166 / 465
㊷ダークエルフの長は大魔王-3-
しおりを挟む「・・・紗雪。自分から話し辛いのであれば、俺からシュルツベルク伯に話すが?」
レイモンドの言葉に紗雪は自分から話すと首を横に振った後、収納ポーチから天女の羽衣を取り出した。
「この布は・・・?」
「篁家の家宝の一つである天女の羽衣です」
「天女?」
「フリューリングでは白鳥処女が天女に該当します、シュルツベルク伯」
淡い光を帯びた、縫い目がない布に見入っているアルバートにレイモンドが耳打ちをして教える。
(どこかで天女という言葉を聞いた事があるような気がするのだが・・・。そうだ!マスミちゃん!)
アルバートは、ローゼンタール公爵夫人が紗雪の先祖を人間と天女との間に産まれた子供と言っていた事を思い出す。
「サユキは天女・・・白鳥処女、なのか?」
「正確に言えば天女の子孫です。代を重ねて来た事で天女の血が薄くなっている私は、人間と何ら変わりないですよ」
寿命だって百年くらいだし、治癒力も身体能力も人間と同じだと紗雪がアルバートに教える。
「そうか。サユキは並外れた霊力を持つ人間で・・・改めて尋ねるが、この世界で生きて行くという認識でいいんだな?」
紗雪はほぼ人間と言ってもいい。だが、同時に白鳥処女でもある。白鳥処女は男と子供を捨てて天に帰った女なのだ。
紗雪はフリューリングで採れた野菜や肉を口にしているので元の世界に戻る事は出来ない。
だが、それでも元の世界に戻る方法があるとしたら、レイモンドは面に出さないだけで、キルシュブリューテ王国で築いた縁や絆を捨てて帰るという不安を常に抱えているのだろう。
「はい」
笑みを浮かべて即答した紗雪にアルバートは安堵の息を漏らす。
「混じり者の娘が白鳥処女の末裔である事は分かった。・・・・・・それで、お主達に聞いてもいいか?」
何故、プルメリア島のバニラを欲する?
周囲を威圧するオーラを発しているダークエルフの長の問いに紗雪は答える。
お菓子作りに欠かせない香料であるが故にバニラが欲しいのだと──・・・。
「ほう・・・そのような理由でバニラを求めるか」
バニラはショコラに入れるか、儀式で使用する香料を菓子作りに使うという理由にダークエルフの長は豪快な声を上げて笑った。
「面白い!」
「親父殿、貴重なバニラを輸出する代わりに儂達も相手から見返りを求めるべきじゃ!例えば、我が国では採れない果物や香木、採掘出来ない金属とか・・・」
「確かにそうじゃ。お主、シュルツベルク伯爵と言ったな?お主達が作るバニラを使った甘味が儂達を満足させたのであればお主達と取引をしよう」
「勿論、儂達が満足しなかったらこの話はなかった事になるがな」
「儂達を満足させた暁には、お主達の国でしか採れない果物と乳製品を我が国に輸入して欲しいのじゃよ」
「これは私の一存では判断が出来兼ねますので、ディートヘルム陛下に持ち帰った上で回答するといたしましょう」
ダークエルフの長にそう答えたアルバートはボウ・アンド・スクレープをした。
2
あなたにおすすめの小説
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
本物の聖女なら本気出してみろと言われたので本気出したら国が滅びました(笑
リオール
恋愛
タイトルが完全なネタバレ(苦笑
勢いで書きました。
何でも許せるかた向け。
ギャグテイストで始まりシリアスに終わります。
恋愛の甘さは皆無です。
全7話。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
好感度0になるまで終われません。
チョコパイ
恋愛
土屋千鶴子(享年98歳)
子供や孫、ひ孫に囲まれての大往生。
愛され続けて4度目の転生。
そろそろ……愛されるのに疲れたのですが…
登場人物の好感度0にならない限り終わらない溺愛の日々。
5度目の転生先は娘が遊んでいた乙女ゲームの世界。
いつもと違う展開に今度こそ永久の眠りにつける。
そう信じ、好きなことを、好きなようにやりたい放題…
自覚なし愛され公女と執着一途皇太子のすれ違いラブロマンス。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる