カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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71.イクラと鮭-2-

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 初めてカフェ・ユグドラシルに行ったのは、めちゃくちゃ暑い夏やったかな~?

 勿論、人間に変身しているし、ちゃんと服を着てるで。

 ゴールデンハニービーの巣から採った蜜を人里に売る事で金を得たわいは、外を歩いて暑かった事もあってアイスクリームっちゅうもんを頼んだんや。

 甘くて冷たくて滑らかな舌触りのアイスクリームは、ゴールデンハニービーの蜜しか知らんかったわいにとって衝撃的な食い物やってん。

 アイスクリームを切っ掛けにわいはカフェ・ユグドラシルに行くようになったんや。

 あの店で色んなもんを食って来たけど、一番美味いのは肉を乗せたガーリックバターライスやろな~。

 でな秋になると、わい等は普段以上の食欲を発揮するねん。

 理由は冬眠するからや。

 熊っちゅーのは何時も以上に食う事で栄養を蓄えて春までぐっすりと寝る生き物や。

 つまりその間は人里に行けんからカフェ・ユグドラシルで飯を食う事が出来へんって事やん?

 冬眠を迎えるまで十日余り。

 冬眠前の飯はカフェ・ユグドラシルにしようと決めたわいは人間に変身して行ったんや。

「いらっしゃいませ」

 冬眠前の飯はカフェ・ユグドラシルここの飯と決めていても、メニューが豊富やからわいは何を食べようか悩んだんや。

 熊って雑食やからな。

 悩んだ末、わいが頼んだのは鮭の卵を使った料理や。

 わいが人間の女にそれを言ったら、人間の女の顔から血の気が引いていったわ。

 鮭の卵・・・美味いんやけどな~。

「お客様。鮭の卵を使った料理を出す事は難しいですが、鮭の身を使った料理であれば今すぐ用意する事が出来ますよ?」

 そんなわいにキッチンで料理を作っていた男が声をかけてきたんや。

(鮭の身ね~)

「なぁ、兄ちゃん?鮭の身を使った料理って何があるんや?」

「そうですね・・・。今が旬の鮭を使った料理はグラタン、ムニエル、ソテー、塩焼き、照り焼き、シチュー、フライでしょうか?」

 冊子を片手に兄ちゃんが説明してくれたけど、わいにしてみればどれも初めて目にする料理やから全然分からんかったわ!

 冬眠が近いから濃厚でコクのあるあったか~い料理を食べたいと言ったら、兄ちゃんはシチューとグラタンを勧めてくれたんや。

 兄ちゃんの説明によると、シチューは煮込み料理、グラタンはオーブンで焼いた料理みたいやな。

 どっちがいいかな~?って悩んだ結果、わいはシチューを頼んだんや。

「お待たせしました。鮭のシチューです」

 この店・・・人間だけではなく吸血鬼に狼男といった魔族、ドワーフに獣人とか色んな種族が来てるんやな~と思いながら眺めているわいのとこに姉ちゃんが持って来たのが鮭のシチューって奴や。

 湯気が立っている雪のように白い乳、オレンジ色の鮭と人参、鮮やかな緑色のほうれん草、黄色のジャガイモ、秋に採れるキノコが器に盛られていたんや。

 この店に来ているお客はん達が美味そうに食っているから大丈夫やと思ったわいはシチューを食べたんや。

「!?」

 雪のように白い乳は乳に似ているけどスプーンで掬ったらトロっとしているし、乳のように優しい甘さだけではなく塩気と鮭と野菜の旨味も感じる。

 しかも白い乳は濃厚でコクがあるやないか!

 ジャガイモはホクホクと、青臭いはずの人参は野菜の甘さを感じるし煮込んだ事で柔らかい。脂が乗っている鮭、適度に歯応えのあるほうれん草。

 シチューって初めて食べたんやけど・・・何かこう、身体だけではなく心も温まる料理やったんやな。

「に、兄ちゃん!実はな、冬眠が近いんや!でな、わいとしてはこの店の飯を食って寝たいと思ってんねん!」

 鮭の身でこれだけ美味い料理が出来るんやったら、鮭の卵を使った料理も作れるんやないか?と思ってしまったわいは兄ちゃんに聞いてみたんや。

「鮭の卵を使った料理を作れない事はないですが・・・メニューに載っていないから難しいですね」

「そっか・・・」

 兄ちゃんの言葉に思わず力を落としてしまったわいやけど、こうも言ってくれたんや。

「お客様?鮭の卵を使った料理を出す事とメニューに載っていないから出すのが難しいだけで、作れないとは言っていないですよ?」

 た、確かに!

 兄ちゃんは鮭の卵を使った料理を出すのが難しいだけで作れんとは言ってなかったわ!

「じ、じゃあ・・・鮭の卵を使った料理を作ってくれんか!?」

「はい、お客様が希望している鮭の卵を使った料理を用意いたしましょう。来週のマースの日にご来店して頂きたいのですが、お客様のご都合は如何でしょうか?」

「マースの日やな?分かった!」

 兄ちゃんに金を払った後、マースの日を楽しみにして森へと帰ったんや。











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