がベビードールを纏っている姿を目にしてしまったかのように顔を引き攣らせていた。

 「お前が何を想像してしまったのか、何となく見当がつくけど──・・・」
 「髪が長かった頃のアイドネウスを想像するのは怖いけど、短髪にしたのは正解のような気がするわね」
 「何気に失礼な事を言ってないか?まぁ、髪が長いと手入れが面倒だし、何よりシャンプーとコンディショナーを大量に消費していたから髪を短くしたのは個人的に正解だと思っているな」
 「神様もシャンプーとコンディショナーを使って髪の手入れをするんだ」

 これは新発見だと楽しそうに呟くミストレインは、更なる疑問をアイドネウスにぶつける。

 「どうして現代では、アイドネウスの姿が中年か壮年の厳ついおっさんというのが主流になっているのかしら?」
 「当時の人間が、威厳のあるおっさんでないと天空神に相応しくないというイメージを抱いていたというのが大きな理由だな」
 「という事は、私の故郷だったミントグリーン王国の主神・パンドゥーラって豊穣の女神としての一面があるから幾つも乳房がある上半身に下半身は蛇になってしまったと見ていいの?」

 神殿の祭壇に祭られていたパンドゥーラ像を思い出したミストレインが疑問を口に出す。

 「多分、そうだろうな。ちなみにパンドゥーラの本性はラミアだが、持っている乳房は二つというのが正解だ」

 当事者から真実を聞くほど面白いものはないと思いながら、ミストレインは図鑑のページを捲る。

 「俺の本性がフェンリル、パンドゥーラの本性がラミア、ネレウスの本性が海竜・・・弟妹を挙げればキリがないが、俺達が神獣であるのは親父とお袋がそれに変身して交合した結果だからな」
 「へぇ~っ・・・」

 アイドネウスの両親は彫刻と壁画、絵画で目にしているが、人の姿をしているものしかなかった。
 それなのに、二柱の子供であるアイドネウスがフェンリルであるという事実に疑問を抱いていたミストレインは、変身した姿で交わればその姿で誕生するという一言に、新しい真実を知ったという事に感動の声を上げるしか出来ないでいた。

 「・・・・・・これって物凄く失礼だと分かっている上で聞くのだけど・・・アイドネウスの父神と弟神達は短小包茎、母神と妹神達って微乳になっているけど事実なの?」

 申し訳なさそうに口を開いたミストレインが、図鑑に描かれているイラストをアイドネウスに見せる。

 「そんな訳あるか!!!」

 自分達の事が書いている神話や伝説は今から一万数千年前以上のもので、当時は短小包茎と微乳に価値があった。
 現代まで残っている一部の彫刻と壁画といった作品はその時に作られたものなのでそのようになっているのだと、アイドネウスが顔を真っ赤にしながら即答で返す。

 「地球でも国と時代によって美の価値と基準が異なっているだろ?それと同じだ」
 「リーベンデールでは世界創造の頃から、日本人が美形と思う顔立ちに一物が立派である事と巨乳に価値があると思っていたわ」

 美の基準が違うのは例え世界が異なっていても一緒である事に、その辺りは地球と変わりないのだと考えているミストレインとアイドネウスにリーベルとディアナが客人の来訪を教える。

 「客人?誰なの?」
 「ザクレウス様とブリュネイア様です」

 二柱が雑貨ショップ・ミストレインにやって来たのはティフォーネの命令で、アイドネウスとミストレインにある事を告げに来たのだと言う。

 「ザクレウスとブリュネイアって確か・・・河川と森を司る神で神話や伝説ではアイドネウスの子供と言われているのよね?」
 「ああ。実際は俺の甥と姪だがな」
 「その二柱が何故ここに?」

 血縁関係にあるアイドネウスに何かを伝えに来たのだろうか?

 (案外、観光に来たという単純な理由だったりして)

 見当がつかないミストレインは考える。

 「我等がここにやって来た理由・・・。ティフォーネ様がお二方に何やらお伝えしたい事がある事と、そして・・・伯母上の意思を確認する為です」





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