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59.厚焼きホットケーキ-1-
しおりを挟む【本日は晴天なり】という言葉が相応しい春のある日
インペラトーレ帝国の帝都では、白装束に身を包んだ六人の男女が処刑人によって仰向けになった状態でギロチン台に首を拘束されていた。
女達の正体はインペラトーレ帝国の現皇帝であるサディアスの第一夫人にして内務大臣の娘であるルイーズ、第二夫人にして外務大臣の娘であるアイリーン、第三夫人にして大将軍の娘であるシンシア。
男達の正体はルイーズを母に持つ第一皇子のヴァージル、アイリーンを母に持つ第二皇子のウォーレン、シンシアを母に持つ第三皇子のモーリス。
己の地位に驕る事なく国の為に働いていた彼等は、正に高貴なる者の義務を貫いていたのだ。
陛下は何と惨い事を・・・
優秀で人望のある殿下達が処刑されようとは・・・
これも全てはあの娼婦が悪い!
大淫婦が陛下を惑わした!
民達は何も言わないが、無実の罪である事を象徴する白装束に身を包んだ六人の男女が今まさに処刑されようとする様をサディアスと皇帝を狂わせた第四夫人にして第四皇子であるフールの母、国民達からは大淫婦と影口を叩かれながらも皇后となったヘレナに対する憎悪に満ちた瞳で見ている事しか出来なかった。
「皇后を傷つけようとした大罪人の首を切り落とせ!!」
処刑人達も六人が国の為に身を粉にして働いていた事は知っているが、彼等が絶対者である皇帝に逆らえるはずなどない。
『無実の罪で死ぬ彼等が来世では幸せな人生を送れるように』と、黄泉の神に祈りを捧げながら処刑人達はサディアスの命に従い己の死を静かに受け入れている六人に刃を落とす。
「ブラボー!ブラボー!」
(後はフールが帝位に就けば私は皇帝の母として崇められる存在となる・・・)
無実の人間の処刑ほど滑稽で最高のショーはない。
見世物小屋の踊り子として自分を見下していた人間が自分に平伏しながら甚振るのはさぞかし最高であろう。
自分好みの男を男娼として囲い彼等と楽しむのもまた一興。
処刑台には未来への希望と喜びの色に満ちたヘレナの拍手喝采が響いていた───。
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