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㉙お茶会-2-
しおりを挟む「はい?陛下が私に会いたい?頼みたい事がある?しかも、それは私とレイモンドにしか出来ない事?」
冒険者として高ランクにありながら、侯爵家の三男であるレイモンドに会いたいというのは分かる。
だが、一般庶民でしかない自分に国王が何を頼むのかが分からない紗雪は声を上げて驚く。
「ところでロードクロイツ侯爵夫人。このシャーベット・・・っていうのか?牛乳の濃厚な味と風味、それに何と言っても砕いたクッキーの仄かな甘さとしっとりとした食感が一つになって面白いな」
「カスタードプリンと違って、シャーベットはさっぱりとした舌触りをしているのね」
「母上、紗雪はシャーベットの作り方は教えてもクッキーを混ぜる事は教えていないはず。もしかして・・・」
「ええ。ランスロット達がシュルツベルク家に赴いている間に我が家の料理人達が試行錯誤していたの」
サユキさんに教えて貰った事で料理人達は刺激されたのでしょうね
果肉を混ぜたシャーベットだけではなく、ニンジンやジャガイモを使ったスープを作ったりしているわ
シャーベットを堪能した後、当主が留守の間にあった事をエレオノーラが話す。
「侯爵夫人。私とキルシュブリューテ王国の国王とは一度も顔を合わせた事がないのに、何故、陛下が私の事を存じているのですか?」
「それはね、サユキさんがウィスティリア王国の聖女召喚に巻き込まれただけではなく、貴族の養女にした上でレイモンドに嫁がせようとしている事をランスロットが報告しているの」
だから陛下はサユキさんの顔は知らなくても名前は知っているわ
迷い人や何らかの形でフリューリングに来てしまった異世界人は、王族や貴族の家に保護されてこの世界で生きて行く為の一般常識を教えて貰う事を聞いていたので、国のトップが自分の事を知っていても不思議ではないと紗雪は納得していた。
「でも、一国の国王が平民である自分と顔を合わせるなんて普通に考えたら出来ないと思うのですが・・・」
現代日本では何らかの方面で活躍し、褒章を授かる時であれば国のトップと顔を合わせる事もある。
だが、キルシュブリューテ王国は国王が権力を持つ国家。
絶対王政と言えばいいのか、国王は神の代弁者と言えばいいのか、キルシュブリューテ王国はそれに近い体制を敷いている。
それはキルシュブリューテ王国だけではなく、他国にも言える事だが──・・・。
そんな国に住んでいる一般市民が、神に等しい国王と顔を合わせるなんて普通に考えれば有り得ない事なのだ。
「貴族の娘になったのだから、紗雪殿は何れ陛下と顔を合わせる事になると思っていたのだが・・・」
まさか、あのような事を頼むなど思っていなかったのだと・・・いや、あの陛下だからこそ紗雪に頼もうとするのは当然なのかも知れないとランスロットが呟く。
「もしかして・・・父上。陛下の頼みとは・・・」
「あなた、レイモンド。陛下の頼みごとについて私からサユキさんに話しますわ」
事の始まりはサユキさんがシュルツベルクに赴いている間に催したお茶会だったの
ランスロットの呟きが耳に入ったレイモンドは国王の頼みが何なのかを察するのだが、何故そのようになったのかを話すのは当事者である自分の役目だと止めたエレオノーラが紗雪に話す。
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