カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

文字の大きさ
273 / 465

56.お子様ランチ-11-

しおりを挟む










 殻と背ワタを取り除いた海老に塩、ジャガイモで作った片栗粉を塗して軽く揉んだ後、レイモンドはそれを水で洗っていた。

 これは海老の汚れと臭さを取り除く為だ。

 水で洗った海老の水気を取った後、油で揚げた時に海老が丸くならないようにする為に腹部に切り込みを入れる。

 海老に塩と胡椒を振って置いている間に、エビフライの為に卵を溶いたり、冷蔵ボックスから取り出したハンバーグのタネの形を整えて焼いたり、小さく切って火を通した鶏肉と玉ねぎが入っているフライパンにご飯とトマトケチャップを加えてチキンライスを作ったりと忙しなく動いていた。

 塩を振った事で余分な水分と臭みが取り除けた海老に薄く小麦粉を塗し、卵液、パン粉を塗すと熱した油が入っているフライパンで揚げていく。

 「紗雪、お子様ランチとキャベツとベーコンのクリームパスタが出来たから持って行ってくれ」

 「はい」

 レイモンドから料理が出来た事を聞いた紗雪は、テーブルに座っているルーク一家の元へと運ぶ。

 「お待たせしました。お子様ランチとキャベツとベーコンのクリームパスタです」

 紗雪が注文した料理をテーブルの上に並べていく。

 「これが・・・」

 「これが本当のお子様ランチだったのね・・・」

 大きな海老、茶色いソースがかかったハンバーグ、オレンジ色のチキンライス、鮮やかな緑と赤が瑞々しいサラダ、あの時飲んだ甘くて塩気が感じたコーンポタージュスープ、舌の上で溶けるくらいに柔らかくて甘い香りがするプリン───。

 幼い頃から憧れていた料理にルークとトレーシーは感動の声を上げる。

 食事前の祈りを捧げたルーク一家は、自分達が注文した料理を口に運んでいった。

 「お、美味しい~」

 揚げ立ての海老はプリッとしていて、下味の塩と胡椒がいいアクセントとなって口の中で後を引いているからなのか食が進む。

 添えているレモンを絞って出てきた果汁をエビフライにかけると、油っぽさが消えてさっぱりとして食べ易くなる。

 「これがチキンライスって奴か」

 「何か可愛い盛り付けだね」

 お子様ランチとは読んで字のごとく子供向けの料理で、小さな子供が目で見て楽しめるように盛り付けているし、大人向けの料理と違って量が少ない。

 子供向けの料理を本来であればルーク達は頼めないし、大人になった今では物足りないと感じる。そして、彼等の注文を聞いたママさんも『大人は注文できない料理』として断る事が出来たはずだ。

 「あ、ありがとう。兄ちゃん・・・」

 二十二年前、バロニス村からやって来た自分達親子の為に賄いを作ってくれた時に交わした約束を覚えてくれていた事が嬉しいのか、ルークの瞳からは涙が溢れてくる。

 「パパ、どうしたの?どこか痛いの?」

 「・・・・・・痛くないよ。お子様ランチが美味しいから・・・パパは感動して泣いているんだよ」

 「美味しいものを食べているのに泣いているパパって変なの」

 ルークの言葉の意味が理解出来ない娘のエレノアは、只々不思議そうに父の顔を見つめている。

 「エレノア・・・お前にも分かる日が来るよ」

 今は分からなくてもいいと、娘の頭を撫でながらルークは肉のコクと野菜の旨味が溶け込んでいるデミグラスソースがかかっているハンバーグを食べ進めていく。

 (兄ちゃん・・・。お子様ランチ、とても美味しかったです・・・)

 「ママさん、兄ちゃん・・・ではなく料理長?店長?お子様ランチを作ってくれた料理人と話がしたいのですが・・・」

 二十二年前に食べる事が出来なかったお子様ランチを食べ終えたルークは、別のテーブルで注文を聞いていた紗雪にレイモンドを呼んで欲しいと頼む。

 「はい。少々お待ち下さい」

 霊視でルークが何を言いたいのかを知った紗雪はレイモンドを呼びに厨房へと向かった。

 「お待たせしました」

 暫くすると、ルーク達が座るテーブルにレイモンドがやって来た。

 (に、兄ちゃん・・・?何て言うか・・・若い!)

 初めて会った時のレイモンドが何歳なのか分からないが、あの時から二十二年経っているのだから少なく見積もっても四十代半ばから五十に近い年齢であるはずだ。

 どう見ても三十代としか思えないレイモンドの姿にルークは少しの間、二の句が継げないでいたが何とか我を取り戻す。

 「に、兄ちゃん!・・・あの時の約束通り、お子様ランチを食べに来ました!」

 頭を下げて礼を告げたルークは、レイモンドにキャベツとベーコンのクリームパスタと娘が食べたお子様ランチの代金を払ってから三十ブロンズが入っている革袋を渡す。

 「兄ちゃんが作ったお子様ランチ・・・とても美味しかったです!!」

 だから、その・・・また、兄ちゃんが作った料理を食べに来てもいいですか?

 「勿論です。またのお越しをお待ちしております」











※レイモンドが実年齢より若く見えるのは、紗雪の血を舐め取ったからです。天女の血が肉体の老いを遅くしているといった感じですかね。あと、紗雪の食事管理もありますし、レイモンド自身も身体を鍛えています。
二人の子供達は己の見聞を広める意味で冒険者になっていますが、時間がある時は店の手伝いをしています。
紗雪の力を受け継いだのはクローヴィスで、人には見えない四大精霊を具現化できるレベル。最強の精霊使いって奴になるのでしょうか。
舞台が日本だったら、紗雪の次にクローヴィスが霊剣・蜉蝣の使い手として妖怪退治をするはずでした。
人間離れしている霊力(紗雪と同等)を見込まれたクローヴィスは四大精霊と契約しています。
三兄妹が使う魔法は陰陽道の理論と組み合わせたもので、フリューリングでは一般的に使われている魔法と比べて威力が高かったりします。
クローヴィスの場合は魔法ではなく陰陽道の理論と精霊の力を組み合わせた精霊魔法って感じかな?
後にレオルナードは父の跡を継いで準男爵にして二代目店長、クローヴィスはシュルツベルクでアジアンテイストと言えばいいのかオリエンタルと言えばいいのか、ロードクロイツとは異なった趣向のカフェ・ユグドラシルをオープンさせ、レスティーナは王都で騎士と結ばれます。








しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

本物の聖女なら本気出してみろと言われたので本気出したら国が滅びました(笑

リオール
恋愛
タイトルが完全なネタバレ(苦笑 勢いで書きました。 何でも許せるかた向け。 ギャグテイストで始まりシリアスに終わります。 恋愛の甘さは皆無です。 全7話。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

好感度0になるまで終われません。

チョコパイ
恋愛
土屋千鶴子(享年98歳) 子供や孫、ひ孫に囲まれての大往生。 愛され続けて4度目の転生。 そろそろ……愛されるのに疲れたのですが… 登場人物の好感度0にならない限り終わらない溺愛の日々。 5度目の転生先は娘が遊んでいた乙女ゲームの世界。 いつもと違う展開に今度こそ永久の眠りにつける。 そう信じ、好きなことを、好きなようにやりたい放題… 自覚なし愛され公女と執着一途皇太子のすれ違いラブロマンス。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

やり直し令嬢は何もしない

黒姫
恋愛
逆行転生した令嬢が何もしない事で自分と妹を死の運命から救う話

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

処理中です...