248 / 465
54.聖女との対決-8-
しおりを挟むこの阿婆擦れ、何を抜かしてやがんだ?
茉莉花の演技を見抜いたレイモンド達とウィスティリア王国の国王夫妻と貴族達は心を一つにしてそう思った。
「それでは・・・エドワード王太子殿下、ギルバード殿。聖女様の腰の辺りを見て頂ければ私の言葉が真実であるという事を分かって頂けるかと思いますわ」
異世界人でありながら魔法が一切使えない無能の癖に、元婚約者だった女達と同じ雰囲気を持つ女の言葉に従うのは癪だが、紗雪が言っている事が真実かどうかを知りたいという思いも確か。
あの可愛い茉莉花の初めての男は自分達なのだ
茉莉花は誰にでも足を開く阿婆擦れではない
意を決したエドワードとギルバードが茉莉花の腰に目を向ける。
「「ぎゃっ!!」」
茉莉花の腰に抱き着いている水子と目が合ってしまったエドワードとギルバードが濁声な悲鳴を上げて抱き合った。
「エ、エドワード?ギルバード?どうしたの?」
自分を見るなりいきなり悲鳴を上げたエドワードとギルバードを茉莉花は不思議そうに見つめる。
「マ、マリカ・・・貴女には、自分の腰に赤子の霊が居るのが見えないのですか?!」
「えっ?」
ギルバードの言葉が気になった茉莉花は自分の腰に目を向ける。
すると───
「ぎゃっ!!」
自分の腰に抱き着きながら泣いている赤子の存在に気が付いた茉莉花が濁声の悲鳴を上げながら紗雪に抱き着こうとするのだが、巫女にして退魔師はさりげなく避ける。
「た、篁さん!あんたは退魔師よね!?だったら、これを祓ってよ!今すぐに!!」
「聖女様?邪神討伐の折、私は荷物持ちしか出来なかった・・・それこそエドワード王太子殿下とギルバード殿が仰るように、魔法が一切使えない無能な異世界人。そんな私が・・・殿方と楽しめないから邪魔という理由だけで聖女様が堕ろした赤子を祓えると?」
聖女様も随分と口が上手くなったものだと、紗雪が貴族令嬢に相応しい優雅さを漂わせながら声を上げて笑った。
その声は聞く者にとって心地よく透き通った声なのに、今の茉莉花達にとって何か得体の知れない怖さを感じさせるものだった。
「聖女様。殿方と遊ぶ為に堕ろした赤子を成仏させたいのであれば、母君である聖女様が心から赤子の為に祈ればよろしいのです」
「そ、そんな!聖女であるあたしが命令してるんだから、今すぐこの化け物を取っ払ってよ!!」
「例え貴女が救国の英雄であっても所詮は平民、しかも何の後ろ盾もない。その聖女様が貴族令嬢である私に対してそのような口を叩くなど、本来であれば罰せられてもおかしくないのですよ?」
紗雪の言う通り、平民が貴族に命令するなど有り得ない事だ。
「尤も・・・聖女様と、聖女様と既に交合しているエドワード王太子殿下とギルバード殿は人間の言葉を解しない猿ですので、此度の事に関して私は一切咎めませんわ」
ウィスティリア王国の貴族達から───正確に言えば茉莉花付きの侍女だった令嬢とその親から小さな笑い声が、無知な平民に慈悲の心を見せるのも貴族の務めだと、紗雪の言葉に追従するかのように、聖女と、あのような女に夢中になっているエドワードとギルバードを蔑む声が上がる。
「もう二度と、貴女達とは顔を合わせる事はないでしょう・・・」
茉莉花達に向けてそう言った紗雪は玉座に腰を下ろしている国王夫妻にカーテシーをすると踵を返す。
「このような場所に居ては気分が悪くなるだけです。紗雪嬢、帰るといたしましょう・・・」
「はい、レイモンド様・・・」
自分に向けて差し出されたレイモンドの手を取った紗雪は振り返る事なく謁見の間を出て行く。
22
あなたにおすすめの小説
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
本物の聖女なら本気出してみろと言われたので本気出したら国が滅びました(笑
リオール
恋愛
タイトルが完全なネタバレ(苦笑
勢いで書きました。
何でも許せるかた向け。
ギャグテイストで始まりシリアスに終わります。
恋愛の甘さは皆無です。
全7話。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
好感度0になるまで終われません。
チョコパイ
恋愛
土屋千鶴子(享年98歳)
子供や孫、ひ孫に囲まれての大往生。
愛され続けて4度目の転生。
そろそろ……愛されるのに疲れたのですが…
登場人物の好感度0にならない限り終わらない溺愛の日々。
5度目の転生先は娘が遊んでいた乙女ゲームの世界。
いつもと違う展開に今度こそ永久の眠りにつける。
そう信じ、好きなことを、好きなようにやりたい放題…
自覚なし愛され公女と執着一途皇太子のすれ違いラブロマンス。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
世界の現実は、理不尽で残酷だ――平等など存在しない
鷹 綾
恋愛
「学園内は、身分に関係なく平等であるべきです」
その“正義”が、王国を崩しかけた。
王太子ルイスは、貴族学院で平民出身の聖女マリアがいじめられたと信じ、
婚約者である公爵令嬢アリエノール・ダキテーヌを断罪し、婚約破棄を宣言する。
だが――
たとえそれが事実であったとしても、
それは婚約破棄の正当な理由にはならなかった。
貴族社会において、婚約とは恋愛ではない。
それは契約であり、権力であり、国家の均衡そのものだ。
「世界は、残酷で不平等なのです」
その現実を理解しないまま振るわれた“善意の正義”は、
王太子の廃嫡、聖女の幽閉、王家と公爵家の決定的な断絶を招く。
婚約破棄は恋愛劇では終わらない。
それは、国家が牙を剥く瞬間だ。
本作は、
「いじめられたという事実があっても、それは免罪符にはならない」
「平等を信じた者が、最も残酷な結末に辿り着く」
そんな現実を、徹底して描く。
――これは、ざまぁではない。
誰も救われない、残酷な現実の物語である。
※本作は中世ヨーロッパをモデルにしたフィクションです。
学園制度・男女共学などは史実とは異なりますが、
権力構造と政治的判断の冷酷さを重視して描いています。
---
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる