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㉖酵母-2-
しおりを挟むシュルツベルク家の料理人達に日本の料理を教えたり
婚約者となったレイモンドと生まれて初めてのデートをしたり
新たな家族となったアルバート達と親子としての日々を過ごしつつ、色が変わった水と葡萄が入っている瓶を冷蔵ボックスに入れてから三日目
瓶の底には何やら白いものが沈んでいた。
これが酵母である。
瓶を振って酵母と混ざった水を煮沸消毒した目の粗い布で濾していくと、敷いている布から酵母液がボウルに落ちていく様をアルバート親子とランスロット親子、そしてシュルツベルク家の料理人達が興味深そうに眺めていた。
「この液体を使えば柔らかいパンが出来るのだな?」
「はい。この酵母液を使って今から南方で食べられている野菜とチーズを乗せた平たいパンをアレンジした・・・ピザと、パンを作ります。と言いたいところですが、その前に元種を作らないといけないので酵母を使わないピザだけにします」
「何だと?この酵母という液体があれば柔らかいパンが作れるんだろ?」
ならば今すぐにでも作れるのではないか?と問い掛けるアルバートに、元種・・・発酵しているパン種を混ぜて作らないとパンはふっくらと柔らかくならないのだと紗雪が教える。
「紗雪殿。今日は酵母を使わないピザ、酵母液を使ったピザとパン、明日は発酵しているパン種を使ったピザとパンをシュルツベルク伯達に試食させて違いを比べさせれば良いのではないのか?」
「でも、酵母液で作ったパンって酵母を作る時に使った果物の匂いがするのよ」
パンとして食べるのならともかく、魚介類とチーズを乗せたピザに葡萄の香りが交じっているというのはどうかしら?
日本にいた頃、自分で作った苺の酵母でパンを作った事がある紗雪は戸惑いの表情を浮かべずにはいられない。
その時は本に書いていたストレート法と中種法で作ったのだが、ストレート法で作ったパンの皮はカリッとしており中はふんわりもっちり。苺の味はしなかったが香りがしていた。
対して中種法のパンは柔らかくしっとりとした食感で、菓子パンや総菜パンに向いているしストレート法と比べたら日持ちはするが発酵に時間がかかった記憶がある。
ピザは作った事がないので何とも言えないのだが、ストレート法でパンを作った時の経験から生地が葡萄の香りがしてきそうな気がするという漠然とした思いが紗雪にあった。
(クリスプタイプはシーフード、酵母液を使ったピザはデザート系にすれば香りが気にならないかも?)
ライスとラーメン、或いはライスとお好み焼きのように炭水化物が重なるメニューは紗雪の中で違和感しかないのだが、今回作るパンとピザは一人に対して一人分ではなく試食出来るサイズなので深く考えない方がいいのかも知れない。
「レイモンドさん。今からパンとピザの生地を作りましょうか?」
「ああ」
「皆さん、ピザとパンを焼く為のオーブンを温めておいて下さいね」
考えを切り替えた紗雪は生地を作り始める。
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