元英雄のやり直し

文字の大きさ
15 / 28
1章 途切れた道、踏み出す道

12話 鬼斬り

しおりを挟む
馬車に揺られて20分。
ついた場所は、寂れた教会だった。
「中から不穏な気配がするのう。」
「気づきましたか。騎士たちが突き止めた犯人のアジトです。すでに包囲しているので逃すことはありません。」
よく見ると周りの建物の屋根や小道に騎士たちが隠れているのが確認できた。
さすが帝都の騎士。その身のこなしだけで一人一人が精鋭だとわかる。
「隊長はもう来ます。それまで待」
「おい、お前ら。ここで何してる。」
教会の中から人が2人出てきた。ごついおっさんと、アマトたちと同い年ぐらいの子供。
見た目は完全に人だが気配は戦場にいた魔族そのもの。
思わず、剣に手をかける。
「なんで物騒な物持って、教会取り囲んでるんだ。中の子供が怖がるだろうが。」
「それは失礼。この辺りで事件がありまして、事情を伺いたいのですが駐屯地まで着いてきてくれませんか。」
「どうしてそんなことしなきゃならん。」
おっさんは次第にイライラし始める。隣の子供も目つきが鋭くなる。
「ねぇ、あの3人に正体バレてる。」
「・・・わかった。お前は中の奴逃がせ。足止めは任せろ。」
子供が教会に駆け出す。
ジーアスはそれを追いかけようとするが、おっさんが間に入り制止する。
おそらくかなりの実力を持っていたのだろう。ただ相手が悪かった。
「足止め、のう。そりゃ無理じゃな。」
気づいた時には、師匠の姿が視界から消えていた。
次の瞬間、おっさんの首が宙を舞う。
「なっ、」
それに驚いた子供も、すでに四肢を切断されておりそのまま倒れるしかなかった。
「容赦ないですね。」
「こいつらは魔族じゃからな。油断すれば死ぬのはこっちじゃ。」
ジーアスは囲んでいる騎士を1人呼び、子供の身柄を確保させる。
「あなたたち、生きて帰れると思わないで。もうすぐ兄さんが来る。みんな死ぬわ。」
子供は切られたことを気にする様子もなく、師匠を睨みつけ、脅し始めた。
痛覚がないのか、我慢強いのか、気になるところではあるが、問題は『兄さん』という存在だ。
「なんじゃ、その『兄さん』はこいつより強いのか。」
「何人いても敵わない。兄さんには勝てない。」
「そうか。ではその『兄さん』が来るまで教会の中を探索するか。」
「ま、待て、やめて。中にはまだ幼い子がいるの。見逃して。お願い!」
師匠がしようとしていることに気づき、必死に呼び止める。
声は震えていたが、その目は必死に状況を測っていた。
見た目は人間の子供。その姿にアマトとミタマは顔を背ける。
一方、師匠は顔色ひとつ変えず、ジーアスを連れ教会へ足を踏み入れた。すると、
「そこはおれん家なんだ。出ていってくれるか。」
すぐ右耳のすぐ後ろから声がした。
剣を抜き、横にいるはずの人物を斬る。しかし、その剣は空を切った。
「おいおい、騎士様はこんな少女にも乱暴するのか。野蛮だな。」
声の主は気がつけば、教会の屋根の上にいた。その腕には四肢を切られた子供の姿もある。
「ひっ。」
ミタマは悲鳴をあげた。先ほど子供を確保していた騎士の頭がグチャグチャに潰されていた。
早すぎる。この場の誰も反応できていなかった。
師匠の除いて。
「えっ、兄さんの頬に傷が。」
「あのジジイ、バケモンだな。アクスがやられるわけだ。」
見えなかったが、師匠はあの早さに追いつき、傷を与えていた。
全く衰えていない師匠に少し恐怖を覚える。
「せっかくならカインにやらせたかったが相手が悪そうじゃのう。」
「剣聖様、ここは任せてもよろしいですか。」
「大丈夫じゃが、カインたちも連れていってくれ。」
「わかりました。ではカイン、ついてきてください。」
俺たちは教会に入ったジーアスを追いかける。
それを邪魔しようと『兄さん』が屋根から迫るが、師匠が難なく受け止める。
「その子は置いといた方がいいと思うが。」
「黙れジジイ。すぐに周りのやつで回収するつもりだろ。」
そして轟音が鳴り響く。

中は広く、部屋も多かった。
そして5人ほどの気配も感じ取れた。
「気配を消してるみたいだが、奥の部屋に固まっている。」
「子供だけじゃなさそうですね。」
「応援を呼んでもいいけど、隊長が遅れている理由が気になる。外の見張りは減らしたくないな。」
「師匠は多分手一杯ですし、行くしかないでしょう。」
ジーアスは頷くと剣を構え、奥の部屋に近づく。
俺はアマトとミタマに動かないよう伝え、ジーアスについて行く。
そしてドアの前まで移動したその時、
バンッ
いきなりドアが外れ、そのまま突っ込んでくる。
ジーアスは慌てることなくドアの中心に剣を突き立て押し返す。
「ぐっ。」
「デイド!」
剣が刺さったのか、呻き声と共に床が赤色に染まる。
ドアから剣を抜き、蹴り返すと簡単に倒れ、部屋にいる魔族の姿が見えた。
大の男1人。子供3人。肌の色は人と変わらない。違いといえば額のツノぐらい。
おそらく彼らは鬼族。子供でも鍛えられた軍人を殺すことができる怪力と、戦闘技術が異常に高い一族。
「後ろの子供は任せる。」
ジーアスはそう言うと男に切り込んでいく。男はその剣を見切り、反撃。
鎧が砕ける。しかし、ジーアスは気にせず、攻撃を続ける。
だめだ。気を取られていた。俺の役割は子供達を殺すことだ。
俺は戦いを避け、子供に近づく。
3人とも涙目でこちらを見ている。
1人が泣きながら懇願する。
「お願いします。殺さないでください。」
それに続いて
「助けてください。」
「ま、まだ死にたくないよ。」
その姿に何故か皇女様やアマトとミタマが重なる。
見逃すことはできない。この子達がいつ人を殺すかわからないから。
でも戦争は終わった。おそらくこの子達が事件に関わっていない。
犯人は外で師匠と戦っている『兄さん』だろう。
どうする。俺はどうすれば。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者の様子がおかしい

しばたろう
ファンタジー
勇者は、少しおかしい。 そう思ったのは、王宮で出会ったその日からだった。 神に選ばれ、魔王討伐の旅に出た勇者マルク。 線の細い優男で、実力は確かだが、人と距離を取り、馴れ合いを嫌う奇妙な男。 だが、ある夜。 仲間のひとりは、決定的な違和感に気づいてしまう。 ――勇者は、男ではなかった。 女であることを隠し、勇者として剣を振るうマルク。 そして、その秘密を知りながら「知らないふり」を選んだ仲間。 正体を隠す者と、真実を抱え込む者。 交わらぬはずの想いを抱えたまま、旅は続いていく。 これは、 「勇者であること」と 「自分であること」のあいだで揺れる物語。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー

黒木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。 その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。 人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。 異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

最弱弓術士、全距離支配で最強へ

Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」 剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。 若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。 リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。 風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。 弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。 そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。 「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」 孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。 しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。 最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!

処理中です...