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㉗ちくわパンとカルツォーネ-1-
しおりを挟む次の日の朝
買い物客で賑わう港町のリベラでちくわを作るのに必要な棒と鱈、マグロのオイル漬けを作るのに必要なマグロ・・・筋の多い部分と、それとは別に脂の乗った部分・・・大トロと中トロを購入した紗雪とレイモンド。
その帰り道でレイモンドが紗雪にある事を尋ねる。
「紗雪・・・殿。ちくわというのは確か・・・おでんという煮込み料理に入っていた魚のすり身、だったか?」
「ええ」
「魚のすり身とパンって合うのか?」
「合うわよ」
ちくわは煮込み料理にしか使わない食材だと思っているレイモンドに、パンだけではなく日本酒の肴にもなるのだと、カステラと同じように昔は天皇や将軍といった身分の高い人や金持ちしか食べられなかったのだと教える。
「紗雪、殿に料理を教えて貰った時から思っていたのだが・・・日本という国は文化と文明が進んでいるのだな」
昔は身分が高い人しか食べられなかった料理に高級食材、貴重な調味料が平民でも簡単に手に入るという事実に、レイモンドは改めて感心の色を含んだ声を上げて驚く。
「・・・そうね。私から見れば、どんな怪我や病気でも簡単に治す万能薬やエリクサーが作れたり、火・水・氷・風・雷の力を宿した天然の魔石、魔法使いがそれぞれの属性の魔力を込めた人工の魔石を使って作った魔道具を生活に利用している」
それに・・・何と言っても環境に優しいと言えばいいのかしら?その辺りは地球よりフリューリングの方が進んでいるような気がするわ
「そういうものなのか?俺は、俺達の世界は前時代的だと思っていた・・・」
美奈子からキルシュブリューテ王国の文化レベルは地球で言えば中世から近代辺りで、自分が育った時代の日本と比べたら遅れているのだと幼い頃からそう聞かされていたレイモンドは、まさか祖母と同じ国の人間からそのような言葉を言われるなど夢にも思っていなかったから驚かずにはいられないでいる。
「他の迷い人・・・日本人がどう思っているのか分からないけど、環境を破壊しない形で文明が発展しているというところは地球より遥かに進んでいる。少なくとも私はそう思っているわ」
文化と文明ってその土地の風土に適した形で発展していくものでしょ?
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「自然を敬い共に在る形で生活を営み、迷い人の知識を利用しているとはいえ環境を破壊しない魔道具を作れるし、地球では不治の病と言われている難病を簡単に治したり、欠けた手足等を再生出来る薬があるというのは、フリューリングの人間として誇ってもいいんじゃないかしら?」
「紗雪、殿・・・」
「【隣の芝生は青く見える】って奴よ、レイモンドさん」
レイモンドに向けてそう言った紗雪は笑みを浮かべる。
その微笑みは、レイモンドの中にある闇を晴らすものだった──・・・。
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