カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

文字の大きさ
179 / 465

閑話・子供達の手作り弁当とホットドッグ-4-

しおりを挟む










 「子供の頃から苦手な食べ物が克服出来て良かったな」

 給食で出ていたホットドッグが原因で、カレー味のキャベツソテーとホットドッグが食べられなくなった話を紗雪から聞いたレイモンドが我が事のように喜んでくれていた。

 「ところで紗雪、ホットドッグって何だ?」

 ホットドッグというのはパンに焼いたか茹でたウインナーと野菜を挟んだ食べ物だと教える。

 「サンドイッチのようなだと思えばいいのか?」

 「ええ」

 「新しいメニューとして追加出来そうだな。・・・子供達には明日の朝食として、弟子と給仕には賄いとして出すから作り方を教えてくれないか?」

 「わ、分かったわ・・・」

 幼い頃のトラウマがあるので紗雪としてはホットドッグを食べたくない。

 しかし、手軽に食べる事が出来るので新メニューに加えていいのでは?と思うのも確かだ。

 紗雪はホットドッグの作り方を教える事にした。





 次の日の朝

 「ホットドッグに必要な材料は長めのパンにウインナーとキャベツ。切り込みを入れたパンに炒めたキャベツとウインナーを挟んだら仕上げにマスタードとトマトケチャップをかけるのだけど・・・私と子供達が食べる分はマスタードはなしでお願いね」

 「分かった」

 牛乳と砂糖を入れないとコーヒーが飲めない紗雪の味覚は子供に近いものがある。

 そんな紗雪だからこそ、自分が作った子供と辛い物が苦手な人向けの料理をメニューに加えるかどうかの判断は彼女に任せているのだ。

 カフェ・ユグドラシルで出しているパンメニューのパンを仕入れているパン工房からパンを受け取ったレイモンドは紗雪に教えて貰いながらホットドッグを作り始める。





コンロに置いたフライパンにオリーブオイルを入れて熱した後、油と塩を入れたお湯で下茹でしておいたキャベツを炒める。

 (レオルナードが作ったキャベツソテーはカレー粉で味をつけていたな・・・)

 レイモンドも昨日と同じ味付けのキャベツソテーを作ろうとしたのだが、今回はシンプルにいこうと思い塩と胡椒で味を調える。

 レイモンドがキャベツソテーを作っている間、紗雪はオリーブオイルを入れたフライパンでウインナーを炒めていた。

 炒めたキャベツソテーとウインナーを皿に移した後、切り込みを入れてバターを塗ったパンにキャベツソテーを敷き詰め、その上にウインナーを乗せる。

 「これにトマトケチャップとマスタードをかけたら完成という訳か」

 「ええ。これは個人の好みになるのだけど、ホットドッグをトースターで軽く焼いてパンの表面をパリッとさせるのもありだと思うの」

 「紗雪。トースターで軽く焼くと聞いて思い付いたのだが、チーズを乗せたら・・・って済まない。紗雪はホットドッグが苦手だったな・・・」

 「ホットドッグが食べられないのは私個人の問題だから、レイモンドは何も悪くないわ。それに・・・」

 レイモンドが作ったホットドッグはとても美味しそうだから早く食べてみたいの

 「苦手な料理を早く食べてみたいという言葉は料理人冥利に尽きるな」

 「そろそろ子供達が起きているはずだから、持って行きましょうか」

 二人は自宅スペースにあるダイニングキッチンに、出来立てのホットドッグを持って行く。









しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ

タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。 灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。 だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。 ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。 婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。 嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。 その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。 翌朝、追放の命が下る。 砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。 ――“真実を映す者、偽りを滅ぼす” 彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。 地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

処理中です...