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1章 波乱の五日間
14話 嵐の後
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病院についてすぐ、師匠は治療室へと連れて行かれた。
本人は平気そうにしていたが内臓がいくつかやられていたらしい。
今日はもう会えなさそうだ。
「ジジイ死んじゃう?」
「またジジイに会える?」
今朝とは全く違う2人にまた心が温まる。
「大丈夫。あれくらいじゃ師匠は死なないよ。明日には会える。」
それでもまだ心配そうな顔をするので頭を撫で、俺は笑う。
「宿に帰ろう。今日は疲れただろ。抱っこしてやろうか。」
「うん。」
「やった。」
2人はコロっと態度を変え俺に飛び乗ってくる。
意外に重く、俺はよろける。
「やっぱりなし。」
2人を振り下ろし、宿に向けて走る。
「えー、抱っこ!」
「嘘つき!」
飛びついてきそうな勢いで追いかけてくる。
俺は全力で逃げた。
数分走って、ようやく宿についた。
「カイン早いよ。」
「迷子になるところだった。」
すぐ後ろに頬を膨らまして近づくアマトとミタマ。
結構早く走ったが息切れもしていない。なんて体力だ。
「よし、ご飯にしよう。お昼食べれてないしな。」
今日は大変だった。
でもみんなが無事に生きている。それだけでいい1日だったと言える。
何を食べるか考える2人をみてそう思った。
翌日。
師匠を迎えにいくために支度をしている最中、バドルが宿の扉を蹴破って入ってきた。
「おい、壊れたらどうするんだ。」
「それどころじゃない。昨日、治安騎士団の団長が殺された。」
「は。すまん、もう一回言ってくれ。」
俺は耳を疑う情報につい聞き返してしまう。
「よく聞け。昨日、任務中に行方不明になった団長が未明に路地で死んでるところが見つかった。」
団長が死んだ?
俺は会ったことがないが、相当の実力者であることは予想できる。
少なくともその辺のチンピラが束になっても敵わない。
つい最近も駐屯地が襲われたり、10人も騎士が殺されている。
あの魔族たちがやったとも考えられるが、なぜここまで騎士に執着しているのか。
「なんで俺のところに知らせに来たんだ。」
「陛下に言われたからだ。偶然か知らんが明後日『四都』の騎士団長が集まる。それに参加しろ。」
『四都』
これは『北都』『南都』『西都』『東都』のこと。
帝国の最端で栄える大都市で、都を守るため騎士団が設置されている。
帝都は護衛騎士団や、軍の本部があるが『四都』にはない。
さらに魔獣や治安もよくない。そのため、騎士団は帝都よりもはるかに強い。
特に魔王国に接する『南都』の騎士団は英傑ばかり。
それらをまとめる騎士団長の会議に参加。癖者も多いと聞く。
絶対に嫌だ。
「断ることはできないのか。仲間探しで忙しいんだが。」
「王命だから無理だろうな。あと仲間は俺が見繕っといてやる。」
これは断れなさそうだな。
俺は深くため息を吐いた。
その様子を見たアマトとミタマはバドルとつつく。
「カインいじめてる?」
「僕たち許さない。」
「いや、そういうわけじゃないんだが。」
2人がムッとしているのを見て、バドルは困り始める。
いい気味である。
「そういえば『モモノハナ』どうなってるかわかるか。」
「聞いてないのか。剣聖様がボコボコにして解決したぞ。」
師匠か。いつの間に暴れたんだ。
「じゃあ、そのお礼も言わないと。2人ともそろそろ行こう。」
「わかった。」
「お菓子買って。」
「お見舞い用にならな。」
2人が離れるとすぐに俺に紙を手渡し、
「会議の詳細だ。だいぶまずいことになってる。気をつけろよ。」
そう言ってバドルは出ていった。
お見舞いのため?に色々買っていたらお昼を過ぎた。
そしてお昼を食べて買い物したら迎えにいくのは夕方になってしまった。
「今まで何してたんじゃ。。」
「お見舞いの品買ってたんだよ。」
「感謝して。」
「これ、あげる。」
「なんじゃこれは。」
2人は食べかけのパンを差し出す。
「今日のお昼の残り。」
「美味しかった。」
すごく不満げな師匠だが、貰ったパンを口に放り込む。
「師匠、体の方はどうだった。」
「結構重症でな。調子が戻るのは三日ってところじゃ。」
内臓やられて、三日で動けるのか。
でも、師匠も老いたな。昔なら三日どころか半日あれば大抵は治っていたのに。
「老いは怖いのう。あんな小僧からの一撃で動けんくなるとは。」
「でも、めちゃくちゃ強かった。」
「あれが上位魔族?」
「そんな訳なかろう。良くて中位。上位魔族であればワシらは生きておらんよ。」
そんな恐ろしいことを口走りつつ、師匠はニヤリと笑う。
「さて、ワシは動けんが鍛えることはできる。お主らを一ヶ月でやつと同じくらいにまで鍛えてやろう。」
かわいそうに。師匠の特訓は地獄そのものだ。
成果はそれに見合うため、受けたことを後悔はしていないが2度とやりたくない。
