カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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73.ソフトクリームメーカー-2-

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 次の年の春というか夏の訪れが近い晩春

 ソフトクリームを作るのに必要な材料は・牛乳・生クリーム・砂糖・バニラビーンズかバニラエッセンスである。

 ベルンハルトの工房には家族だけではなく住み込みの弟子達も居るものだから、フォンエーデル家の冷蔵ボックスに保存している食材を使う訳にはいかない。

 という事で、フォンエーデル家を訪ねる前にレイモンドと紗雪は早朝の市場でソフトクリームに必要な食材を仕入れていた。

「牛乳・砂糖・バニラビーンズは購入出来たが、問題はレオルくんとリオンくんの為のソフトクリームに使う果物だな」

 レオルナードとリオンハルトは幼児だから、砂糖を使ったソフトクリームは出来るだけ避けたいと二人は考えているのだ。

「そうね。何がいいかしら?」

 苺、オレンジ、びわ、メロン等

 春の果物は色々あるが、苺が春の訪れをイメージしやすいのではないだろうか?

「・・・・・・ここはやはり王道である苺だな」

 悩んだ結果、二人が選んだ果物は苺だった。

「荷物は俺が持とう」

「これくらい大丈夫よ」

「だが今の紗雪は・・・」

「今は安定しているし、家に閉じ籠っているより動いた方が身体にもいいわ」

「無茶だけはするなよ」

「ええ」

 果物屋で新鮮な苺を購入した後、牛乳の低温殺菌にミルクセパレーターで牛乳から生クリームを分けるといった仕込みをする為、王都に建つロードクロイツ邸へと戻る。










◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆










「それで俺にソフトクリームメーカーを作って欲しいと・・・」

 レイモンドと紗雪から話を聞いたベルンハルトは顔をヒクつかせていた。

「ベルンハルト兄上?」

「当事者であるレイモンドと紗雪殿が工房に来るのは分かる。しかしだ!」

 何で何の関係もない父上と母上、兄上と義姉上、先代と当代のシュルツベルク伯爵夫妻までもが工房ここに居るのかな~!?

 驚きの色を含んだ声を上げるベルンハルトに、ソフトクリームが領地の発展に繋がるかどうかを確認するのは領主としての役目だからと、グスタフとアルベリッヒが胸を張ってきっぱりと言い切る。

「私達はリオンちゃんとレオルちゃんの子守りをする為に今回の旅に同行したの」

「・・・・・・本当はソフトクリームを食べたいのですよね?」

「そ、それもあるけど!孫達の面倒を見たいのは本当だから!」

((本音はソフトクリームを食べたいのだろうな~・・・))

 まだ見ぬソフトクリームに対する期待で瞳を輝かせているエレオノーラにベルンハルトとレイモンドは苦笑を浮かべるしか出来なかった。

「父上達が子守りをしてくれたら俺達も目的を早く達成出来るので助かりますよ」

「レイモンドがそう言うのであれば、そういう事にしておくか。ところで紗雪殿・・・」

 自分はソフトクリームを広める為の協力をする

 それにはまずソフトクリームを食べてみなければ分からない

「ソフトクリームの試食ですね?分かりました。今から試食用のソフトクリームを作りますのでキッチンをお借りしますね」

 そう言った紗雪はレイモンドと共にソフトクリームを作る為にキッチンへと向かった。










◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆










 予め自宅の冷凍ボックスで冷やしておいた二つのソフトクリームメーカーを収納ポーチ取り出した紗雪は、今回の為にロードクロイツ邸の厨房で準備しておいた牛乳・砂糖・生クリーム・バニラビーンズで作っておいたソフトクリームの元を入れるとハンドルを回す。

 もう一つのソフトクリームメーカーには砂糖の代わりに苺を使ったソフトクリームの元が入っている。言うまでもなくこれはレオルナードとリオンハルト用だ。

 ハンドルを回す事、ニ十分

 渦巻を巻くようにしながら二人は用意した深めの器に入れていく。

「お待たせしました」

「わぁ!わぁ!」

「ピンクいろのアイスクリームだ~」

 レイモンドと紗雪が運んできた盆の上に乗っているのはガラスの器に盛られた白いソフトクリームと、苺を入れた事で薄いピンク色になったソフトクリーム。

 白色のアイスクリームを食べた事はあるがピンク色のアイスクリームはレオルナードとリオンハルトにとって初めてだったものだから、二人は驚きと喜びの色を含んだ声を上げる。

「ソフトクリームってアイスクリームに似ているけど、どことなく違うという印象があるな」

「何故、渦巻の形で盛っているのかしら?ソフトクリームってアイスクリームの一種でしょ?」

 疑問の声を上げるアルバートとロスワイゼに、ソフトクリームはアイスクリームよりも柔らかい。

 形が崩れないように渦巻に盛り付けるのだと、紗雪が二人の疑問に答える。

「成る程・・・」

「父上、母上。話はそれくらいにして紗雪いもうとがメニューに加えたいと、もしかしたらその土地でしか食べる事が出来ないかも知れないソフトクリームを試食するとしましょう」

 アルベリッヒの言う事は尤もだと思った一同はソフトクリームを食する為、食事前の祈りを捧げる。










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