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30話

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「とりあえず、1日くらいは横になっていてください」
軍医が首を傾げるくらい健康体だったらしく、それでも念のためだと1日寝台の上で様子を見るように言われてしまう。
そうすると、寝ている間はどうしても考えることはサティの事ばかりで、つい小さな花を吐いた。
「サティ……」
耳に触れるピアス。
戻ったら違うものを二人で選ぼうと約束し、流石にブレスを受けた瞬間には二度と会えない覚悟もしたが、何故か無傷に近い姿で帰れそうだ。
良かった……小さく息を吐き、俺は何もない天幕を見上げた。
少しだけ痛んだ背中も、だが寝て起きたらほぼ痛みも無くなっている。
それならば、寝ている理由が無いと起き上がろうとして他の騎士に止められた。
しぶしぶと、1日だけは大人しく従い、俺は翌日から前線に出た。
1日でも早くスタンピードを終わらせて王宮に帰りたい。
7日続くスタンピードの魔獣をサクサクと殲滅して行くなかで、最後の日にあのサティが付けてくれたブローチが外れて落ちた。
草むらに落ちたブローチと、外れた外套。
ふと、嫌な気持ちに教われると俺は壊れたブローチと外套を掴むと一気に駆け出した。
「後の処理は任せる!俺は一足先に城に戻る」
声を張り上げて副騎士団長にそう告げると後ろから何かを叫んでいたが、俺にはそんな叫びを聞いてやることはできず、愛馬の馬首を王宮に向けたのだった。
時折愛馬を休ませながらも一路王宮に駆けさせる。
並外れた体躯と体力のとびきりの軍馬だが、王宮に着く頃には顎が上がりバテる様子を見せていた。
「助かった、ゆっくりと休め」
すまないと謝りながらも騎士団の馬小屋に預けると、その足でラーサティヤの居場所を聞く、すると皆が目を逸らし王宮にいますと告げられた。
ラーサティヤに会いに行くと告げると、皆からはどうか先ずは王様にと言われ、王への先触れを頼みながらこのままではいけないと言われて自室でシャワーを浴びる。
そうしている間にも気持ちは何故か急いていた。
「サティ……どうした……お帰りなさいとどうして迎えてくれない」
小さく呟いた言葉は流れ落ちる水と共に、吸い込まれていった。
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