カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

文字の大きさ
180 / 465

閑話・子供達の手作り弁当とホットドッグ-5-

しおりを挟む










 二人が向かったダイニングキッチンのテーブルには、きちんと身支度を済ませたレオルナード、クローヴィス、レスティーナが席に着いていた。

 「パパ、それは何なの?」

 「もしかして、新メニュー?」

 「ああ。ホットドッグというサンドイッチに似た異世界の食べ物だ」

 「新メニューとしてお店に出してもいいかどうかを聞きたいから作ってみたの」

 新メニューである事を肯定する言葉に子供達は満面の笑みを浮かべる。

 神よ、あなたの慈しみに感謝してこの糧をいただきます

 食事前の祈りを捧げた後、五人は手にしたホットドッグを食べ始めた。





 焼いた事でパリッとした食感となったウインナーから溢れる肉汁、甘めのケチャップソース、シャキっとしているキャベツ、柔らかいパン。

 「出来立てのホットドッグってこんなに美味しかったのね・・・」

 給食で出たホットドッグに入っていたキャベツに固い葉脈があったので食べられなかったが、このホットドッグであれば完食する事が出来る。

 全てが一つになって奏でているハーモニーに紗雪は舌鼓を打っていた。

 「美味しかったか?」

 「「「美味しい!」」」

 父親の問いに三人は笑みを浮かべながら答える。

 「ありがとう、レイモンド。あなたのおかげで苦手だったホットドッグが食べられるようになったわ」

 「それは良かった」

 「ママは大人なのにホットドッグが食べられなかったの?」
 
 「好き嫌いしちゃいけません、ママ!」

 めっ!

 クローヴィスとレスティーナに言われた紗雪は苦笑を浮かべるしかなかった。

 「そうだな。でも、それは茄子とピーマンが食べられないレスティーナにも言える事だからね」

 レイモンドに指摘されたレスティーナは(´・ω・`)な顔になって落ち込む。

 「レスティーナ、実はママも茄子は苦手なの。茄子を一緒にママと克服しましょうね」

 「はい!」

 「パパ、ママ。そろそろお弟子さんと給仕の人達が来る頃だよ」

 「お皿は僕達が洗っておくから開店準備をした方がいいよ」

 「レオルナード、クローヴィス、レスティーナ、お願いね」

 「「「任せて!」」」

 子供達に見送られながら二人は店舗へと戻る。










◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆










 「おはようございます、師匠、奥様」

 「おはようございます」

 店の厨房に戻ると弟子達が野菜を切ったり、給仕達がカフェスペースの掃除をして開店準備をしていた。

 そろそろ開店時間が迫って来たので、紗雪がオープンを知らせる看板を表に出しに行く。

 ふと空を見上げると、昨日までの灰色の雲に覆われていたのが嘘だったかのように空は青く、太陽の光が降り注いでいた。

 「・・・夏限定の冷製パスタとアイスクリーム、それからソフトクリームにかき氷をそろそろ出した方がいいかしら?」





 肌で夏の気配を感じ取った紗雪が呟く。





 夏の訪れは近い──・・・。









※以前にも書きましたが、弟子達は料理学校や料理スタジオのようにレイモンドから直接料理の作り方を教わるのではなく、やり方とかを見たり鍋に残ったソースとかをこっそり味見して再現、現場の雰囲気や空気、師匠が求めているものを肌で感じて読んでいきそこから学んでいくという徒弟制度って奴です。







しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

本物の聖女なら本気出してみろと言われたので本気出したら国が滅びました(笑

リオール
恋愛
タイトルが完全なネタバレ(苦笑 勢いで書きました。 何でも許せるかた向け。 ギャグテイストで始まりシリアスに終わります。 恋愛の甘さは皆無です。 全7話。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

好感度0になるまで終われません。

チョコパイ
恋愛
土屋千鶴子(享年98歳) 子供や孫、ひ孫に囲まれての大往生。 愛され続けて4度目の転生。 そろそろ……愛されるのに疲れたのですが… 登場人物の好感度0にならない限り終わらない溺愛の日々。 5度目の転生先は娘が遊んでいた乙女ゲームの世界。 いつもと違う展開に今度こそ永久の眠りにつける。 そう信じ、好きなことを、好きなようにやりたい放題… 自覚なし愛され公女と執着一途皇太子のすれ違いラブロマンス。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

やり直し令嬢は何もしない

黒姫
恋愛
逆行転生した令嬢が何もしない事で自分と妹を死の運命から救う話

世界の現実は、理不尽で残酷だ――平等など存在しない

鷹 綾
恋愛
「学園内は、身分に関係なく平等であるべきです」 その“正義”が、王国を崩しかけた。 王太子ルイスは、貴族学院で平民出身の聖女マリアがいじめられたと信じ、 婚約者である公爵令嬢アリエノール・ダキテーヌを断罪し、婚約破棄を宣言する。 だが―― たとえそれが事実であったとしても、 それは婚約破棄の正当な理由にはならなかった。 貴族社会において、婚約とは恋愛ではない。 それは契約であり、権力であり、国家の均衡そのものだ。 「世界は、残酷で不平等なのです」 その現実を理解しないまま振るわれた“善意の正義”は、 王太子の廃嫡、聖女の幽閉、王家と公爵家の決定的な断絶を招く。 婚約破棄は恋愛劇では終わらない。 それは、国家が牙を剥く瞬間だ。 本作は、 「いじめられたという事実があっても、それは免罪符にはならない」 「平等を信じた者が、最も残酷な結末に辿り着く」 そんな現実を、徹底して描く。 ――これは、ざまぁではない。 誰も救われない、残酷な現実の物語である。 ※本作は中世ヨーロッパをモデルにしたフィクションです。  学園制度・男女共学などは史実とは異なりますが、  権力構造と政治的判断の冷酷さを重視して描いています。 ---

処理中です...