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③ルームメイト(後編)-1-
しおりを挟む室内に漂うのは淫靡な雰囲気と濡れた音、そして荒い息遣いと喘ぎ声。
『ミ、ミスリル・・・ずっと前から、俺は君とこうなりたかった・・・』
『ぼ、僕もだよ』
ヴィクトワール・・・僕は、君に憧れ、そして、慕うようになっていたんだ・・・
自分とは比べ物にならない巨大な楔で後ろの蕾を犯されているが、相手が想い人という事もあるのか、ミスリルはヴィクトワールに応える。
『ヴィクト、ワール・・・僕に、君を感じさせて・・・』
『姫君の、仰せのままに・・・』
二人の身体が愛し愛される悦びで包まれる──・・・。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
!!
「ゆ、夢・・・?」
勢い良く起き上がったヴィクトワールは安堵の息を漏らしたのだが、下半身に目を向けると生理現象なのか、先程の夢が原因なのか、彼の分身は一刻も早く解放して欲しいと言わんばかりに主張していた。
「こ、これは、抜かないとヤバい・・・」
幸いな事に、寮の部屋全てに年頃の男子の生理現象を理解しているのか、そこで抜いてこいと言わんばかりなバスルームが設置していたりする。
ミスリルとそういう関係になったら欲求不満が解消されて、ああいう類の夢は見なくなるのだろうか?
自分は普通に女の子が好きだったはずなのに、ホモになってしまったのかも知れない。
(父上、母上。二人に孫を見せられなくなってしまった俺の親不孝をお許し下さい・・・)
新たに芽生えてしまった己の性癖に悩みを抱きつつ、ヴィクトワールはシャワールームへと向かう。
「それにしても、ミスリルって・・・本当に綺麗な顔をしているよな」
触り心地が良さそうな、青みを帯びた銀髪
紅を差していないのに赤く色づいている口唇
雪花石膏を思わせる白い肌に端正な顔立ち
バスルームで抜いてすっきりしたヴィクトワールは、今日は休日だからなのか未だに眠っているミスリルの寝顔を眺めながら呟く。
クラスの連中は男の娘なクリスを『可愛い』『女の子だったら彼女にしたい』『クリスをオカズにすれば何発でも抜ける!』と口にしているが、ヴィクトワールにしてみればゆるふわで頼りないクリスよりもミスリルの方が美人だと思うし・・・何より彼をオカズにすれば抜けると思っているのだ。
というか、実際に抜けちゃうし。
「ミスリルが女だったら・・・」
青みを帯びた銀色の髪に散りばめられた真珠
身に纏うのは清楚なドレス
『ヴィクトワール・・・』
そして、自分の名前を口にする鈴を転がすような優しい声
(・・・うん。全然いける)
彼を前にする度にそんな事を考えてしまうものだから、ヴィクトワールはミスリルを避けるようになってしまったのだ。
はぁ~っ・・・
ミスリルと同室になってから、何度そう思ってしまっただろうか。
ヴィクトワールは溜め息を漏らす。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
(今日のミスリル、何だか具合が悪そうだったな・・・)
同じ部屋で過ごすようになってから二ヶ月以上
未だに挨拶しか交わさず特に親しくないとはいえ、顔色が悪そうだったルームメイトの身を案じるヴィクトワール。
相手が恋人や親友だったら売店で薬や果物を購入するのだが、先にも述べたように二人の関係は深いものではない。
(寝込んでいるかも知れないミスリルの邪魔にならないように談話室で自習をして、それから・・・・・・)
そんな事を考えながらクレッセント学園から寮へと戻って来たヴィクトワールは部屋の扉を開ける。
「ミ、ミスリル・・・?その恰好は一体?」
ヴィクトワールが目にしたもの
それは──・・・身体を巻いているバスタオルの上からでも分かるレベルで、胸の辺りに膨らみがあるミスリルの姿だった。
「もしかして、ミスリルは女の子・・・だった?」
「!?」
今のミスリルが制服、或いは私服姿だったらヴィクトワールを誤魔化せたかも知れない。
だが、シャワールームで入浴を済ませてしまったこの姿を見られてしまったとなっては、ヴィクトワールに『自分は男』という言葉など信じないだろう。というか、信じない事など火を見るよりも明らかだ。
顔を引き攣らせながら尋ねてくるヴィクトワールの言葉に、ミスリルの顔から音を立てて血の気が引いていく。
「・・・・・・色々聞きたい事はあるが、その前に服を着て貰えないか?」
「そ、そうね・・・。その、着替えるまで部屋を出て貰うか、こっちを見ないで欲しいのだけど」
「わ、分かった」
ヴィクトワールが背を向けた姿を見届けると、ミスリルは私服に着替える。
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