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㊹ミルクセパレーター-3-
しおりを挟むベルンハルト=ロードクロイツ。
水の魔石と浄化の魔力を込めた魔石を組み合わせる事で洗剤を入れなくても衣類を洗えるクリーニングの魔道具。
氷の魔石と風の魔石を組み合わせた、見た目は部屋を飾る調度品のような冷房器具。
火の魔石と風の魔石を組み合わせた暖房器具を製作した事で人々の生活を便利にする魔道具の製作者として、ベルンハルトはキルシュブリューテ王国で有名だったりする。
『ベルンハルトであれば、牛乳から生クリームを作る魔道具を簡単に作れるはずなのだが・・・』
『問題はあの子が二つ返事で引き受けてくれるかどうかね・・・』
王都の郊外に建つ工房兼自宅の前に立っているランスロットとエレオノーラは溜め息を漏らす。
二人の息子であるベルンハルトは異世界には便利な家電や機械があると美奈子から聞かされていたし、実際に冷蔵ボックスと冷凍ボックスが祖母の言葉で作られた切っ掛けになった事を知っているので、幼い頃から魔道具を解体したり組み立てたりという風に好奇心旺盛だった。
その好奇心がベルンハルトを魔道具の製作者として育てたと言ってもいい。
だが物作りを生業とする者の性分なのか、実物を見せないと納得しないところがある。
つまり、生クリームを使った料理を食べさせないとベルンハルトは牛乳から生クリームを作る魔道具を発明してくれないという事だ。
何はともあれ、話をしないと何も始まらない。
二人は工房兼自宅の扉の前にある呼び鈴を鳴らす。
『はい。どちら様でしょうか?』
ランスロットとエレオノーラを迎えたのは、緩やかに波打つ栗色の髪を持つ平凡な顔立ちの女だった。
『お嬢さん、ベルンハルトは奥の部屋に居るのかな?』
(ベルンハルト?あの工房長を呼び捨てにするなんて・・・この人達、何者なの?)
対応している女は、自分の目の前に立っているランスロットとエレオノーラを訝しんでいる。
『エミーリア、誰か来ているのか?』
『はい。工房長に何か用事があると思うのですが・・・』
エミーリアと呼ばれた女が、部屋の奥から現れた渦巻の入った瓶底眼鏡をかけている長身の根暗なオーラを纏っている青年に来客の事を告げる。
『『ベルンハルト・・・?』』
『父上?母上・・・?』
(えっ?)
『父上?母上?・・・・・・という事は工房長のご両親!?』
ベルンハルトが二人を父上と母上と呼んだ事で、エミーリアは上へ下へと視線を向ける。
(に、似ている・・・)
普段は眼鏡で隠れているので分からないのだが工房長の素顔を知るエミーリアから見て、ベルンハルトが女だったらこんな感じになるだろうというくらいに来訪した女性と似た顔立ちをしていた。
淡い金髪と雰囲気、そして目元が彼女の隣にいる男性とベルンハルトは似ているのだ。
『し、失礼いたしました!私、工房で働いているエミーリアと申します!』
二人が侯爵家の当主であるランスロットと、その妻であるエレオノーラだという事が分かったエミーリアは先程の自分の非礼を詫びる。
『ベルンハルト、一つ聞いてもいいか?』
『何で渦巻の入った瓶底眼鏡をかけているの?』
『それは・・・顔と金しか見ていない女が自分に近づいてこない為の・・・簡単に言えば害虫除け対策ですね』
両親の問いにそう答えたベルンハルトが伊達眼鏡を外すと、本来の姿が露になった。
優美で整った顔立ち
均整の取れた身体つき
その身に纏うのは妖艶な男の色香
もし、この場に紗雪が居ればこう言っただろう。
眼鏡の下に隠れていたレイモンドのお兄様の素顔は、フェロモンがダダ漏れの歩く18禁なイケメンなのね
───と。
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