カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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69.ブラックソルトとオムライス-10-

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「柔らかい豆腐が肉のような食感になるのも不思議じゃのぅ」

「黒い岩塩を使うだけで豆腐が卵に感じるとはのぅ・・・」

 食事前の祈りを捧げた後、炒り卵風の豆腐とご飯を一緒に口に運んだソフィーが不思議そうな声を上げる。

「肉特有の旨味と言えばいいのかのぅ。上手く言えぬのじゃが・・・肉を食べているという気分にならぬのじゃ」

 顆粒ブイヨンか顆粒コンソメを加えたら肉を食べている気分になると言ったソフィーに、これは信仰的な理由で動物性食品を口にする事が出来ない人向けの料理だから顆粒ブイヨンも顆粒コンソメも使えないのだと紗雪が言葉を紡ぐ。

 しかし美味しいのは確かなので、二人は目の前の料理を黙々と食べ進めていた。

「?」

 レオルナードはというと、見た目は卵なのに卵ではないような・・・と感じているのか『パパ、ママ。これ卵じゃないよ?』と言わんばかりに首を傾げている。

「豆腐と黒い岩塩と香辛料で卵を食べた気分になるから不思議じゃ」

「サユキ嬢、異世界には香辛料を使わずに卵の色を再現した卵料理があるのではないのか?」

「そうですね・・・。香辛料以外にも豆腐にカボチャを混ぜる事で卵の色を再現したものがありますね」

「それも食べてみたいのぅ」

「実は卵を使わずに作るスクランブルエッグを明日の賄いに出そうと考えているとレイモンドが言っていました。クリストフ陛下とソフィー王妃にも試食して欲しいのですが・・・よろしいでしょうか?」

「「勿論じゃ!!」」

 レイモンドは賄いと言っているが、実際はメニューに加えてもおかしくないレベルの料理である事を知っているクリストフとソフィーは快く試食を引き受ける。

「レイモンド。明日の賄いにスクランブルエッグを作ると言ったけど、どうやって作るの?」

「それは・・・思い付きだから上手くいくかどうか分からないが、切っ掛けはミルクティーだな」

(どこをどうすれば、ミルクティーからスクランブルエッグになるのかしら?)

 そういう思い付きは紗雪にないものであると同時に、根拠があるからこそレイモンドはスクランブルエッグが作れると発言したのだろう。

「レイモンド、私に手伝える事はあるかしら?」

「手伝えるというより紗雪に一つ聞きたいのだが・・・お子様ランチに出しているチキンライスはトマトケチャップを使っているが、そのチキンライスを醤油で味付けするというのはありか?」

「醤油でチキンライス?チキンライスの隠し味として醤油を使う事はあるけど・・・。チキンライスではないけど、鶏肉の炊き込みご飯だったら醤油を使うわね。ガーリックチキンライスだったら醤油で味付けする事もあるわ」

 賄いや家庭向けであればお子様ランチで出しているチキンライスを炊き込みご飯やガーリックチキンライスにするのはいいと思うが、それを店で出すのは個人的に無理があるような気がする。

 お子様ランチに出している鮮やかなオレンジ色が目を惹くチキンライスを炊き込みご飯やガーリックチキンライスにしてしまったら、お子様ランチを楽しみにしている子供達の夢を壊すのではないだろうか。

「そうか。紗雪のおかげで明日の賄い・・・試食して貰う料理の形がはっきりと見えた」

「そ、そうなの?」

 レイモンドが何を作ろうとしているのか分からないが、自分の言葉がヒントになって思い浮かんだのであれば紗雪にとって嬉しい事はない。

「ぱぁぱ?」

「勿論レオルくんにも食べて貰うからね~」

「わぁ~」

 皆と一緒に父親の手料理を食べれるという事が嬉しいのか、ニコニコと笑っているレオルナードの頭を優しく撫でる。










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