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02. リナリア
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ジュリアンが夜会を欠席したため、リナリアのエスコートは、父親が務めている。エルヴィユ伯爵は、小柄な娘を配慮せず、無頓着に歩を進めた。
半ば引きずられる格好で、リナリアは邸内を進んでいった。
「モタモタするな。みっともないから、転ぶんじゃないぞ」
「はい、お父様」
人前でつまずくまいと、彼女は神経を張りつめる。青白い顔は硬く強張り、憂いを帯びた眼差しが、普段に増して陰鬱にかげっていた。
ジュリアンのエスコートは、小柄なリナリアに歩調を合わせて、ゆったりと優雅に歩く。
みっともないのが嫌いな王子は、リナリアの父とは違って、同伴者をぶら下げて歩む無様など晒さない。
「どうしたの、リナリア。そんなに暗い顔をして」
後妻のゲンティアナが、リナリアを振り返る。継子がまとった地味なドレスを眺めて、底意地悪く薄笑いしていた。
「そのドレスが気に入らないのかしら? とっても似合っているのに、おかしいわねぇ」
「……」
リナリアは唇を噛んで、うつむいた。ランドリーメイドに預けてきた、美しいドレスを思うと、胸が苦しくなる。身仕度の最中、継母からお茶をかけられて、大切なドレスを汚してしまったのだ。
長手袋で隠した腕には、わずかな赤みが残っている。痕にならない程度だが、水で冷やしても、まだ痛んだ。けれど、婚約者がくれたドレスを汚されたことのほうが、火傷より何倍も辛かった。
リナリアの母が亡くなって、喪があけると早々に、エルヴィユ伯爵は再婚した。相手は、一回り年下の、子爵令嬢ゲンティアナ。元々、無関心だった父親は、後妻を娶ると、いっそう娘への興味を失った。火傷の件でも、不注意を咎められたのは、お茶をかけられたリナリアだった。
ゲンティアナはすでに、伯爵家の嫡男となる異母弟を産んでいる。今更、継子虐めなどしなくても、磐石な立場である。
先妻の娘が気に入らないなら、無視すればいいだろうに、嫌がらせが止む気配はない。むしろ、リナリアが年頃になるにつれ、攻撃性が増している。
『はっきり言うが、お前の服は酷すぎる。そんな格好では、修道女見習いと間違われるぞ』
いつも野暮ったい姿のリナリアに、そう指摘したのはジュリアンだ。衣服は両親が選ぶため、改善は難しいと答えた彼女に、麗しい王子は困惑していた。
エルヴィユ家の美的センスを危ぶまれたのか、王室の仕立屋の元へ連れ出されたリナリアは、訳も分からず採寸された。後日、上品な衣類が屋敷へ届くと、ゲンティアナは悔しくてならないようだった。
それからは定期的に、伯爵家へ仕立屋が遣わされている。
「綺麗だよ、ゲンティアナ。その真珠は、美しいお前によく似合う」
「うふふ。嬉しいわ、あなた」
エルヴィユ伯爵は、着飾った後妻にかまけて、娘を意に介さない。亡き母が遺した真珠のネックレスが、ゲンティアナの下品な胸元を飾っていた。
ザラザラした感情がわきあがる。リナリアは大切な髪飾りへ、そっと触れた。宝石の硬い質感が指先に伝わると、波立ちかけた心が落ち着いていく。
母から相続した宝石箱を取り上げられたのは、いつだったか。真珠のネックレスや、鳩の血色の指輪や、エメラルドの耳飾りが、ゲンティアナの体を彩り始めたのは。
リナリアが身につける宝飾品がなくなっても、父はどうでもいいようだった。職を失いたくない使用人は、厄介事から目を背けた。誇り高い貴族や、博愛を説く聖職者は、リナリアの苦境に気付きさえしなかった。
『最近のお前は、また地味になってきたな。体質が変わって、金属にかぶれるのか?』
ジュリアンだけが、そう尋ねてくれた。かぶれませんと正直に返事をしたら、繊細な彫刻よりも美しい顔に、不可解そうな表情を浮かべていた。
リナリアの屋敷へ宝石商がやってきたのは、その数日後のことだった。
『お好みの品をお選び下さい、リナリア様。お支払は、ジュリアン殿下がなさいますので』
嫉妬に歪んだゲンティアナの顔など、どうでも良かった。リナリアは迷わず、サファイアの髪飾りを選んでいた。
