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60.コカトリス肉の唐揚げ-3-
しおりを挟む「旦那様。エール二つ、ムネの部分を使ったニンニクの入っていないコカトリス肉の唐揚げ二つ、モモの部分を使ったニンニクが入っているコカトリス肉の唐揚げ一つの注文が入りました」
「分かった」
エールは唐揚げが出来たと同時に持って行くとキャスリンが伝えるとレイモンドは作り始めた。
ランチタイムに入る前にシュルツベルクから定期的に仕入れている桜花の醤油とすりおろした生姜で作ったタレに浸けておいた、食べ易い大きさに切っているコカトリスのムネ肉。
別のボウルには基本となるタレにすりおろしたニンニクが入っているタレにモモ肉に製菓用の小麦粉とジャガイモで作った片栗粉?ジャガイモ澱粉?を混ぜた粉を塗す。
製菓用の小麦粉とジャガイモ澱粉?を混ぜた粉を塗したのは唐揚げの食感をサクッとしたものにする為だ。
(製菓用の小麦粉とジャガイモ澱粉?で作った衣にパン粉を混ぜたら、どんな食感の唐揚げになるのだろうな?)
定休日であるムーンの日に、或いは賄いとしてパン粉を混ぜた唐揚げを作ってみるかと思いながら、レイモンドはコカトリス肉に粉を塗していく。
唐揚げといえばすりおろしたニンニクを入れるのかも知れないが、カフェ・ユグドラシルはニンニクが苦手な吸血鬼といった魔族、時には王侯貴族がお忍びで来るのでニンニクの臭いを気にする彼等を思って使わないのが基本である。
しかしそれでは身体と体力が資本の冒険者に鍛冶職人や大工職人が気の毒ではないか?と思い、ニンニクを入れたタレで下味を浸けている唐揚げとニンニクを入れていないタレで下味を浸けている唐揚げをメニューに載せているのだ。
───紗雪がニンニクの臭いを気にするから二種類の唐揚げを作ったというのが大きな理由だったりする。
紗雪曰く
『ニンニクを入れた唐揚げは風味とコクがあって美味しいという事は分かっているのよ。でもね、どうしてもニンニクの臭いを気にしてしまうの』
(日本にいた頃の紗雪はニンニクを使った料理を食べたら臭いを消す為にリンゴヨーグルトを食べたり牛乳を飲んだりした上で次の日は家に閉じ籠っていたらしいからな)
紗雪の女心が非常に良く分かると思いながら、コンロで温めておいた二つの揚げ物用鍋にそれぞれコカトリスのムネ肉とモモ肉を入れると揚げていく。
大きめの揚げ物用鍋で揚げていた唐揚げが薄いキツネ色になったので、レイモンドはそれを取り出すと油切りバットに上げた。これは二度揚げする事で外側はサクッとしているのにジューシーな唐揚げにする為だ。
取り出している間にコンロで温めて高温になった揚げ物用鍋にコカトリスのムネ肉とモモ肉の唐揚げを入れると、今度はこんがりと良い揚げ色が付くまで揚げた。
油切りバットに上げた唐揚げの余分な油を落としている間に野菜を流水で洗う。食べ易い大きさにカットした野菜と唐揚げを皿に盛り付ける。
「キャスリン。ムネの部分を使ったコカトリス肉の唐揚げ二つとモモの部分を使ったコカトリス肉の唐揚げ一つが出来た」
「はい。分かりました」
声を掛けられたキャスリンは厨房に戻ると、出来上がったばかりの料理と冷えているエールをお盆に乗せてシェリル夫妻と信也が居るテーブルへと持って行く。
「お待たせいたしました。エール、ムネの部分を使ったコカトリス肉の唐揚げ、モモの部分を使ったコカトリス肉の唐揚げをお持ちしました」
(こ、この唐揚げ・・・めちゃ美味そうじゃねぇか!!!うぉぉぉぉぉ!!!)
「い、いただきます!!」
日本では当たり前のように食べていた料理に飢えていた信也は心の中で滂沱しながら雄叫びを上げると、目の前にある唐揚げをフォークで刺すと欠食児童のように口に詰め込んでいく。
「う、美味ーーーい!!!」
肉は旨味とコクがあってしかもジューシー。それなのに外側は軽くてサクッとしている。
モモ肉であれば当たり前のようについている皮の部分を食べない人もいるだろう。だが、二度揚げする事で皮の部分はパリッとなっているのでおつまみのように食べる事が出来る。
しかも下味は慣れ親しんでいる醤油がベースになっているのだ。風味を増すニンニクが入っているだけあって信也の食欲を刺激する。
これぞ日本人の国民食!!!
(米と味噌汁があればな~・・・)
肉の正体は鶏の怪物のようなものだが、日本で食べていた唐揚げよりも美味しいものだから興奮してしまった信也は思わず叫んでしまう。
「シ、シンヤ・・・」
まさか食べに来ている客がいる店で信也が叫ぶなんて夢にも思っていなかったシェリルとエドガーは恥ずかしさの余り、レイモンドが作った料理の味が分からないでいた。
「シェリル」
「エドガー」
((つ、次からは絶対にシンヤをロードクロイツに連れて行かない!!!行くなら二人でだ!!!))
シェリルとエドガーはアイコンタクトを交わすのだった。
※その後、信也はシェリルとエドガーの話を聞いた紗雪によって「ここはゲームやラノベではなく現実世界なのだから痛みも空腹も感じて当然」という風に説教されます。レイモンド達が居並ぶ前で。しかも信也の言い分も聞いた上で幼子に言い聞かせるような感じで。その時に食事前に捧げる祈りの言葉が「いただきます」の精神と同じところがあるので広めなかったと、紗雪は信也に話します。
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