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40話

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車輪が止まり、御者が車輪止めを置いてからラーサティアに声を掛ける。

「サティ、着いたぞ?」
「はい」

立ち上がったラーサティアはそっと足を動かして馬車を降りた。
慣れない動作もゆっくりならば問題は無さそうだが、やはり不安になるのはあまりにも過保護だろうか。

「ニクス様、入りましょう?」

振り向いたラーサティアの顔には笑みが戻っていた。
差し出された手を繋ぐように俺も馬車を降りると、御者には支払いとは別に少し多めのチップを握らせた。
これからも優遇して貰わなければならない。
馬車を見送る事もせずに、ラーサティアに手を引かれ家に入るとラーサティアは一直線に寝室に向かった。
階段を上がり日差しが差し込む寝室。

「ニクス様、こちらへ……いらしてください」

窓際へ手招きされ、買った紅茶を窓辺の机に置いてから、ラーサティアに近寄るとラーサティアにグイッと思いもよらぬ力で引き寄せられた。

「サティ!」 

バランスを崩しそうになり、ラーサティアを潰さないようにと壁に拳から肘までを突き、身体を支えた瞬間ラーサティアの唇が唇へと触れた。

「ッ!」
「ニクス様お願いです……どうか」

ラーサティアの腕が首の後ろへと回る。
囁くほど小さな声で、お願いしますと繰り返された。

「サティ、急にどうした」
「ニクス様、まだ花を吐かれましたね……治られていないのでしょう?」

何がなど言わなくてもわかる。

「……あぁ」
「なら、唯一治るかもしれないと書物に書かれていました……情交を……いえ、私がニクス様を欲しいのです」
「だが、サティお前はまだ病み上がりなのだ」

スタンピードの直前に、そうなる1歩手前だったのを思い出した。
今、邪魔が入ることは無い。
だが…。 

「ニクス様、医学書を読みました……私では力不足ですか?」
「そんなことは……無い。だが、もう少し時間が必要だろう」

こんなにも細いラーサティアを抱くなどと、想像ができないのだ。
吹けば折れてしまいそうな細い身体に自分を捩じ込むなど。
壊れてしまうのはラーサティアだ。

「大丈夫ですから!ニクス様……少しでもニクス様を不快にさせないように房術も、学びました……書類の知識だけですが」

満足して貰えるように頑張りますからと告げたラーサティアを、俺は抱き上げる。
耐えられないと判断したら止めればいい。
ラーサティアを寝台に寝かせると、その服にそっと手を掛けながら赤く熟れた唇に優しくキスをした。
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