『もっと希少な石のついた髪飾りもございますよ?』
これが欲しいと、リナリアは言った。どうしても欲しくてたまらなかった。あまりにも強い衝動に、リナリア自身が驚いたほどだ。
金で縁取られたサファイアは、ジュリアンの瞳と、同じ色をしている。たとえガラス玉でも、その髪飾りを選んでいただろう。
母の遺品は取り上げられても、王族からの贈り物は、誰も彼女から奪えなかった。
「おお、あちらに侯爵様がいらっしゃるぞ。是非、ご挨拶せねば。くれぐれも私たちに恥をかかせるなよ、リナリア」
「はい、お父様」
幾人もの有力貴族と、挨拶を交わす。礼儀正しく対応されるが、深入りせぬよう一線を引かれていた。
祝福に目覚めない神子のリナリアは、腫れ物扱いされている。交わされる白々しい会話に混じった、いくつもの見えない棘。冷たい殻で心を覆い、防御に徹する。
「それで、リナリア殿の調子は――……」
「いやはや、信じ難い体たらくで――――もっと精進――――いずれ必ず――――おい、返事を――……」
「はい、お父様」
名ばかりの神子は、控えめな笑みを浮かべて、短く返事をする。はい、お父様。はい、侯爵様。はい。はい。はい。はい……。
問いかけの形をとっているだけで、彼らは質問などしていない。いいえと答えて、リナリアを責めなかったのは、亡くなった母とジュリアンだけだった。
幾度も痛い目に合い、積み重ねた苦い経験で、つくづく思い知らされたのだ。
リナリアは、ジュリアン以外への信頼を、とっくに失っている。辛い毎日に堪えながら、素敵な婚約者から愛していると言って貰える日を、ずっと待ち望んでいた。
挨拶回りを終えると、招待客に紛れて、両親から距離を取った。
気分が悪く、足元がふらついている。最近、悩み事を抱えているせいか、体が本調子ではなかった。
心配そうな表情を浮かべて、メイドが一人、リナリアに声をかけてくる。
「お加減が悪いのではございませんか? 別室で、お休みになってはいかがでしょう」
「ええ、そうしようかしら。ありがとう」
案内に従い、休憩室へ向かった。ひと気のない廊下で立ち止まり、メイドが部屋の扉を開く。薄暗い室内の様子に、おかしいと思ったときには、遅かった。乱暴に背中を突き飛ばされて、部屋の中へ押し込まれていた。
「きゃっ!」
床にうずくまるリナリアの背後で、扉が閉ざされ、カチャリと錠がおろされた。
頭の中に嫌な考えが浮かんでくる。放蕩貴族がメイドを買収し、一夜の戯れに興じようとしているのかもしれない。
ふいに、死角から男の手が伸びてきた。男はリナリアの腕を無造作に掴む。恐怖に押し潰されそうになりながら、身を守るために必死で暴れた。
「いやっ! わたくしに触らないで、汚らわしい! この身は尊きジュリアン殿下のものです! 今すぐ放しなさい!」
非力ながらも身をよじり、精一杯、逃れようと足掻く。嫌悪のあまり、肌が粟立っていた。
大人しい彼女なら、震えあがって声も出ないと考えていたのだろうか。たじろいだ男が、彼女の名前を呟いた。
「リナリア」
ハッと息をつめたリナリアは、抵抗をやめた。間違えようもない、特別な人の声だった。
「ジュリアン殿下?」
落ち着いて暗がりに目を凝らすと、頼もしい婚約者が立っていた。ジュリアンだと分かった途端、安堵が込み上げてくる。リナリアは体の力を抜いて、すっかり無防備になった。
「殿下とは気付かず、取り乱してしまい、申し訳ございません。本日は、欠席されるご予定だとうかがっていたものですから」
慌てて裾を直して、居ずまいを整える。気恥ずかしさに、頬が染まった。婚約者に会えた喜びで、空虚な胸が、たちまち満たされていく。
自分がジュリアンから、女性として認識されていないことを、リナリアは知っていた。婚約者が、華やかな女性たちと、割り切った交際を続けていることも。浮気どころか、リナリアはただの子供としか思われていない。
それでも、婚約者への思慕と憧憬は、つのるばかりだった。やっと十四歳になり、夏至祭の三月後には、結婚を控えている。ジュリアンの正式な妻になれることを、リナリアは喜んでいた。
「殿下にお会いできるなんて、嬉しゅうございます」
「そうか」
