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1章

23話

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さらりと気持ちの良い服を着せて貰って髪を乾かすと部屋の長椅子まで誘導される。
少しだけ揃えましょうねと言うキラ様に任せて、私は静かにお茶をいただいた。
経験は無かったが、熱い湯に入ると身体の中の水が汗として外に出てしまうため、出た水分を補充しないといけないらしいのだ。
出されたお茶は少しだけ甘味を感じる優しい味のお茶だった。
キラ様曰く、身体に吸収されやすいお茶なのだとか。

「ティア様、揃えるだけにさせていただきます」

シャリンと刃物の音がした。
髪が切られていくこの感覚と音は嫌いではない。
できれば、もっと軽くなるまで切って欲しいがそれは難しいだろう。
キラ様は切ってくれない確信がある。

「ありがとうございます」

切り終わりましたよと言われ、それにお礼を言うと、少しだけ結わえましょうかとなにやら軟らかい布のようなもので髪を括ってくれた。
右肩から身体の前面に流すようにしてくれ、毛先に触れると確かに綺麗に切ってくれていた。

「レイジュ様はもう少しかかりそうですから、お茶やお菓子はいかがですか?」
「大丈夫、キラ様こそお食事がまだでしょう?私の事はもう良いですからお食事をしてきてください。
それと、できれば何か楽器を貸していただけますか?レイジュが来るまで少しだけ弾きたいので。
ホウアン様が持ってきてくだされば、母の楽器が弾きやすいのですけれど…」
「わかりました、昼間の琴でいかがでしょうか」
「お願いします」

キラ様が部屋から出ていき、ややあってから琴が机に置かれた。
長椅子に座ったままでは届きづらいと床に座らせて貰う形でそっと琴に触れると、ピンと言う澄んだ音が鳴る。
やっぱり楽器は好きだ。
軽い調弦の後、思い浮かんだ曲を奏でる。
穏やかな風を唄う。
どこまでも吹き抜ける風が大地を走り空を行く。
軽快でありながらも少しだけ寂しそうなその曲は、母が好んで弾いた曲だ。
懐かしい。
優しかった父母の姿。
繰り返す旋律に、ふと終わらせ所がわからなくなってしまいそっと手を止めてしまう。
あの曲の終わりかたはどうだっただろうか。
琴から指を離すと拍手があった。

「上手いな」
「レイジュ…お帰りなさい」

随分と真剣に弾いてしまっていたのだろう。
レイジュが入ってきたのに気付かなかった。

「ごめんなさい…どうぞ」

少しだけ身体をずらしてレイジュが座れるように場所を作る。

「あ、キラ様に食事を取って貰うようにお願いしてしまいました…レイジュのお茶をどうしましょう」

茶器があればできるのにと困ってしまう。
目が見えないのが不自由だと思ってしまった。
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