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1章
148話
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「......俺が一緒に......行く訳にはいかないな」
カイルが溜息を吐きながら俺を抱き締める。
「双子もついていくって言うし......俺達の時よりは道も整備して、馬車での移動も出来るようになって来たし、出来ないところは騎馬になるけれど、ミリシャは俺より馬に乗るのが上手いくらいだから問題無いんじゃないかな?後は誰をつけるか......女性を半分は欲しいとは思う。男性ばっかりじゃ気が付かない所もあるかもしれないミリシャはちょっとした旅行だと思っているかもしれないけれど心配だと思うのは過保護かなぁ?」
カイルが過保護だと言うよりも、俺の方が過保護かもしれないななんて先程の竜神との会話を思い出して笑ってしまう。
「テト、心配事はそれだけか?」
「え、何?」
「他には無いのか?」
カイルの優しい声。
「うん。無いけれど」
問われると、俺は首を傾げた。
「さっきも竜神様が俺の体調を気にしてくれたんだ、体調が悪くないかって......俺、元気なのにね?」
「......そうか、なら良いが。少し木陰でお茶にしようかアスミタ」
「ご用意をしてございます」
カイルが手を上げるといつの間にかお茶とお菓子が用意されていた。
「テト、座ろうか」
四阿に用意されているのは、最近好むようになった果実水。少し濃いめの果実が使われた冷たい飲み物だ。
氷が入っていることもあり最初は驚いたのだが、最近水属性ではなく氷属性に顕現した者を重用したのだと聞いた。
水属性だけでも珍しいアルーディアにまさかの氷属性だなんて、驚くことこの上ない。
俺は過去の記憶から氷というものがどんなものが知ってはいたが、恐くアルーディアでは氷自体を見た事も聞いた事もあるものは少ない。
行商人の話で聞くくらいだろう。
「アスミタ、シャラにいつもありがとうと伝えて?俺が飲み物を欲しがる度に氷を作らなきゃならないだろ?無くても飲めるんだから無理を言わなくてもいいよ」
シャラとは、氷属性を持つ女性だ。
王宮の厨房のランスの下で働いているのだが、一度逢ったが優しげな風貌だったのだ。
「畏まりました。ですが、我らが民はカイル様とテト様にお仕え出来る事が誇りですのでお気遣いは無用です」
アスミタの言葉にそれでもお願いと言うと、アスミタはそれ以上は何も言わなかった。
「カイルも少し飲む?冷たくて贅沢なんだけど美味しくて......酸味が少し強いから、すっきりと飲めるよ?」
四阿に並んで腰掛けカイルにグラスを差し出すと、カイルは一口その果実水を飲んでからピクリと眉を動かすも何も言わずに嚥下した。
カイルが溜息を吐きながら俺を抱き締める。
「双子もついていくって言うし......俺達の時よりは道も整備して、馬車での移動も出来るようになって来たし、出来ないところは騎馬になるけれど、ミリシャは俺より馬に乗るのが上手いくらいだから問題無いんじゃないかな?後は誰をつけるか......女性を半分は欲しいとは思う。男性ばっかりじゃ気が付かない所もあるかもしれないミリシャはちょっとした旅行だと思っているかもしれないけれど心配だと思うのは過保護かなぁ?」
カイルが過保護だと言うよりも、俺の方が過保護かもしれないななんて先程の竜神との会話を思い出して笑ってしまう。
「テト、心配事はそれだけか?」
「え、何?」
「他には無いのか?」
カイルの優しい声。
「うん。無いけれど」
問われると、俺は首を傾げた。
「さっきも竜神様が俺の体調を気にしてくれたんだ、体調が悪くないかって......俺、元気なのにね?」
「......そうか、なら良いが。少し木陰でお茶にしようかアスミタ」
「ご用意をしてございます」
カイルが手を上げるといつの間にかお茶とお菓子が用意されていた。
「テト、座ろうか」
四阿に用意されているのは、最近好むようになった果実水。少し濃いめの果実が使われた冷たい飲み物だ。
氷が入っていることもあり最初は驚いたのだが、最近水属性ではなく氷属性に顕現した者を重用したのだと聞いた。
水属性だけでも珍しいアルーディアにまさかの氷属性だなんて、驚くことこの上ない。
俺は過去の記憶から氷というものがどんなものが知ってはいたが、恐くアルーディアでは氷自体を見た事も聞いた事もあるものは少ない。
行商人の話で聞くくらいだろう。
「アスミタ、シャラにいつもありがとうと伝えて?俺が飲み物を欲しがる度に氷を作らなきゃならないだろ?無くても飲めるんだから無理を言わなくてもいいよ」
シャラとは、氷属性を持つ女性だ。
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「畏まりました。ですが、我らが民はカイル様とテト様にお仕え出来る事が誇りですのでお気遣いは無用です」
アスミタの言葉にそれでもお願いと言うと、アスミタはそれ以上は何も言わなかった。
「カイルも少し飲む?冷たくて贅沢なんだけど美味しくて......酸味が少し強いから、すっきりと飲めるよ?」
四阿に並んで腰掛けカイルにグラスを差し出すと、カイルは一口その果実水を飲んでからピクリと眉を動かすも何も言わずに嚥下した。
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