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75.はちみつチーズトースト-2-
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「・・・・・・甘く、ない?」
シグルドの口に広がるのは野菜本来が持つ風味と言えばいいのだろうか。或いは子供向けに作ったからなのだろうか。
しっとりとした食感と素朴で優しいサツマイモの甘さだった。
(これならば期待出来るかも知れぬな・・・)
シグルドはペーストと一緒に土台となっているパンの部分を掬い口に運ぶ。
(火を通したパン・・・パンプディングというより牛の乳に浸した事で柔らかいだけではなく、ほんのりとした甘さと風味があっさりとしているからなのか、我が口にした事があるケーキと違って非常に食べ易い!しかもこの甘い香りが我を魅了して止まぬ!!)
「シグルドがケーキを食べ切る姿なんて初めて目にしましたわ・・・」
「そうなのですか?」
「ええ。王都のカフェにもケーキをはじめとする焼き菓子がメニューにありますわよね?スイーツは甘過ぎるという先入観があるのか、シグルドにとってお菓子の類が甘過ぎるのか、どうやら口に合わないみたいでして食材と料理人に対して申し訳ないと思いつつも残してしまうのです」
ロザリアの話によると、弁護士になる前のシグルドは騎士団長だった。
兵士時代から騎士団長時代のシグルドは、例え好き嫌いはあっても出された料理は決して残さずに食べるようにと訓練をしていたらしい。
そんなシグルドも新鮮な果実と干した果物は口に出来ても王都や都心部のカフェ、今日のように訪れた客人の家や実家で出されるスイーツの類だけはどうしても食べる事が出来ないのだ。
今日の客をもてなす為のデザートが子供向けという事もあるのかも知れないが、スイーツを残さずに食べたのは奇跡に等しいとロザリアが紗雪に語る。
「そうでしたのね。それでしたらシグルド殿には是非レイモンドが作ったスイーツ・・・デザートを食して頂きたいですわ」
レイモンド自身もシグルドのように甘過ぎるスイーツに悩んでいたので、夫が作るスイーツは甘いものが苦手な人でも食べる事が出来るように使う砂糖の量を控えているし、何よりレイモンドが作るスイーツは自分が作るスイーツよりも美味しいのだと、紗雪がマッチョな弁護士に勧める。
「わ、分かった・・・。機会があれば・・・レイモンド殿が作ったスイーツを・・・た、食べさせて頂くとしよう・・・」
今回はレオルナードとマリアベルに合わせたスイーツだから食べる事が出来たのであって、例えカフェ・ユグドラシルの店長の料理の腕が紗雪より上だとしても口にする不安がシグルドにはあった。
その証拠にシグルドの顔からは血の気が引いて真っ青を通り越して紙のように白くなっているだけではなく、滝のように汗を流している。
「カフェ・ユグドラシルでは信仰上の理由で卵や肉といった動物性食品を使っていない料理も提供しています。甘いものが苦手なシグルド殿が口にする事が出来るスイーツをご用意させていただきますよ」
「ま、真か?・・・レイモンド殿!サユキ殿!感謝する!!」
憧れのスイーツを食べる事が出来るという事実にシグルドは二人に頭を下げる。
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