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㊷ダークエルフの長は大魔王-2-
しおりを挟む翌日
「ダークエルフの王よ。本日は話し合いの場を設けて下さった事、光栄に存じます」
アルバートとレイモンドはボウ・アンド・スクレープで、紗雪はカーテシーでダークエルフの長に挨拶をした。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
(ダークエルフって妖艶というか、異性を誘惑するフェロモンダダ漏れな外見をしているのだと思っていたのだけど・・・)
玉座に腰を下ろしている──おそらくプルメリア島を治めるダークエルフの長の妃であろう女性は、男であれば魅入られずにはいられない肢体を持つ妖艶な佳人だった。
マンゴーやパパイヤといった南国のフルーツが市場で売っていたのだから、プルメリア島は一年を通して常夏という言葉が相応しい気候なのかも知れない。
だって、ダークエルフの長の妃と思しき女性は、踊り子を思わせる肌の露出が多いセクシーな衣装に身を包んでいるのだから。
しかし、彼女の隣に座っている男性──ダークエルフの長は何と表現すればいいのだろうか。
二メートル越えの長身に、ゴリマッチョ・・・ではなく筋骨隆々な身体つき。
「お主達がバニラを求める人間か」
(((陛下が魔王だとすれば、ダークエルフの長は大魔王だ・・・)))
低くて重厚、威厳を含んだ声、身体から発せられる威圧感と巨体が大魔王と思わせるものだから、三人は心を一つにしてそんな事を思ってしまう。
プルメリア島でバニラはショコラに入れたり、儀式の時に使用する貴重な香料であると同時に、インペラトーレ帝国から大金を巻き上げる事が出来る産業の一つだ。
ダークエルフの長は、何の付き合いもないキルシュブリューテ王国がバニラを求める理由を尋ねる。
「親父殿、普段の話し方をすれば客人が怯えてしまうわ!もう少し優しい顔つきになった上で穏やかな口調で接した方がいいと何度も言っておるじゃろうが!!」
そんな三人をよそにイケボで男の色香を撒き散らしているイケメンが長である父に注意した。
「これが儂の地声だし、自他ともに認める厳つい顔つきなんじゃから無理難題を抜かすでないわ!セドリック」
(((お、親父殿?・・・・・・え゛っ?)))
大魔王を彷彿とさせるダークエルフの長の隣に立っていた精悍な顔立ちをしているイケボなイケメンことセドリックが彼の事を親父殿と呼んだものだから、二人が親子であるという事実に紗雪達は驚いてしまう。
「まぁ、良いわ。今は二人の人間と、異世界の混じり者の娘がバニラを求める理由を聞くのが先じゃな」
「混じり者の娘?・・・サユキが混じり者とはどういう意味だ?」
混じり者というのは読んで字の如く、種族の異なる両親から産まれた子供の事を指す。
例えばドワーフと人間との間に産まれた子供、人間とエルフとの間に産まれた子供という風にだ。
紗雪は元の世界では戦いの世界に身を置いていたとランスロットが言っていたが、それを除けばどこにでもいる料理が得意な普通の娘でしかない。
しかも、異世界に存在する種族は動植物を除けば人間だけで、エルフやドワーフ、ガーゴイルやサーペントといった怪物は存在しないと言っていた。
つまり、紗雪は人間という事になる。
だが、ダークエルフの長は紗雪を混じり者と言った。
「お主達のような人間には分からぬじゃろうが、サユキ・・・と言ったか?その娘からは精霊使いが百人いても太刀打ちできぬ程の膨大な霊力だけではなく、何より儂等よりも上位種の気配をヒシヒシと感じるわ」
「サユキ・・・お前は二つの血を、持っているのか?」
ダークエルフの長の言っている事は真実なのか?
「お養父様・・・」
誰が何と言おうが紗雪は自分の娘だ。
父親なのだから真実を打ち明けて欲しいという思いと、娘を案じる真摯な親心が籠った眼差しでアルバートが紗雪を見つめる。
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