カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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57.オークキングの肉とカボチャ-1-

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 山菜、キノコ、木の実、果実、豆、麦、野菜

 世界はこんなにも恵まれているのに、何故動物を殺してまで肉を食べるのだろう?
海で、川で泳ぐ魚を食べるのだろう?

 「人間は、ドワーフは、獣人は、魔族は・・・そして我等の同胞とでも言うべきダークエルフは何と血腥く卑しい生き物である事か──・・・」





 パンがなければお菓子を食べればいいじゃない





 とある高貴な女性が言ったと伝わる台詞が似合う、美しいが高飛車な性格をしている少女がテラスから見える、鮮やかな緑が赤や黄色へと変わりつつある森の景色を眺めながら摘んで来たばかりのブルーベリーを口に運ぶ。

 少女の名前はオリヴィア。

 エルフが治めるグリーンリーフ王国の第二王女である。

 自然豊かな森に囲まれているからなのか、或いは山の幸を当然のように享受しているからなのか、王国民というかエルフは見事なまでの菜食主義者で肉・魚・卵・乳といった動物性食品を好まなかった。

 魔法が使えて山の幸に恵まれている。

 だからなのだろうか。

 グリーンリーフ王国というかエルフの食文化は、クリストフが治めるプルメリア島をはじめとするダークエルフに鍛冶を生業とするドワーフ、創意工夫で発展していく人間と比べたら遥かに原始的なのだ。

 手を加えずに自然そのままの味を好むとも言う。

 しかし、当のエルフ達はそれで満足しているので問題はない。

 いや、なかったと言ってもいいだろう。

 城下での噂に侍女や兵士達から、あるカフェの話を小耳に挟むまでは───。





 『あれは・・・トーフという白い物体に蜂蜜をかけただけのデザートだけど、とても美味しかったわ』

 『そのトーフを作ったのは人間なのでしょ?貴女、人間が作ったものをよく食べられたわね!?』

 勇者だ!お前こそ魔王を倒し世界に平和をもたらす勇者だと言わんばかりの視線を、侍女の格好をしているエルフが同僚に向ける。

 『それがね、トーフという白い物体から動物の乳の匂いがしなかったし、それに・・・何て言えばいいのかしら?ふわふわ?柔らかい?でいいのかしら?今まで口にした事がない食感だったの』





 (トーフって何なのじゃ?エルフである侍女達が動物の乳を使っていないと言っていたけど、乳を使わない菓子を人間風情が作れるのか?)

 神に近い存在であるエルフですら作れないものを人間が作ったという事実を信じられないオリヴィアは、兵士達の会話を思い出す。





 『ワラビモチという冷たい菓子だったかな?スライムみたいにプルプルしているけど、乳も卵も使っていないんだ。あれを食べた時、人間にしてはやるなと思わず感心したわ』

 ふ~ん・・・

 『卵と乳を使わない菓子を人間が・・・ねぇ』

 自分達のように神に近い高尚な種族であるエルフでも作れない菓子を人間が作ったという事実に兵士の一人が声を上げて驚く。

 だが、そこには人間を・・・というかエルフ以外の種族を馬鹿にしている色が含まれていた。

 それもそのはず。

 商売としてであれば相手にはするが、肉や魚といった動物性の食物を平然と口にする種族を『自分達エルフと違って野蛮で下等な生物』と見下す。

 それがエルフという種族の考えであり常識なのだ。

 『けどよ、その店には人間だけではなくドワーフや魔族も来てるんだわ』

 『何それ!?最悪じゃねぇか!・・・じゃあ、俺達の魔法でドワーフ共を痛めつけてやれば、その店は俺達エルフしか相手にしないと成り立たなくなるという訳だ!!』

 これは面白い!

 実にいい方法だと兵士の一人が面白がって手を打つ。

 『お前達』

 『『は、はいっ!?何でございましょうか!!』』

 『お前達が言っていた・・・ワラビモチだったか?それと・・・侍女達が言っていたトーフとやらだが、どこに行けば食べる事が出来るのか教えてくれぬか?』

 『そ、それはですね!』

 キルシュブリューテ王国のロードクロイツに【カフェ・ユグドラシル】というディッシュとデザートを出す店があって、その店の料理人が作る料理は人間だけではなく魔族やドワーフといった種族の舌を満足させるもので、ディッシュは分からないがデザートであればエルフでも食べる事が出来るものがあるのだと───。

 オリヴィアの問いに兵士達は、しどろもどろになりながらも必死になって答えた。

 『そうか・・・。ならば妾をその店に連れて行くのじゃ!』

 『か、畏まりました!!!』

 第二王女の命令に、兵士達は大急ぎで馬車の準備をする。












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