カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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75.はちみつチーズトースト-1-

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「まーちゃん、ごはん」

「うむ!」

「あら~♡レオルナードくんとマリアベル、初対面だというのに仲がいいわね~♡」

((そ、そうか・・・?))

 レオルナードとマリアベルは、クローヴィスをあやしているレイモンドとセルリアンセージ夫妻が微笑ましく見守る中、客間でままごとをしているだけだ。

 だけなのだが───リボンを付けたら女の子に見えない事もないレオルナードが可憐なお母さん役を、ガキ大将な雰囲気を纏っているマリアベルが貫禄のあるお父さん役を演じているようにしか見えないのだ。

 ちなみに紗雪であるが、キッチンでお茶と菓子(砂糖を使っていないモンブラン六つ、コーヒー二つ、ホットミルク四つ)を用意している最中である。

「シグルド、レイモンド様。二人はお似合いだと思いません?」

「二人?」

「ロ、ロザリアは・・・誰と誰がお似合いだと言っているのだ?」

「勿論、レオルナードくんとマリアベルに決まっているではありませんか!」

 お二人の目は節穴ですか!?

「「そ、そうだな・・・」」

 ロザリアの剣幕に恐れをなしたレイモンドとシグルドは血の気の引いた顔で相槌を打つ。

(レオルくんが娘だったら・・・)

(マリアベルが息子であれば・・・)

 見様によってはお似合いかも知れないが、今はまだ二人共二歳児なので年相応になったら変わるかも知れない。多分、根拠はないけど。

「皆様、お話はそれくらいにしてお茶の時間を楽しみませんか?」

 そんな客間に飲み物が入っているカップとお菓子を載せたトレイを持って紗雪が入って来た。

「これが異世界の菓子・・・というよりケーキ、なのか?」

 シグルドにとってケーキをはじめとするスイーツは憧れにして豪勢に果物やクリームを盛り付けたもの。そして喉が焼け付くレベルで甘い。

 それがシグルドのスイーツに対する認識だった。

(我はケーキ、というより甘い物全般が苦手なのだが・・・。何故、陛下と女子おなごは斯様な甘い菓子を好むのであろうな?)

 シグルドは声を大にしてそう主張したかったのだが、妻の友人の厚意を無にするのは本意ではないので沈黙を貫く。

「シグルド殿。今お出ししたお菓子は子供向けと言えばよろしいのでしょうか。店ではなく家庭で食べるお菓子ですね」

 今日のお菓子はシグルドが知っているケーキとは異なり、ペーストにした何かの果物か木の実を絞り器で絞り、バニラエッセンスを垂らした牛乳に浸してから焼いたパンの上に盛り付けしたケーキを前に疑問の声を上げるゴリマッチョな弁護士に、子供達の舌に合わせて作ったモンブランなのだと紗雪が答える。

「先程も申し上げましたが、このケーキ・・・モンブランは子供向けに作りました。モンブランは土台となるスポンジの上に生クリームを乗せ、それをペーストにした栗で覆うのですが、今回は土台となる部分はパンを、ペーストにした栗ではなくサツマイモを使いました」

 砂糖と生クリームを使っていないので野菜の素朴でほっこりとした甘さを楽しめるかと思うという紗雪の言葉に興味を覚えたシグルドは自分の目の前に置かれたモンブランを見つめる。

「つまり・・・喉が焼け付くように甘くないという認識で良いのか?」

「そうですね。先程も申しましたが、今日のモンブランには砂糖を使っていないですから甘いとしてもそれは野菜と牛乳の甘さです」

 このペーストはカボチャでもクリームチーズでも作る事が出来ますわ

「シグルド。難しいお話はそれくらいにしてサユキ様が作ったモンブランを頂くとしましょうよ」

 サユキ様が作るお菓子は間違いがない!

 私が保障しますわ!!

「そ、そうなのか・・・?」

 女子の世界は分からないが、嘗てはバーミリオンリリー家の令嬢として王族や貴族令嬢が主催したサロンに参加したロザリアが力説するのだからそうなのだろう。

 ロザリアの気迫に負けたシグルドは無理やり自分を納得させた。

 神よ、あなたの慈しみに感謝してこの糧をいただきます

(神よ!喉が焼け付く甘さから我を救い賜え!!)

 食事前の祈りを捧げた後、シグルドは手を震わせながら紗雪が作ったモンブランのサツマイモのペースト部分をスプーンで掬うと恐る恐る口に運んだ。









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