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16話
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「失礼いたします」
俺はできるだけ音を立てずそっと部屋に入る。
入った部屋の中、執務を行う机の上には何もなく辺りを見回すと、右手の応接用のソファーに目当ての人は横になっていた。
「ミゲル様」
苦しそうに呻く額には大粒の汗が浮かんでいる。
皮膚に現れた赤い発疹は異物を身体に入れた証拠で、俺は慌ててミゲル様の手を取った。
「サシャ様……か」
「よかった、意識はありますね?今から診察を行いますのでゆっくり力を抜いてください……そのまま眠って下さっても大丈夫です」
ゆっくり話し掛けながら俺は握った手から力を流していく。
本来ならば少しずつ様子を見ながら行う詐術を、俺はミゲル様なら強靭な肉体だから大丈夫だろうと許可を獲ずに少しだけ無茶をする。
本来なら体内に入った毒を分析してから分解なければならないから。
「あぁ、暖かい」
ミゲル様の呟きに、身体の中から毒が抜けていくのを感じつつ、今回の毒素が自分が解毒できるもので良かったと安堵する。
知らない毒は胎盤が解毒はできても副作用が残ることがある。
今回については何もなく済みそうだとゆっくりとミゲル様を見下ろしながら息を吐いた。
「ミゲル様聞こえますか、ミゲル様は毒に当たったのではなく体調不良からくる腹痛に苦しんでいるのです」
「……あぁ、了解した」
繋いだ手に力が入る。
俺がやっている浄化の力を使い解毒できるのは医師の中でも一握り。
だから、症状を診て浄化が必要だと判断すると、浄化しかできない医師か聖女が呼ばれる。
ただ、生活をしていくうえで重宝されるのはやはり癒し。
だから浄化の力しか持たない医師は形見が狭く、通常ならば医師にならないと言うのだ。
治癒と浄化は聖女の証。
そもそもが、サハルに浄化の力があってはならないのだ。
だから、俺は浄化はしてないよ。
しらばっくれるよ。
だから、腹痛。
腹痛ならば、ミゲル様の自己治癒力と癒しの力でなんとかなったと言い逃れられるからだ。
「解毒はできたようですが、額の汗を拭きましょう」
そっと繋いでいた手を離すと、荒くなっていたミゲル様の呼吸がゆっくりとしたものに戻っていた。
俺は手拭きを濡らしてからミゲル様の額を拭う。
それにしてもどうして毒を?
そう考えていた頃、漸く先程の騎士見習いが薬を手に戻ってきたのだった。
俺はできるだけ音を立てずそっと部屋に入る。
入った部屋の中、執務を行う机の上には何もなく辺りを見回すと、右手の応接用のソファーに目当ての人は横になっていた。
「ミゲル様」
苦しそうに呻く額には大粒の汗が浮かんでいる。
皮膚に現れた赤い発疹は異物を身体に入れた証拠で、俺は慌ててミゲル様の手を取った。
「サシャ様……か」
「よかった、意識はありますね?今から診察を行いますのでゆっくり力を抜いてください……そのまま眠って下さっても大丈夫です」
ゆっくり話し掛けながら俺は握った手から力を流していく。
本来ならば少しずつ様子を見ながら行う詐術を、俺はミゲル様なら強靭な肉体だから大丈夫だろうと許可を獲ずに少しだけ無茶をする。
本来なら体内に入った毒を分析してから分解なければならないから。
「あぁ、暖かい」
ミゲル様の呟きに、身体の中から毒が抜けていくのを感じつつ、今回の毒素が自分が解毒できるもので良かったと安堵する。
知らない毒は胎盤が解毒はできても副作用が残ることがある。
今回については何もなく済みそうだとゆっくりとミゲル様を見下ろしながら息を吐いた。
「ミゲル様聞こえますか、ミゲル様は毒に当たったのではなく体調不良からくる腹痛に苦しんでいるのです」
「……あぁ、了解した」
繋いだ手に力が入る。
俺がやっている浄化の力を使い解毒できるのは医師の中でも一握り。
だから、症状を診て浄化が必要だと判断すると、浄化しかできない医師か聖女が呼ばれる。
ただ、生活をしていくうえで重宝されるのはやはり癒し。
だから浄化の力しか持たない医師は形見が狭く、通常ならば医師にならないと言うのだ。
治癒と浄化は聖女の証。
そもそもが、サハルに浄化の力があってはならないのだ。
だから、俺は浄化はしてないよ。
しらばっくれるよ。
だから、腹痛。
腹痛ならば、ミゲル様の自己治癒力と癒しの力でなんとかなったと言い逃れられるからだ。
「解毒はできたようですが、額の汗を拭きましょう」
そっと繋いでいた手を離すと、荒くなっていたミゲル様の呼吸がゆっくりとしたものに戻っていた。
俺は手拭きを濡らしてからミゲル様の額を拭う。
それにしてもどうして毒を?
そう考えていた頃、漸く先程の騎士見習いが薬を手に戻ってきたのだった。
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