「カイン、お主もじゃ。城の中なら施設もある。楽しみじゃのう。」
終わった。
何もわかっていない2人の顔を見て、トラウマにならないことを祈った。
本人は平気そうにしていたが内臓がいくつかやられていたらしい。
今日はもう会えなさそうだ。
「ジジイ死んじゃう?」
「またジジイに会える?」
今朝とは全く違う2人にまた心が温まる。
「大丈夫。あれくらいじゃ師匠は死なないよ。明日には会える。」
それでもまだ心配そうな顔をするので頭を撫で、俺は笑う。
「宿に帰ろう。今日は疲れただろ。抱っこしてやろうか。」
「うん。」
「やった。」
2人はコロっと態度を変え俺に飛び乗ってくる。
意外に重く、俺はよろける。
「やっぱりなし。」
2人を振り下ろし、宿に向けて走る。
「えー、抱っこ!」
「嘘つき!」
飛びついてきそうな勢いで追いかけてくる。
俺は全力で逃げた。
数分走って、ようやく宿についた。
「カイン早いよ。」
「迷子になるところだった。」
すぐ後ろに頬を膨らまして近づくアマトとミタマ。
結構早く走ったが息切れもしていない。なんて体力だ。
「よし、ご飯にしよう。お昼食べれてないしな。」
今日は大変だった。
でもみんなが無事に生きている。それだけでいい1日だったと言える。
何を食べるか考える2人をみてそう思った。
翌日。
師匠を迎えにいくために支度をしている最中、バドルが宿の扉を蹴破って入ってきた。
「おい、壊れたらどうするんだ。」
「それどころじゃない。昨日、治安騎士団の団長が殺された。」
「は。すまん、もう一回言ってくれ。」
俺は耳を疑う情報につい聞き返してしまう。
「よく聞け。昨日、任務中に行方不明になった団長が未明に路地で死んでるところが見つかった。」
団長が死んだ?
俺は会ったことがないが、相当の実力者であることは予想できる。
少なくともその辺のチンピラが束になっても敵わない。
つい最近も駐屯地が襲われたり、10人も騎士が殺されている。
あの魔族たちがやったとも考えられるが、なぜここまで騎士に執着しているのか。
「なんで俺のところに知らせに来たんだ。」
「陛下に言われたからだ。偶然か知らんが明後日『四都』の騎士団長が集まる。それに参加しろ。」
『四都』
これは『北都』『南都』『西都』『東都』のこと。
帝国の最端で栄える大都市で、都を守るため騎士団が設置されている。
帝都は護衛騎士団や、軍の本部があるが『四都』にはない。
さらに魔獣や治安もよくない。そのため、騎士団は帝都よりもはるかに強い。
特に魔王国に接する『南都』の騎士団は英傑ばかり。
それらをまとめる騎士団長の会議に参加。癖者も多いと聞く。
絶対に嫌だ。
「断ることはできないのか。仲間探しで忙しいんだが。」
「王命だから無理だろうな。あと仲間は俺が見繕っといてやる。」
これは断れなさそうだな。
俺は深くため息を吐いた。
その様子を見たアマトとミタマはバドルとつつく。
「カインいじめてる?」
「僕たち許さない。」
「いや、そういうわけじゃないんだが。」
2人がムッとしているのを見て、バドルは困り始める。
いい気味である。
「そういえば『モモノハナ』どうなってるかわかるか。」
「聞いてないのか。剣聖様がボコボコにして解決したぞ。」
師匠か。いつの間に暴れたんだ。
「じゃあ、そのお礼も言わないと。2人ともそろそろ行こう。」
「わかった。」
「お菓子買って。」
「お見舞い用にならな。」
2人が離れるとすぐに俺に紙を手渡し、
「会議の詳細だ。だいぶまずいことになってる。気をつけろよ。」
そう言ってバドルは出ていった。
お見舞いのため?に色々買っていたらお昼を過ぎた。
そしてお昼を食べて買い物したら迎えにいくのは夕方になってしまった。
「今まで何してたんじゃ。。」
「お見舞いの品買ってたんだよ。」
「感謝して。」
「これ、あげる。」
「なんじゃこれは。」
2人は食べかけのパンを差し出す。
「今日のお昼の残り。」
「美味しかった。」
すごく不満げな師匠だが、貰ったパンを口に放り込む。
「師匠、体の方はどうだった。」
「結構重症でな。調子が戻るのは三日ってところじゃ。」
内臓やられて、三日で動けるのか。
でも、師匠も老いたな。昔なら三日どころか半日あれば大抵は治っていたのに。
「老いは怖いのう。あんな小僧からの一撃で動けんくなるとは。」
「でも、めちゃくちゃ強かった。」
「あれが上位魔族?」
「そんな訳なかろう。良くて中位。上位魔族であればワシらは生きておらんよ。」
そんな恐ろしいことを口走りつつ、師匠はニヤリと笑う。
「さて、ワシは動けんが鍛えることはできる。お主らを一ヶ月でやつと同じくらいにまで鍛えてやろう。」
かわいそうに。師匠の特訓は地獄そのものだ。
成果はそれに見合うため、受けたことを後悔はしていないが2度とやりたくない。
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