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閑話9.リュミエル-5-
しおりを挟む「お父様、あの男は勘違いしておりますわ」
「シルヴィアの言う通り、あの男は我が家を、シルヴィアを見下しております!」
ホワイトオーキッド公爵家の居間ではアシュレイとシャノン、二人の娘であるシルヴィアが顔を合わせて何やら話し合っていた。
本来であればホワイトオーキッド公爵家の跡継ぎとして育つはずだった長男のヴァルター。
そのヴァルターをクラリッサの婿として差し出さなければならなくなったのも、自国か他国の王族か高位貴族に嫁がせるはずだったシルヴィアがホワイトオーキッド公爵家の跡取りになってしまったのも、全ては愛妾を母とするリュミエルだけの為だという事実に四人は王家の傍若無人な振る舞いに腸が煮えくり返っていたのだ。
ヴァルターが王女の婿になったのも、シルヴィアが次期公爵になったのも、我が子可愛さによる王命なのだから余計に性質が悪い。
「あの男・・・何を考えているのでしょうね?」
同性であるアシュレイであればリュミエルの考えが分かるのではないのか?
そう思ったシルヴィアは父に対して疑問をぶつける。
「恐らくだが・・・我が家の乗っ取りであろうな」
「爵位も何の肩書を持たぬ、しかも入り婿。入り婿は一家の当主になれないのに、ですか・・・?」
「まさかとは思いますが・・・あなたはあの男の思惑通りにホワイトオーキッド公爵家を明け渡すつもりではないでしょうね!?」
「お父様!?」
夕食時にリュミエルが発した『我が公爵家』に対して何も反論しなかった事に対して、ホワイトオーキッド公爵家を乗っ取ろうとしているのに何一つ手を打っていないアシュレイにシャノンとシルヴィアが怒りを向けた。
「まさか!」
先祖から受け継いだホワイトオーキッド公爵家を赤の他人に渡すつもりなどないアシュレイは、実はリュミエルを婿に迎えて───否、王命でシルヴィアの婿として迎え入れるように命じられてから今日まで当家直属の密偵を使って動向を見張っているのだと、怒り狂っている妻と娘に打ち明ける。
「密偵の報告によると、どうやらあの男はマリグリッド様に想いを寄せているらしい。だがマリグリッド様は父王の側室という立場にある」
「父王の側室に想いを寄せているとは・・・」
「怖いもの知らずと言いますか・・・。ですがマリグリッド様はあの男の生母である愛妾に顔立ちだけではなく雰囲気と立ち居振る舞い・・・何もかもが瓜二つですわね」
シャノンとシルヴィアは、儚い雰囲気を持つ玲瓏なマリグリッドの姿を思い浮かべる。
「そもそもマリグリッド様には確か許婚がおられたはず・・・」
「十二年前、あの男の母親である愛妾に瓜二つという噂を聞き付けた陛下が、無理やりお二人を王命で引き離した上でマリグリッド様を側室として迎え入れたのだ・・・」
「マリグリッド様と愛妾が双子と言ってもいいくらいに似ているからでしょうか?あの男とマリグリッド様はまるで親子のように見えますわね」
「お母様。マリグリッド様とあの男は十くらい年齢が離れているのではなかったでしょうか?」
シルヴィアの言う通り、二人の年の差は十しか離れていない。だから親子より姉と弟という表現がしっくりくるのかも知れない。
「そうだ。あの男とマリグリッド様は十しか離れていない。しかもマリグリッド様は陛下と居る時よりも、あの男と共に居る時の方の笑みの種類が異なるらしい・・・」
後宮に住むマリグリッドの侍女として放っているホワイトオーキッド公爵家の密偵の一人の話によると、マリグリッドを見ている時のリュミエルの瞳には熱が籠っている、らしい。
その熱は母を求める子供のものではなく一人の男としての情愛のものであり、マリグリッドの方もリュミエルに対して満更ではないとの事だ。
「それってつまり・・・」
リュミエルはマリグリッドと一線を越えようとしている?
シャノンとシルヴィアは余りの気持ち悪さに思わず身体を震わせる。
「あの男がマリグリッド様に想いをぶつけるのも、マリグリッド様があの男の想いに応えるのも時間の問題かも知れぬな・・・」
しかも厄介な事にリュミエルはマリグリッドにそっくりな女性を妾として迎えるべく、伯爵家から男爵家のみならず平民にまで目を向けて捜しているのだと、恐怖で体を震わせている妻子に更なる事実を話す。
「お父様。陛下はこの事をご存じなのでしょうか?」
「さぁ?何故、我等が陛下に教えなければならぬのだ?」
我が子可愛さに目が眩んでいる愚王に教える義理も義務もないのだと、アシュレイは切り捨てる。
「シャノン、シルヴィア。どうやら我等がロータスサファイア王国を捨てる日も近いようだ・・・」
「「!!」」
アシュレイの一言にシャノンとシルヴィアは緊張した面持ちで居住まいを正す。
──・・・
──・・・
公爵の言葉に覚悟を決めた二人は頷く。
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