元英雄のやり直し

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1章 途切れた道、踏み出す道

2話 勘違い

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昨日の騒動から一転。
俺は気持ちを新ため、軽やかに職場に向かった。
俺の職場は帝都の中心にあるらしい。
役所からは騎士になれ、という雑な通達しか来ていない。
怪しいと思うが、行けばわかるだろう。

治安騎士駐屯地をすぎ、ついた先は帝都の中心、『皇城』だった。
・・・・・道を間違えたようだ。
引き返そうとしたその時、周りから微かながら気配を感じた。
さてどうするべきか。
「おい、ここになんのようだ。」
逃げようとした矢先、進行方向に1人の黒ずくめの男が現れた。
おそらく相手は衛兵。刺激しないよう丁寧に話すか。
「えっと、私はカインと申します。道に迷ってしまって。」
俺が話した瞬間、彼らに緊張が走ったのがわかった。目の前の男に関しては跪いている。なぜだ。
彼らの意識は俺でなく、俺の後ろに向いていることに気がついた。
「ご無沙汰しております。ゲニス皇子。」
俺は急いで跪いた。後ろにいたのは皇帝の第一子にして皇位継承権第一位、ゲニス・ヒューマン。
一介の平民が言葉を交わしていい人物ではない。
今は領地経営を学ぶために北方にいると聞いていたがなんでここに。
「そんなに堅苦しくしなくていい。そこのカインと言ったか。」
「はい。」
「君の噂はよく聞いている。君が妹の護衛騎士になるなんて本当に嬉しいよ。」
「へ?」
俺は思わず顔を上げる。妹の護衛騎士、あれゲニス皇子の妹って、皇族だよな。その護衛?
「どうしたんだい。変な顔して。」
「・・・・・・。」
「おい、返事をしろ。ゲニス皇子が質問なさっているだろう。」
俺は回らない頭を使って、なんとか返事をする。
「私は治安騎士になるのでは・・。」
「なるほど、いつもの父上の説明不足か。」
「どうかなさいましたか。」
「なんでもないよ。カイン、君は普通の騎士では収まらない。皇族の護衛騎士になるんだ。案内するよ。」
ゲニス皇子の護衛に囲まれ、連れていかれそうになるが、男が必死に止める。
「お、お待ちください。まだこの者の確認が済んでおりません。」
「そうだったのか。では食事会で会おう。」
ゲニス皇子は護衛を連れて歩いて城内に入って行った。

ゲニス皇子がいなくなり、男との間に微妙な空気が流れる。
「・・・所持品検査とかするんですか。」
「するが、我々が確認するのは実力だ。来い。」
男の合図とともにそっくりな2人の中性的な見た目の子供が現れた。
見た感じ15歳にも満たないが、実力はそこらの騎士を凌駕している。
「こいつらは幼少から軍部で鍛え上げられた者達だ。」
『幼少から軍部で』。経験上、子供を使う者に碌な奴はいない。こいつとは関わらない方がいいだろう。
「こいつらを戦闘不能にしろ。そうすれば合格だ。」
「この子供達を殴れとでもいうのか。」
すると真顔だった2人が眉のしわを寄せた。
「子供じゃない。僕たちはお前より稼いでる。」
「そう。私たちはお前より強い。大人なの。」
地雷を踏んでしまったようだ。幼い2人の殺気が肌に刺さる。
「怪我させたくないなら、無傷で抑えればいい。昨日のようにはいかんがな。」
「え、なんでそれ知ってるんだ。」
「油断するな。」
目を離した一瞬、2人が距離を詰めてきた。俺は後ろに下がる。体勢を立て直したいがそれを許してくれる相手ではないようだ。
「所詮、おじさんだね。」
「私たちの敵じゃない。」
2人はナイフを持って戦っている。見事な連携で止まらない斬撃。
「攻撃しないの。おじさん。」
「できないんじゃない。おじさん。」
「俺はおじさんじゃない!」
彼らは互いに傷つけないようにある程度の距離を空けて攻撃している。そこを狙おう。
まずは素早く上着を脱ぎ、投げつけて一方の視界を遮る。そしてナイフを手で挟み根本から折る。
そして、軽く肘で横に飛ばす。
「ミタマ!」
2人は距離を保った陣形を崩せず、反応に遅れる。慌てて近づく少年に合わせて距離を詰め、腹に手を重ねる。
「うがっ、」
そのまま力を込め衝撃与えると、一瞬耐えたがすぐ倒れた。どちらももう、戦う意思はなさそうだ。
「見事だ、カイン。試験は終わりだ。城に入っていいぞ。」
「大丈夫か。」
男を放って置いて、落ち込んでいる2人に近づく。
「何しに来た。」
「見下しにきたのよ。」
めちゃくちゃ嫌われているな。しょうがないか。
「2人の名前を聞きにきた。」
「「教えたくない。」」
どこまで似ているのか。2人は同時に返事をした。
「そう言わずにさ、俺勝ったんだし。」
そういうと2人は黙り込んだ。そんなに名前を言うのが嫌なのか。大人しく立ち去るか。
「・・無理に言う必要はない。また縁があればな」
「アマト。」
腹パンした少年が名前を言ってくれた。それに驚くもう一方の少女。
「ちょっと、なんで言っちゃうの。」
「この人の言う通り、僕らは負けたんだ。名前くらい、いいだろ。」
「・・・私はミタマ。」
「ありがとう。俺はカイン。よろしく。」
自己紹介が終わり、俺はミタマに使っていた短剣を渡す。
「古いけど、丈夫で切れ味もいいよ。」
「え、なんでくれるの?」
「武器がないと困るだろう。あと、昨日色々あっ、人と仲良くしようと思って。」
「仲良く・・。」
「そう。仲良くしてたら、困った時助け合える。」
昨日バドルに言われたばっかりだしな。
「困ったら、助けてくれるって本当?」
「嘘ついてない?」
「本当だ。見捨てるようなことは絶対にしない。」
そう答えると2人は、そっくりな笑顔を見せた。
その姿がなぜか先ほどより幼く、いや年相応に感じた。つい頭を撫でてしまう。
嫌がられると思ったが、2人は小さく笑い、そのまま撫でられていた。
その表情は戦場では見ることがなかった、ただの子供の顔だった。
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