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9章
1話
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翌朝、ニコルが帰ってから、レイモンドは手紙を書いていた。
何度も書いて消してを繰り返して文章を認める。
一度会って話がしたいと。
その返事が来るかどうか賭けでもあったがレイモンドはその賭けに出る。
相手は、第一王子側近であるレイモンドの長兄だ。
レイモンドよりも一回り以上年上で、父から爪弾きにされていたレイモンドをそれとなく気遣ってくれていた。
「手を貸してくれるかしら」
駄目なら駄目で仕方ないと思いながら、レイモンドは封をした。
「リュークお願い」
「畏まりました」
リュークに手紙を預けると、 レイモンドは大きく延びをした。
「今月いっぱいで此処を離れるわ。小さな家を買ったから、そちらに行くわ……リューク今までありがとうね」
「レイモンド様、此処は貴方様の家ですから転居なさらずとも」
リュークはそう言うが、皆に最後の給金を手渡して必要なものは鞄に詰めた。
「本当に良くしてくれてありがとう。貴方も戻りなさいな……アタシの監視なんて嫌だったでしょう?」
「……ご存知で」
リュークは目を伏せる。
「ええ、最初は少し気になるくらいだったけれど時折おかしいなと思ったら気づいてしまってね?でもだからといって貴方をどうこうしようとは思わなかったわ。
リッツにはとても優しかったから。 でも、リッツのことβとして報告してくれたんですって?それで貴方が不利にならないといいのだけれど」
白いシャツに黒の燕尾。
典型的な侍従の格好のリュークはがっくりと項垂れていた。
「困ったことがあったら連絡を頂戴、力になれることなら力になるわ」
「レイモンド様……」
「ほら、しっかりして頂戴」
レイモンドは封蝋のスプーンや炉を片付け、蝋燭を消してから箱に収めるとそれを持って立ち上がる。
「レイモンド様、これを」
リュークが差し出してきたのは革の袋。
机に置くと、チャリっと金属の音がした。
「私の給与は、宰相様からでておりましたのでこれは……」
どうやら、レイモンドが給与として渡していた金貨が入っているようだった。
「リューク、いいのよこれは沢山リッツを見てもらったし本当に少ないけれど貴方の働きに対する対価として受け取って頂戴。 もし、どうしても要らないのなら何処か孤児院にでも寄付をして頂戴……ね?
リュークには悪いけれど……必要なければリュークが処分してくれないかしら」
レイモンドはにこりと微笑んで封蝋の箱を手提げの鞄に詰めた。
「見送りはいいわ、貴方も最後の片付けがあるでしょう?そうだ、この家の鍵……よね、はいこれ……よろしくね」
レイモンドは首から下げていたネックレスを外すとそれに掛かった鍵ごと手渡す。
「他の皆にも会うことがあれば、お世話になってありがとうと伝えておいて」
レイモンドは大きな鞄を両手に持って玄関に向かう。
リッツと新しい生活をするために。
何度も書いて消してを繰り返して文章を認める。
一度会って話がしたいと。
その返事が来るかどうか賭けでもあったがレイモンドはその賭けに出る。
相手は、第一王子側近であるレイモンドの長兄だ。
レイモンドよりも一回り以上年上で、父から爪弾きにされていたレイモンドをそれとなく気遣ってくれていた。
「手を貸してくれるかしら」
駄目なら駄目で仕方ないと思いながら、レイモンドは封をした。
「リュークお願い」
「畏まりました」
リュークに手紙を預けると、 レイモンドは大きく延びをした。
「今月いっぱいで此処を離れるわ。小さな家を買ったから、そちらに行くわ……リューク今までありがとうね」
「レイモンド様、此処は貴方様の家ですから転居なさらずとも」
リュークはそう言うが、皆に最後の給金を手渡して必要なものは鞄に詰めた。
「本当に良くしてくれてありがとう。貴方も戻りなさいな……アタシの監視なんて嫌だったでしょう?」
「……ご存知で」
リュークは目を伏せる。
「ええ、最初は少し気になるくらいだったけれど時折おかしいなと思ったら気づいてしまってね?でもだからといって貴方をどうこうしようとは思わなかったわ。
リッツにはとても優しかったから。 でも、リッツのことβとして報告してくれたんですって?それで貴方が不利にならないといいのだけれど」
白いシャツに黒の燕尾。
典型的な侍従の格好のリュークはがっくりと項垂れていた。
「困ったことがあったら連絡を頂戴、力になれることなら力になるわ」
「レイモンド様……」
「ほら、しっかりして頂戴」
レイモンドは封蝋のスプーンや炉を片付け、蝋燭を消してから箱に収めるとそれを持って立ち上がる。
「レイモンド様、これを」
リュークが差し出してきたのは革の袋。
机に置くと、チャリっと金属の音がした。
「私の給与は、宰相様からでておりましたのでこれは……」
どうやら、レイモンドが給与として渡していた金貨が入っているようだった。
「リューク、いいのよこれは沢山リッツを見てもらったし本当に少ないけれど貴方の働きに対する対価として受け取って頂戴。 もし、どうしても要らないのなら何処か孤児院にでも寄付をして頂戴……ね?
リュークには悪いけれど……必要なければリュークが処分してくれないかしら」
レイモンドはにこりと微笑んで封蝋の箱を手提げの鞄に詰めた。
「見送りはいいわ、貴方も最後の片付けがあるでしょう?そうだ、この家の鍵……よね、はいこれ……よろしくね」
レイモンドは首から下げていたネックレスを外すとそれに掛かった鍵ごと手渡す。
「他の皆にも会うことがあれば、お世話になってありがとうと伝えておいて」
レイモンドは大きな鞄を両手に持って玄関に向かう。
リッツと新しい生活をするために。
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