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32話
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自宅に到着した時には王室からの早馬が着いていた。
使者が携えるのは、陛下の紋章の入った手紙。
それを、当主が不在と使者を応接間に通し放置していた義母。
「お帰りなさいあなた。応接に通してありますわ。
お帰りなさいフェンリエッタちゃん!あら、可愛らしい竜ね…婚約おめでとう」
ぎゅうぎゅうと抱き付いてくる義母にフェンリエッタは苦笑しながら抱き締め返す。
「お義母様…」
「大丈夫よ、先に婚約を済ませてしまったのだもの…心配しなくていいのよ?」
何で両親は何も言わなくてもわかってくれるのだろうか。
フェンリエッタは義母を抱き締める。
「さぁ、何が書いてあるか見てみましょうか」
義母の導きにより、全員が応接間に入る。
其処に腰掛けていたのは、近衛騎士団長であった。
「ラウル叔父様!」
優雅にお茶を飲んでいたのは、父の一番下の弟であり、王宮を警護する近衛騎士団の団長であった。
「おぉ、フェンリエッタ!随分と美しくなったな!」
開かれた腕の中に飛び込んでしまうのは、昔からの癖に近い。
ラウルに抱き締められると、フェンリエッタの背中側でコホンと咳払い。
慌ててフェンリエッタは離れると、そっと淑女の礼を取った。
「ラウル、フェンリエッタの婚約者であるベルナルドくんだ」
「初めまして、ベルナルド・リコリスと言います。隣国からの留学で来ています」
「ラウル・ゲンティアナだ。近衛騎士団の騎士団長をしている。ゲンティアナ家の分家に養子に行ったが、侯爵の末の弟だ」
簡単に挨拶を済ませると、全員が座り直す。
「で、ラウル…まぁいい、セバス全員にお茶を」
侯爵が手を上げると、すでに侍女達がお茶を配り始めた。
全員が席につきお茶を一口飲んでから、侯爵がペーパーナイフで封を切った。
そして順番にその手紙を回し読んで全員揃って溜め息を吐いた。
「これが、この国の王か?」
「あの、王あっての王子なのかしら…」
「流石に酷いな…」
「「はぁ…」」
5人の口からは否定的な言葉しか出ない。
………要約すると、王子の側室が嫌ならば、私(王)の側室になれ。
「で、兄貴どうするんだ?」
砕けた言葉で話すラウルは年が離れた兄弟のため、年齢的にはフェンリエッタ達に近い。
足を組んで天井を見上げると、溜め息を吐いた。
「勿論、ベルナルドくんとの婚約が先だからな」
「じゃ、断り入れるんだろ?手紙書いたら持ってくけど一戦やらかすんなら兵力動員するから声掛けろよ?」
「わかっている。影達にも話はつけてあるし…」
「私の方も段取りはできているもの…」
「義姉さんが動いてるんなら俺のやることはほぼねぇな…」
大人達の主語のない会話を聞きながら、フェンリエッタは少しだけ両親を怖いと思ってしまうのだった。
使者が携えるのは、陛下の紋章の入った手紙。
それを、当主が不在と使者を応接間に通し放置していた義母。
「お帰りなさいあなた。応接に通してありますわ。
お帰りなさいフェンリエッタちゃん!あら、可愛らしい竜ね…婚約おめでとう」
ぎゅうぎゅうと抱き付いてくる義母にフェンリエッタは苦笑しながら抱き締め返す。
「お義母様…」
「大丈夫よ、先に婚約を済ませてしまったのだもの…心配しなくていいのよ?」
何で両親は何も言わなくてもわかってくれるのだろうか。
フェンリエッタは義母を抱き締める。
「さぁ、何が書いてあるか見てみましょうか」
義母の導きにより、全員が応接間に入る。
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「ラウル叔父様!」
優雅にお茶を飲んでいたのは、父の一番下の弟であり、王宮を警護する近衛騎士団の団長であった。
「おぉ、フェンリエッタ!随分と美しくなったな!」
開かれた腕の中に飛び込んでしまうのは、昔からの癖に近い。
ラウルに抱き締められると、フェンリエッタの背中側でコホンと咳払い。
慌ててフェンリエッタは離れると、そっと淑女の礼を取った。
「ラウル、フェンリエッタの婚約者であるベルナルドくんだ」
「初めまして、ベルナルド・リコリスと言います。隣国からの留学で来ています」
「ラウル・ゲンティアナだ。近衛騎士団の騎士団長をしている。ゲンティアナ家の分家に養子に行ったが、侯爵の末の弟だ」
簡単に挨拶を済ませると、全員が座り直す。
「で、ラウル…まぁいい、セバス全員にお茶を」
侯爵が手を上げると、すでに侍女達がお茶を配り始めた。
全員が席につきお茶を一口飲んでから、侯爵がペーパーナイフで封を切った。
そして順番にその手紙を回し読んで全員揃って溜め息を吐いた。
「これが、この国の王か?」
「あの、王あっての王子なのかしら…」
「流石に酷いな…」
「「はぁ…」」
5人の口からは否定的な言葉しか出ない。
………要約すると、王子の側室が嫌ならば、私(王)の側室になれ。
「で、兄貴どうするんだ?」
砕けた言葉で話すラウルは年が離れた兄弟のため、年齢的にはフェンリエッタ達に近い。
足を組んで天井を見上げると、溜め息を吐いた。
「勿論、ベルナルドくんとの婚約が先だからな」
「じゃ、断り入れるんだろ?手紙書いたら持ってくけど一戦やらかすんなら兵力動員するから声掛けろよ?」
「わかっている。影達にも話はつけてあるし…」
「私の方も段取りはできているもの…」
「義姉さんが動いてるんなら俺のやることはほぼねぇな…」
大人達の主語のない会話を聞きながら、フェンリエッタは少しだけ両親を怖いと思ってしまうのだった。
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