カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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73.ソフトクリームメーカー-3-

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「うまうま」

「つめたくてあまくておいしいの~」

「ソフトクリームってアイスクリームよりも柔らかいだけではなく、すぐに舌の上で溶けていくのだな」

「何て言えばいいのかしら?アイスクリームは濃厚だけどソフトクリームはさっぱりしているように感じるわ」

「アイスクリームのように冷凍ボックスに入れておけば、何時でも好きな時にソフトクリームが食べれるのね」

「お義母様。ソフトクリームを冷凍ボックスに入れたら、ソフトクリーム特有の柔らかさと滑らかさが失ってしまいます。それは止めた方がよろしいですわ」

「そうなのね。ソフトクリームはアイスクリームのように冷凍ボックスに入れてはいけないデザートだからすぐに食べないといけないのね」

「舌触りが滑らかでふわっとした食感。舌の上で溶けるのはアイスクリームよりも空気を含んでいる事と、冷凍ボックスで凍らせていないからなのだろうな・・・」

(冷たさと舌の上ですぐに溶けるような食感を出す為には冷気と攪拌して空気を含ませる必要がある。問題は氷と風の魔石をどれくらいの比率で組み込むか・・・だな。しかし今は・・・)

 純粋にソフトクリームを楽しむランスロット達とは対照的に、ベルンハルトだけは顔を顰めながらソフトクリームを作る為の魔道具について考えながら食している。

「ベルンハルト兄上?ソフトクリームはベルンハルト兄上のお口に合いませんでしたか?」

「いや。アイスクリームとは異なる食感で美味いし、リオンハルトとレオルナードのように果物を使えば牛乳だけで作ったソフトクリームとは異なる味が楽しめると思う」

 だが今の自分は、薄いガラスの板と光の魔石を使ったバスケットサイズのカメラは作れても紗雪が望むカメラが作れていないので、ソフトクリームを作る為の魔道具の製作には取り掛かれないのだと、ベルンハルトがレイモンドの問いに対してそう答える。

「ベルンハルトお義兄様?カメラを作る事が出来たのですか?」

「ああ。サイズが大きめのカメラであれば、な」

 レンズを通して映る被写体を薄いガラスの板に光の魔石で焼き付ける。その時に目にした画像はガラスの板に残せるが、ガラスの板は割れやすい。

 ガラスの板に代わる物はないか?

 どうすれば被写体を写した紙をその場で出せるか?

 カメラを応用すれば、声と動きが残せる魔道具を作れるのではないか?

「カメラだけでそこまで思い付いたのですか!?」

「その時の自分が目にした風景や景色、人物を絵画ではなくリアルで残したいのであれば、そのような魔道具を作りたいと思い付くだろ?声と動きが残せる魔道具を作るのは俺ではなくリオンハルトになるのかも知れない。だがな・・・俺の志をリオンハルトに受け継いで欲しいと思うと同時に、例えば成人したリオンハルトが官僚になりたいというのではれば官僚になって欲しいと思っているんだ」

 ソフトクリームを作る為の魔道具を作るがそれは何時になるか分からない。

 カメラが出来るまで待って欲しいと、ベルンハルトが弟夫婦に告げる。

「紗雪、それで構わないか?」

「ええ」

 元を正せばレオルナードの成長を記録したいという我が儘でベルンハルトに頼んだ事だ。

 ソフトクリームメーカーはベルンハルトに時間がある時に作ってくれたらいいと思っている紗雪は夫の言葉に頷くのだが、そこに物申す声が割り入って来た。

「ベルンハルト、エミーリア殿。今はカメラではなくソフトクリームを作る魔道具の製作を優先しなさい」

「は、母上!?私は今カメラを・・・」

(ひぃぃぃぃぃ!!!)

「レイモンド、紗雪殿。二人は今年の、遅くても来年の夏にはカフェ・ユグドラシルで出す事が出来るソフトクリームを使ったデザートを考えなさい」

「「「「はい!分かりました!!!」」」」

 エレオノーラのメンチ切りと纏っている迫力に圧されたベルンハルトとエミーリア、レイモンドと紗雪は『イエス!マム!』的に思わず敬礼してしまうのだった。










◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆










「ベルンハルト兄上・・・魔道具を作って下さりありがとうございます。それにしても早かったですね」

「いや。ソフトクリームを作る為の魔道具は氷と風の魔石の比率をどれくらいにすればいいかの調整が難しかっただけであって、後はコーヒーミルの技術を応用すればいいだけだから作るのに難しいものではない」

 一日に何百個も売り捌くのであれば魔道具の大型化と多くの氷と風の魔石が必要だが、今回はあくまでも試作品だから攪拌は自動だが小型である。

 ソフトクリームがキルシュブリューテ王国に広まるには年単位の時間が必要だろう。

 それだけの時間があれば大型のソフトクリームを作る為の魔道具の製作は自分であれば可能だ。

 それよりもあの時のエレオノーラが魔王レベルで恐ろしいものだったから急いで作ったのだと、涙ながらにレイモンドに語るベルンハルトであった。










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