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60.コカトリス肉の唐揚げ-2-
しおりを挟むランチタイムになると食べ物を扱う屋台に食堂が列を成すのは日本だけではなかった。
その辺りは世界が異なっていても共通しているらしい。
ここが日本だったらスマホで時間を潰す事が出来たのだが、キルシュブリューテ王国というか周辺国にもそのような道具がない。
(この世界の人間・・・っていうか住人ってスゲーな)
現代日本の便利な道具を使っていた当然の信也にしてみればネットもゲームも出来ない世界での暮らしは不便以外の何物でもない。それなのに、客達は世間話や雑談を交わしながら並んで待っている。
スマホが使えたら自分の前に立って並んでいる猫耳娘を撮って動画にアップしたり、ツイッターで呟いたりするのにな~と思いながら待っていると、給仕のキャスリンが信也とシェリル夫妻を空いているテーブルに案内した。
「給仕、今日は人が多いような・・・」
「はい。実はですね・・・」
今日は数量限定でコカトリス肉の唐揚げを出しているのだと、キャスリンがシェリルとエドガーに教える。
「「何!?コカトリスだと!?しかも唐揚げ!!」」
キャスリンの言葉にシェリルとエドガーが声を上げる。
コカトリスは鶏に似た鳥の魔物で部位にもよるが、その肉は淡泊でありながら鶏肉よりコクと旨味、深い味わいがあるので高級食材の一つなのだ。
まぁ、魔物の肉は基本的に高級食材だったりする。
それを数量限定とはいえ、カフェで出したという事にシェリルとエドガーは驚いたのだ。
「姉ちゃん、唐揚げってあれだよな!?タレに浸した肉に小麦粉を塗して油で揚げたあれ!!!」
揚げ立ての唐揚げは熱々でありながら適度に噛み応えがあって、口の中に溢れるのは肉汁。
キャスリンの一言で日本にいた頃に食べていた唐揚げを思い出してしまったのか、信也はすっかり興奮してしまっていた。
「お客様が仰るあれが何なのか分かりませんが、油で揚げた肉である事は確かです」
「姉ちゃん、俺は唐揚げを二皿頼む!」
脳内が唐揚げ一色になってしまった信也はコカトリス肉の唐揚げを二皿注文するのだが、レイモンドと紗雪には一人でも多くのお客様に魔物の肉を食べて欲しいという考えがある。よって、注文出来るのは一人一皿だけなのだとキャスリンが言い返した。
「でも、俺はこの店の経営者と同郷の人間なんだよ?だからさ、それくらいのサービスをしてくれてもいいんじゃねぇの?」
「お客様は奥様とは同郷というだけですよね?それだけの理由で特別扱いする事は奥様の意に反します」
「シンヤ、聞いてもいいか?シンヤは元の世界で同郷というだけで見ず知らずの他人に対して何か特別扱いした事はあるのか?」
二人の遣り取りを見ていたシェリルが信也に日本にいた頃はどうだったのかと問い質す。
「んなもん、するわけねぇつーの!何で俺が赤の他人を特別扱いしなきゃいけねぇんだよ?!」
「大人であるシンヤであればシェリルの問いの意図が分かると思っていたのだが・・・」
信也がしようとしている事はカフェ・ユグドラシルでの食事を楽しみにしている客のみならず後見人であるコバルトグリーン家、そして同じ日本人である女将に対して泥を塗る行為でしかなく、また自分がされて嫌な事を他人にしているのだとエドガーが噛んで含めるように言い聞かせる。
「でも、俺はまだ子供だぜ?しかも客だぜ?客は神様なんだからさ、店長と女将は俺の注文通りにするのが当然だろうが!」
「お客様は神様という奴か?客を神様のように扱うのではなく、客を歓ばせる為のもてなしの心というのが本来の意味だとサユキ殿から聞いたぞ」
「え゛っ?マジ?お客様は神様ってそういう意味だったのか?!」
「ああ。私もサユキ殿からそう聞いているな」
「し、知らんかった・・・」
「一つ賢くなって良かったな、シンヤ」
お客様は神様という言葉の意味を知った信也はショックを受ける。
「お、お客様?コカトリス肉の唐揚げですが、ムネ肉とささみ、モモ肉。どの部位がよろしいでしょうか?あと、ニンニクは入っている方でよろしいでしょうか?」
「私とシェリルはムネの部分でニンニクはなし。あとエールを二つ頼む。シンヤくんは・・・「唐揚げと言ったらモモ肉でニンニクが入っている方に決まってるっしょ!!」
「エール二つ、ムネの部分を使ったニンニクの入っていないコカトリス肉の唐揚げ二つ、モモの部分を使ったニンニクが入っているコカトリス肉の唐揚げ一つの注文を承りました」
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