心からの笑みを浮かべて、リナリアは顔を輝かせた。ジュリアンは、無邪気な彼女を、じっと見下ろしている。
後ろ手に、彼が何かを隠し持っていることを、リナリアは気付いていなかった。
半ば引きずられる格好で、リナリアは邸内を進んでいった。
「モタモタするな。みっともないから、転ぶんじゃないぞ」
「はい、お父様」
人前でつまずくまいと、彼女は神経を張りつめる。青白い顔は硬く強張り、憂いを帯びた眼差しが、普段に増して陰鬱にかげっていた。
ジュリアンのエスコートは、小柄なリナリアに歩調を合わせて、ゆったりと優雅に歩く。
みっともないのが嫌いな王子は、リナリアの父とは違って、同伴者をぶら下げて歩む無様など晒さない。
「どうしたの、リナリア。そんなに暗い顔をして」
後妻のゲンティアナが、リナリアを振り返る。継子がまとった地味なドレスを眺めて、底意地悪く薄笑いしていた。
「そのドレスが気に入らないのかしら? とっても似合っているのに、おかしいわねぇ」
「……」
リナリアは唇を噛んで、うつむいた。ランドリーメイドに預けてきた、美しいドレスを思うと、胸が苦しくなる。身仕度の最中、継母からお茶をかけられて、大切なドレスを汚してしまったのだ。
長手袋で隠した腕には、わずかな赤みが残っている。痕にならない程度だが、水で冷やしても、まだ痛んだ。けれど、婚約者がくれたドレスを汚されたことのほうが、火傷より何倍も辛かった。
リナリアの母が亡くなって、喪があけると早々に、エルヴィユ伯爵は再婚した。相手は、一回り年下の、子爵令嬢ゲンティアナ。元々、無関心だった父親は、後妻を娶ると、いっそう娘への興味を失った。火傷の件でも、不注意を咎められたのは、お茶をかけられたリナリアだった。
ゲンティアナはすでに、伯爵家の嫡男となる異母弟を産んでいる。今更、継子虐めなどしなくても、磐石な立場である。
先妻の娘が気に入らないなら、無視すればいいだろうに、嫌がらせが止む気配はない。むしろ、リナリアが年頃になるにつれ、攻撃性が増している。
『はっきり言うが、お前の服は酷すぎる。そんな格好では、修道女見習いと間違われるぞ』
いつも野暮ったい姿のリナリアに、そう指摘したのはジュリアンだ。衣服は両親が選ぶため、改善は難しいと答えた彼女に、麗しい王子は困惑していた。
エルヴィユ家の美的センスを危ぶまれたのか、王室の仕立屋の元へ連れ出されたリナリアは、訳も分からず採寸された。後日、上品な衣類が屋敷へ届くと、ゲンティアナは悔しくてならないようだった。
それからは定期的に、伯爵家へ仕立屋が遣わされている。
「綺麗だよ、ゲンティアナ。その真珠は、美しいお前によく似合う」
「うふふ。嬉しいわ、あなた」
エルヴィユ伯爵は、着飾った後妻にかまけて、娘を意に介さない。亡き母が遺した真珠のネックレスが、ゲンティアナの下品な胸元を飾っていた。
ザラザラした感情がわきあがる。リナリアは大切な髪飾りへ、そっと触れた。宝石の硬い質感が指先に伝わると、波立ちかけた心が落ち着いていく。
母から相続した宝石箱を取り上げられたのは、いつだったか。真珠のネックレスや、鳩の血色の指輪や、エメラルドの耳飾りが、ゲンティアナの体を彩り始めたのは。
リナリアが身につける宝飾品がなくなっても、父はどうでもいいようだった。職を失いたくない使用人は、厄介事から目を背けた。誇り高い貴族や、博愛を説く聖職者は、リナリアの苦境に気付きさえしなかった。
『最近のお前は、また地味になってきたな。体質が変わって、金属にかぶれるのか?』
ジュリアンだけが、そう尋ねてくれた。かぶれませんと正直に返事をしたら、繊細な彫刻よりも美しい顔に、不可解そうな表情を浮かべていた。
リナリアの屋敷へ宝石商がやってきたのは、その数日後のことだった。
『お好みの品をお選び下さい、リナリア様。お支払は、ジュリアン殿下がなさいますので』
嫉妬に歪んだゲンティアナの顔など、どうでも良かった。リナリアは迷わず、サファイアの髪飾りを選んでいた。
『もっと希少な石のついた髪飾りもございますよ?』
これが欲しいと、リナリアは言った。どうしても欲しくてたまらなかった。あまりにも強い衝動に、リナリア自身が驚いたほどだ。
