カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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58.チーズトースト-5-

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 (これは・・・)





 パン生地はきめ細かくて柔らかいのに焼いたらサクッとしている食パン

 火を通せばとろりと柔らかく塩気も感じる事が出来るコクがあって濃厚で艶やかな黄色が美しいチーズ





 朝食として食べたチーズトーストはこんな感じだった。

 今食べているチーズトーストは何種類ものチーズを使っているのか、パンにバターを塗っているからなのか分からないが、単にスライスチーズを乗せたものをトーストで焼くという自分で作ったものと比べたら遥かに美味しいが。

 チーズトーストを一口食べた信也は、家族と共に日本で過ごしていた日々を思い出す。

 「やはりレイモンド殿が作る料理は美味いな」

 「我等がこうして美味な料理を口にする事が出来るようになったのも、サユキ殿が酵母を広めてくれたり、レイモンド殿に異世界の料理を教えたからだ」

 「シンヤ?どうかしたのか?」

 普段食べているバゲットにバターやペーストを塗ったり、炙った肉や魚を乗せたものもいいが、ハムとチーズを挟んだ食パンを焼けばサクッとした食感になる食パンも美味しいと思いながら食べ進めていたシェリルは、目の前に座っている信也が泣いている事に気付く。

 「シンヤくん、これで涙を拭くといい」

 「・・・えっ?涙?俺、もしかして泣いている・・・とか?」

 「ああ」

 「ただチーズトーストを食べただけなのに・・・おかしい、ですね」

 エドガーに差し出されたハンカチを受け取った信也は慌てて涙を拭った。

 「・・・・・・シンヤ、泣きたい時は素直に泣いた方がいいぞ」

 「親父・・・お袋・・・」

 シェリルの一言に故郷を思い出してしまったのか、堰が切れたように信也は声を上げて泣いていた。





 「みっともないところをお見せしてすみません・・・」

 泣いた事で吹っ切れたのか、或いは落ち着いたのか、憑き物が落ちたかのような顔つきになった信也は神妙な態度でシェリルとエドガーに謝罪の言葉を口にした。

 「お客様。旦那様からお客様にと・・・」

 そんな三人が居るテーブルにキャスリンがホットミルクを持ってくる。

 「ありがとう。給仕さん、その、この店のもう一人の経営者って人に会って話をしたいんだけど・・・」

 「奥様にですか?」

 「奥様?!もう一人の経営者って女!?・・・えっ?その人って誰の奥さん!?」

 「勿論、厨房で料理をしている旦那様ですよ」

 何馬鹿な事を言ってんだ、この男?と言わんばかりの口調でキャスリンが信也に教える。

 「朝の奥様は掃除や洗濯をしたり、坊ちゃんの面倒を見ているからお客様とお話しするのは無理ですよ」

 (イケメン、爆散しろ!!!でも、このチーズトーストはプロが作っただけあって美味い!!)

 「給仕さん!チーズトーストのおかわり!!」

 「はい。チーズトーストの注文を承りました」

 長身でイケメン、しかも妻子持ち。

 自分とは違って全てが充実しているレイモンドに嫉妬しながらも目の前にあるチーズトーストを綺麗に平らげていく信也であった。














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