カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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㊸甘くて冷たい豆乳粥-5-

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 「牛や山羊の乳を使った菓子?王様やお貴族様しか口に出来ないものを食べたいだなんて馬鹿な事を言うんじゃないよ!」

 夕食を食べる為に立ち寄った食堂で食後のデザートとして牛乳を使った菓子を注文しようとしたのだが、食堂の女将らしきダークエルフの女性に三人は怒られてしまう。

 女将の話によると、王侯貴族にとって乳を使ったデザートを作り出す牛は庶民にとっては畑を耕す労働力である。そして、老いた牛は食料になるとの事だ。

 (まさか牛乳が王侯貴族しか口に出来ない高級品だったとは・・・)

 牛乳が飛鳥時代の日本のように、プルメリア島では高級品だったという事実を突きつけられた紗雪は何を作ればと再び悩んでしまう。

 「牛で畑を耕す?ダークエルフってエルフと同様に魔法に長けている種族なのですよね?ならば、ゴーレムを労働力にした方が早いと思うのですけど・・・」

 製作者の思い通りに動くゴーレムは、力仕事をさせるのに最適なはず。

 何故、彼等は畑仕事をゴーレムにさせないのだろうか?

 あぁ・・・

 「ゴーレムを使うのは、別の大陸の森や山の集落に住んでいるダークエルフと、性格の悪いエルフだね」

 自分達のように稲作を中心としているエルフとダークエルフはゴーレムを使わない。何故なら、泥で作ったゴーレムは水田に入ってしまうと崩れてしまうからだ。

 「だから牛で畑を耕すのですね」

 性格の悪いエルフとはどういう意味なのかを聞きたかったのだが、その辺りは敢えてスルーした紗雪は納得した声を上げる。

 「それに、プルメリア島は年間を通して暑いからチーズといった乳を使った製品を作るのに適していないからね~」

 (確か・・・酪農に適した場所って冷涼で土地が痩せているか、都心部に近くて広い土地がある場所だと地理の授業で習ったわね)

 女将の言葉で紗雪は酪農が盛んな地域の特徴を思い出す。

 常夏のプルメリア島は酪農に最適な場所ではない。自分達が飲む分はあるかも知れないが、店で売れるほどに牛や山羊を飼っていないから乳を使った菓子は作っていないし、売っていないのだ。

 「ならば、プルメリア島には牛乳や山羊乳で作ったデザートはないという認識でいいのだな?」

 「そうだね~。お城だったら乳を使ったデザートがあると思うけど、あたし達のような庶民には縁のないものだよ」

 ダークエルフの女将が、挽いた米、揚げた米、蒸した米で作った菓子や大豆を挽いて作った乳でデザートを出している事をアルバートに教える。

 「それってどんなデザートなんだ?」

 「食べてみるかい?」

 異論がない三人は女将の言葉に頷く。

 「待たせたね」

 暫く待っていると、女将がデザートを持ってきた。

 「このもちっとした食感、中に入っている餡子。何かに似ているような・・・?」

 蒸した米を丸めたデザートを口にしたレイモンドが首を傾げる。

 女将が用意したのは、米を蒸して作ったスイーツだった。

 「そうだ・・・おはぎだ」

 「俺のデザートはガレットに似ているぞ」

 アルバートが口にしているのは、挽いた米を水で溶いて焼いた生地でマンゴーのジャムを包んだものだった。

 ガレットに似たデザートの食感は牛乳で溶いた小麦粉を焼いた生地とは違い、もちっとしている。

 「このジャムに使っている果物は、俺達が食べているジャムとは違う甘さを感じるな」

 苺や柑橘系のジャムとは異なる甘さにアルバートは舌鼓を打っていた。

 「私の前にあるのは、米を豆乳で煮込んだお粥だわ」

 (豆乳と米って合うのかしら?)

 初めて目にする料理に紗雪は疑問を抱く。

 「デザートだから甘いという事か」

 「レイモンドとお養父様も食べてみますか?」

 興味が湧いたレイモンドとアルバートが頷いたので、紗雪は二人分のスプーンと小さな器を女将に持ってくるように頼む。

 女将から器とスプーンを受け取った紗雪は、目の前にある粥を取り分けた粥をレイモンドとアルバートに渡す。

 食欲がない時や朝食に粥はぴったりだと思うが、甘い粥ってどのようなものなのだろうか?

 未知の味に戸惑いを感じながらも、紗雪はスプーンで掬った粥を口に運んだ。

 「・・・・・・甘いお粥って初めて食べたけど・・・美味しいのね」

 塩味で梅干しや昆布、鮭や肉団子をトッピングして食べる料理だと思い込んでいた自分にとってこれは新しい発見だと思いながら、紗雪は豆乳の風味を感じる粥を食べ進めていく。











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