金で縁取られたサファイアは、ジュリアンの瞳と、同じ色をしている。たとえガラス玉でも、その髪飾りを選んでいただろう。
母の遺品は取り上げられても、王族からの贈り物は、誰も彼女から奪えなかった。
「おお、あちらに侯爵様がいらっしゃるぞ。是非、ご挨拶せねば。くれぐれも私たちに恥をかかせるなよ、リナリア」
「はい、お父様」
幾人もの有力貴族と、挨拶を交わす。礼儀正しく対応されるが、深入りせぬよう一線を引かれていた。
祝福に目覚めない神子のリナリアは、腫れ物扱いされている。交わされる白々しい会話に混じった、いくつもの見えない棘。冷たい殻で心を覆い、防御に徹する。
「それで、リナリア殿の調子は――……」
「いやはや、信じ難い体たらくで――――もっと精進――――いずれ必ず――――おい、返事を――……」
「はい、お父様」
名ばかりの神子は、控えめな笑みを浮かべて、短く返事をする。はい、お父様。はい、侯爵様。はい。はい。はい。はい……。
問いかけの形をとっているだけで、彼らは質問などしていない。いいえと答えて、リナリアを責めなかったのは、亡くなった母とジュリアンだけだった。
幾度も痛い目に合い、積み重ねた苦い経験で、つくづく思い知らされたのだ。
リナリアは、ジュリアン以外への信頼を、とっくに失っている。辛い毎日に堪えながら、素敵な婚約者から愛していると言って貰える日を、ずっと待ち望んでいた。
挨拶回りを終えると、招待客に紛れて、両親から距離を取った。
気分が悪く、足元がふらついている。最近、悩み事を抱えているせいか、体が本調子ではなかった。
心配そうな表情を浮かべて、メイドが一人、リナリアに声をかけてくる。
「お加減が悪いのではございませんか? 別室で、お休みになってはいかがでしょう」
「ええ、そうしようかしら。ありがとう」
案内に従い、休憩室へ向かった。ひと気のない廊下で立ち止まり、メイドが部屋の扉を開く。薄暗い室内の様子に、おかしいと思ったときには、遅かった。乱暴に背中を突き飛ばされて、部屋の中へ押し込まれていた。
「きゃっ!」
床にうずくまるリナリアの背後で、扉が閉ざされ、カチャリと錠がおろされた。
頭の中に嫌な考えが浮かんでくる。放蕩貴族がメイドを買収し、一夜の戯れに興じようとしているのかもしれない。
ふいに、死角から男の手が伸びてきた。男はリナリアの腕を無造作に掴む。恐怖に押し潰されそうになりながら、身を守るために必死で暴れた。
「いやっ! わたくしに触らないで、汚らわしい! この身は尊きジュリアン殿下のものです! 今すぐ放しなさい!」
非力ながらも身をよじり、精一杯、逃れようと足掻く。嫌悪のあまり、肌が粟立っていた。
大人しい彼女なら、震えあがって声も出ないと考えていたのだろうか。たじろいだ男が、彼女の名前を呟いた。
「リナリア」
ハッと息をつめたリナリアは、抵抗をやめた。間違えようもない、特別な人の声だった。
「ジュリアン殿下?」
落ち着いて暗がりに目を凝らすと、頼もしい婚約者が立っていた。ジュリアンだと分かった途端、安堵が込み上げてくる。リナリアは体の力を抜いて、すっかり無防備になった。
「殿下とは気付かず、取り乱してしまい、申し訳ございません。本日は、欠席されるご予定だとうかがっていたものですから」
慌てて裾を直して、居ずまいを整える。気恥ずかしさに、頬が染まった。婚約者に会えた喜びで、空虚な胸が、たちまち満たされていく。
自分がジュリアンから、女性として認識されていないことを、リナリアは知っていた。婚約者が、華やかな女性たちと、割り切った交際を続けていることも。浮気どころか、リナリアはただの子供としか思われていない。
それでも、婚約者への思慕と憧憬は、つのるばかりだった。やっと十四歳になり、夏至祭の三月後には、結婚を控えている。ジュリアンの正式な妻になれることを、リナリアは喜んでいた。
「殿下にお会いできるなんて、嬉しゅうございます」
「そうか」
心からの笑みを浮かべて、リナリアは顔を輝かせた。ジュリアンは、無邪気な彼女を、じっと見下ろしている。
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