カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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4.友、来たる-7-

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「つまり貴方方の給料、ラヴィアンローズ家が抱えていた負債、侯爵夫妻及びダミアン様と情婦達の生活費に遊興費等は全て貴方方が馬鹿にして見下していたロザリア様の実家であるバーミリオンリリー家が負担していたという事です」

「そうとも知らず使用人の分際でバーミリオンリリー辺境伯の次女にして次期侯爵夫人であるロザリアを奴隷や罪人のように扱っていたとは・・・」

(!!!)

 紗雪とシェリルから全てを聞いた使用人達は一斉に驚愕の表情を浮かべる。

「幸いな事にロザリアとダミアン殿は白い結婚でした。清らかな乙女であるが故に子を成していないロザリアは離縁するとの事です」

「バーミリオンリリー家が負担していたラヴィアンローズ家の生活費に遊興費、お前達使用人に支払っていた給料、そしてバーミリオンリリー家が払ったラヴィアンローズ家の負債を一括で払って欲しいと言っていたな」

「支払いが出来ないというのであれば、裁判を起こすとロザリア様が仰っていましたわ」

 そのような侯爵家は近いうちに破滅するのは火を見るよりも明らか

 つまり貴方方も路頭に迷う事になります





 ロザリアが離縁に向けて行動している事

 ロザリアがラヴィアンローズ家に嫁いで夫と情婦達からどのような仕打ちを受けて来たか





 それ等を離縁協議の時に正直に話せば自分の養父母であるシュルツベルク伯爵夫妻と、シェリルの両親であるコバルトグリーン伯爵夫妻に就職先への紹介状を書くように進言する事を、紗雪とシェリルがラヴィアンローズ家の使用人達に伝える。

 考えてみたら───いや、よく考えなくても正妻であるロザリアではなく単なる情婦でしかないユリアナとカトリナを重んじるダミアンの方がおかしかったのだ。

 このまま何もしなかったら自分達に待っているのは身の破滅しかないと悟った使用人達は、ロザリアが受けた仕打ちを正直に話すので就職先の世話を頼むと、紗雪とシェリルに頭を下げて頼むのだった───。










◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆










 当事者ではないから紗雪とシェリルは離縁協議の場に参加する事は出来なかった。

 これは風の噂と言えばいいのか伯爵令嬢だった頃に仕入れた情報によると、婚礼の日の夜にダミアンがロザリアではなく情婦達と共に過ごしていたと使用人達が証言した事と、ロザリア側の弁護士が『彼女は妻として扱われていなかった』と主張したので二人は白い結婚だったと認められ無事に離縁出来た。

 ロザリアと離縁した事でバーミリオンリリー家からの援助がなくなっただけではなく、孫娘が婚家で受けた仕打ちを聞いた祖父は自分達が負担した負債の返金及び今までラヴィアンローズ家に援助していた金銭を一括で払うように要求したらしい。

 離縁に反対するラヴィアンローズ侯爵夫妻は息子夫婦の離縁を無効にする裁判を起こしたのだが、ロザリア側の弁護士であるシグルドが使用人達の証言とロザリアは清らかな乙女だったという事実を侯爵夫妻に訴えた。

『こ、この田舎者!・・・いえ、ロザリアは嘘を吐いているでざ~ます!田舎者は僕ちゃんと初夜を過ごしたので乙女ではないでざ~ます!!』

『ならば私が清らかな乙女である事を皆様の前で証明いたします!!!』

 ダミアンと結婚して三年以上経っているロザリアが未だ乙女であったという事実が、二人は夫婦でない事の決定打となったので、裁判官はラヴィアンローズ侯爵夫妻の訴えを退けたのだ。





 こうなると分かっていたらロザリアを大切にするのだった・・・





 バーミリオンリリー家に集っていたラヴィアンローズ一家とダミアンの情婦達は後悔するのだがもう遅い。

 ラヴィアンローズ家はロザリアに対する慰謝料の支払いとバーミリオンリリー家が今まで負担していた金銭の全てを借金として返す事になったのだが、ラヴィアンローズ家の台所事情は火の車だったし、何と言ってもダミアンの妻に対する仕打ちが世間に広まっていたりする。

 それが原因でダミアンに娘を嫁がせようと貴族家は名乗り出なかったし、金貸し業者の間では『ラヴィアンローズ家に金を貸すと踏み倒されると』噂が流れたので彼等は金を貸さなかった。

 故にラヴィアンローズ家がバーミリオンリリー家に一括で返済が出来る筈がない。





「僕ちゃんと僕ちゃんの両親、他人の恋人や伴侶を略奪した上で托卵していた情婦達は今どこで何をしているのかしらね?」

(・・・・・・まぁ聞かなくてもいいか)

 ロザリアに聞けば話してくれるだろうが、今の彼女は夫のシグルドと幸せな生活を送っているらしいのでラヴィアンローズ一家の末路を聞くのは野暮というものだろう。

 そんな紗雪の耳に呼び鈴の音が入る。

「サユキ様、遊びに来ました!」

「ようこそお越し下さいました、ロザリア様」

 紗雪は我が家に訪れた友一家を出迎える。












※シグルドとロザリアとの間に産まれた娘の名前はマリアベルといい、当初はガキ大将そのものでしたが年頃になれば綺麗な令嬢になります。
後に彼女はレオルナードの奥さんになります。








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