香死妃(かしひ)は香りに埋もれて謎を解く 

液体猫

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金明《ジンミン》妃の侍女

男だから

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 普通に会話をしていたはずなのに、彼は唐突に焦りだす。耳の先まで真っ赤になりながら、視線を泳がせていた。あーだの、うーだのと唸って、香 麗然コウ レイランから目を背ける。
  
 そんな不可解な行動を取る彼に、香 麗然コウ レイランは眉を潜めた。怪訝けげんな表情になり、いったい何んだと小首を傾げる。

「……き、君は、もっと恥じらいを覚えるべきだ!」

 そう言いながらも彼の目線は香 麗然コウ レイランの一点たけを見ていた。かと思えば視線を外し、また戻すという、謎の行動をとっている。チラリ、またチラリと、横目に覗いては赤面していた。
 次の瞬間、勢いよく立ち上がる。そしてあろうことか、着用していた革鎧を脱ぎ始めた。

「は? はぁー!? ちょっ……なんば、しとうとね!?」

 今度は香 麗然コウ レイランの顔がタコのように真っ赤になってしまう。両手で顔を隠しつつも、指と指の間からのぞきこんだ。

 (ほ、本当になんね!? まさか、乙女を襲うつもりじゃなかと!?)

 これは犯罪。下手をすれば婦女暴行だ。そう、忠告しようとした瞬間──
 曹朱ツァオジュは上着だけを脱いでそれを香 麗然コウ レイランの両肩にかける。

「……へ?」

 突然のことに、すっ飛んきょうな声しか出なかった。  彼を見れば、何とも言えない赤面顔になっている。

「……君はもう少し、自分を大切にした方がいい」

「え? な、何の話?」
 
「……こほんっ!」

 曹朱ツァオジュの視線は相変わらずどっちつかずだ。けれど恥をしのぐ覚悟ができたようで、赤面しながら香 麗然コウ レイランを見つめた。

「その……何だ……き、君はかなり大きいようだ。その服では薄すぎて、む……む……」

「む?」

「む、胸が、かなり目立ってしまっているぞ!」

 木々にとまっていた鳥たちがびっくりして飛び立ってしまうほど、いつにない大声だ。言った本人はさらに赤面する。そしてふらふらと歩きながら、どこかへと行ってしまった。

 残された香 麗然コウ レイラン曹朱ツァオジュの上着を取って、丁寧にたたむ。そしてしばしの間、呆然としながら座った。

「……あー。なるほど。私のこれ・・が、気になっていたのね?」

 言われた本人はあっけらかんとしていた。きょとんとはしていても、慣れた様子で呟く。
 香 麗然コウ レイランの胸囲はかなり大きかった。金明ジンミン妃の侍女たちが羨むほど。

「……んー。まあ別に、いいか」
 
 自身のそれを見下ろした。

 (ふふ。 能面に近かった曹朱ツァオジュの表情が  崩れたのを見れたし)

 ふふっと、何事もなかったかのように笑う。 そのとき、夕刻を知らせる鐘の音がなった。同時に、彼女のお腹の虫が鳴る。

「ああ……もう、夕食ゆうげの時間か。着替えて、食堂行こうかな」

 支給された妓女の服は一着しかなかった。これを汚すと明日の仕事ができなくなる。それを恐れた彼女は念のため、一旦着替えることにした。
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