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9章
2話
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「おはようリッツ、良い天気よ」
レイモンドは小さな窓のカーテンを開く。
小さな家を買った。
一階には小さなダイニングキッチンと風呂や水場。
二階に寝室と荷物を置くための部屋。
リッツがいるため、井戸が近くて風呂がある家が良くてここにした。
リッツを抱き上げて階下に降りると、昨夜の残りのポトフに火を入れながらレイモンドはリッツのミルクを作り始めた。
あまり酷い夜泣きをしないリッツ。
おかげでレイモンドも軽い睡眠不足ではあるが、まだ動く事はできていた。
「さてと、リッツミルクにしましょ」
程よく人肌になったミルクをたっぷりと飲ませてゲップをさせてから、レイモンドは手早く自分の食事を済ませた。
揺れる籠にリッツを寝かせ、ユラユラと片手で揺らしながらポトフを口にする。
何かが見えるのか、宙に腕をのばしキャッキャッとはしゃぐリッツ。
暫くはしゃぐと疲れたのか、リッツはうとうとと微睡み始めた。
「いい子ね、リッツ」
リッツをあやしていると、玄関の扉にノックがあった。
数歩で届いてしまう近さの距離感。
騎士団の個人部屋と対して変わらない広さかもしれない。そう思いながら立ち上がると扉に近付き鍵を開けて扉を引いた瞬間、強い力で抱きしめられた。
「きゃっ、な、ニコル!」
「いらっしゃった……」
抱き締めてきたのはニコル。
「やだわ、ニコル。ちゃんとここに居るって手紙に書いたじゃない!まさか、あっちの家に行ったの?」
背中をポンポンと叩いてやると、ギュウギュウと締め付けてきていたニコルの力が少し緩んだ。
「レイモンド様……」
泣きそうな表情を浮かべたニコルにバカねと笑って室内に入るように促した。
「それに、アタシはもう貴方の上司じゃないのよ?様はいらないって言ったでしょう?」
「れ、レイモンド……」
「よくできました。食事は済ませた? ポトフならあるわよ」
「いただきます!」
レイモンド様の作ったものなら何でも食べたいです!と言う声が聞こえた気がした。
「狭い家だけど、ごめんなさいね? 今、少しだけ火を入れ直すから待ってちょうだい、座っていて」
食事用のテーブルはあっちだと指をさしてレイモンドはキッチンに立つ。
「椅子が、みっつある!」
ニコルはそう呟くと、ぽろぽろと泣き出した。
「なに、そんな泣くこと?」
「だって、レイモンド様……ふたつならお客様用かと思いますが、みっつなら俺のとリッツのでしょう? 嬉しいですね……俺の椅子……」
家族の証だよね……そう言って泣き笑うニコル。
レイモンドは全くいつまでも泣き虫なんだからと笑いながらポケットのハンカチを手渡してポトフをあたためるのだった。
レイモンドは小さな窓のカーテンを開く。
小さな家を買った。
一階には小さなダイニングキッチンと風呂や水場。
二階に寝室と荷物を置くための部屋。
リッツがいるため、井戸が近くて風呂がある家が良くてここにした。
リッツを抱き上げて階下に降りると、昨夜の残りのポトフに火を入れながらレイモンドはリッツのミルクを作り始めた。
あまり酷い夜泣きをしないリッツ。
おかげでレイモンドも軽い睡眠不足ではあるが、まだ動く事はできていた。
「さてと、リッツミルクにしましょ」
程よく人肌になったミルクをたっぷりと飲ませてゲップをさせてから、レイモンドは手早く自分の食事を済ませた。
揺れる籠にリッツを寝かせ、ユラユラと片手で揺らしながらポトフを口にする。
何かが見えるのか、宙に腕をのばしキャッキャッとはしゃぐリッツ。
暫くはしゃぐと疲れたのか、リッツはうとうとと微睡み始めた。
「いい子ね、リッツ」
リッツをあやしていると、玄関の扉にノックがあった。
数歩で届いてしまう近さの距離感。
騎士団の個人部屋と対して変わらない広さかもしれない。そう思いながら立ち上がると扉に近付き鍵を開けて扉を引いた瞬間、強い力で抱きしめられた。
「きゃっ、な、ニコル!」
「いらっしゃった……」
抱き締めてきたのはニコル。
「やだわ、ニコル。ちゃんとここに居るって手紙に書いたじゃない!まさか、あっちの家に行ったの?」
背中をポンポンと叩いてやると、ギュウギュウと締め付けてきていたニコルの力が少し緩んだ。
「レイモンド様……」
泣きそうな表情を浮かべたニコルにバカねと笑って室内に入るように促した。
「それに、アタシはもう貴方の上司じゃないのよ?様はいらないって言ったでしょう?」
「れ、レイモンド……」
「よくできました。食事は済ませた? ポトフならあるわよ」
「いただきます!」
レイモンド様の作ったものなら何でも食べたいです!と言う声が聞こえた気がした。
「狭い家だけど、ごめんなさいね? 今、少しだけ火を入れ直すから待ってちょうだい、座っていて」
食事用のテーブルはあっちだと指をさしてレイモンドはキッチンに立つ。
「椅子が、みっつある!」
ニコルはそう呟くと、ぽろぽろと泣き出した。
「なに、そんな泣くこと?」
「だって、レイモンド様……ふたつならお客様用かと思いますが、みっつなら俺のとリッツのでしょう? 嬉しいですね……俺の椅子……」
家族の証だよね……そう言って泣き笑うニコル。
レイモンドは全くいつまでも泣き虫なんだからと笑いながらポケットのハンカチを手渡してポトフをあたためるのだった。
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