カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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閑話9.リュミエル-8-

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「ママさん!ママさんはあの男が何者で何を考えているのか、分かるわよね!?」

「ええ。あの男は私のみならず娘を妾にしようと企んでいるわ」

「何っ!?」

「それだけじゃないわ、レイモンド。自分が次期公爵になれると勘違いしているあの男、私には子供を産ませる役目を、若いレスティーナを父親の側室であるマリグリッドのように育てて楽しもうとしているの」

 あの男だけは篁の使命とは関係なく、転生できないように霊剣・蜉蝣で魂を消滅させたくなってしまったわ♡

「あのような男のせいでサユキ嬢の手が赤く染まってしまったら、レイモンド殿とレオルナードとクローヴィスとレスティーナを悲しませる事になる」

「それにああいう男、どこかで見た事があるような・・・。いや、見たではなく読んだ事がある。・・・そうだ!紗雪が買ってくれた、難解な古典を読みやすいようにと漫画と小説にした主人公の男がそうだった」

「ママさんが言っていた父親の側室という女だけどね、あの勘違い男と出来ちゃっているのよーーーっ!!!」

「中年のおっさんより美形の若い男がいいっていうだけでね」

「「「「「「「「キッモ」」」」」」」」

 店の一角で円陣を組んでいる八人が一斉に声を上げる。

 ちなみに八人とはレイモンド、紗雪、レスティーナ、クリストフ、ソフィー、そしてオネエこと三界の覇者であるセイリオス、アウグスタス、ファルネウスだ。

 当然と言うべきか、周囲に自分達の会話が聞こえないように八人は小声で話していたりする。

「という訳だ。店長、今すぐ二人を私に寄越すがよい」

「紗雪、あの勘違い男の氏素性が分かるか?」

「ええ。実はね・・・」

 ひそひそ

 レイモンドの耳元に顔を寄せた紗雪が霊視して知った男の正体を教える。

「つまりあの男は・・・」

 紗雪から男の正体を聞いたレイモンドは、自分の妻と娘を護る為に居住まいを正してリュミエルの前に立った。

「私はカフェ・ユグドラシルの店長にして、先王陛下よりフォンリヒテルの姓と準男爵を賜ったレイモンド=フォンリヒテルと申します。ロータスサファイア王国の次期ホワイトオーキッド公爵を自称している貴殿にお聞きしたい」

 何故、貴殿には心から愛する女性が居られるというのに、我が妻と娘を妾に所望なされるのでしょう?

 今は準男爵だが元は侯爵令息として教育を受け、礼儀作法に立ち居振る舞い等を学んできたからなのか、彼のボウ・アンド・スクレイプは思わず見入ってしまうくらいに美しく堂々と洗練されたものだった。

「そんなの決まっている!貴様の妻子が蛮族にしては美しい「いえ。貴殿が私の妻と娘を望むのは、貴殿が真実の愛(笑)を捧げておられる父王の側室であるマリグリッド殿に似ているからに他ならない」

 マリグリッド殿と一夜の夢を結んでおきながら、それでもなお私の妻と娘を所望するとは・・・

 どうやら次期ホワイトオーキッド公爵を自称する貴殿は猿そのものですね

「~~~っ!!!」

 簡単に言えば自分の妻子をマリグリッドの身代わりにしようとしているのだと、カフェ・ユグドラシルの店長にして準男爵であるという男に己の目的を看破されただけではなく、一夜の夢が何を意味するのか分からぬが何となく馬鹿にされていると感じたリュミエルは憤怒で顔を赤く染め拳を強く握り締める。











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