至高の騎士、動きます〜転生者がこの世界をゲームと勘違いして荒らしてるので、最強騎士が分からせる〜

nagamiyuuichi

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コカトリス襲来

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 馬車の旅は優雅なものであり、あまり揺れない馬車の中で、私たちは札遊びをしたり、旅の思い出や遺跡についての話をしながらお酒を交えつつまるで旅行のように移動をする。

 空は快晴、雲一つない空の下、馬車の窓はそんなのどかな空気を吸い込んでは……私たちにいろいろな香りを教えてくれる。

「そういえば、これから向かうノエールズ地方ですが、どんなところなんです?」

 札遊びもひと段落し誰もが少し暇を持て余し始めたころに、私はそうギルドの方に問いかけると。

「そうだな、言ってしまえばど田舎さ」

 そう、アッガスさんは一言でまとめてくれた。

「田舎ですか」

「あぁ、あるのは小さな村がちらほらあるだけだ……名産は羊毛と畜産、そして葡萄酒だ。何もない代わりに、何も起こらない……のどかで平和な場所だよ」

「それは素敵な場所ですね」

 窓の外を見ても、この世界が滅びかけているなど到底思えないような快晴……だけど、その脅威は着実に、そして確実に近づいているのだ。

 そんなことを考えていると。

【ピーーーーーー!!】

 笛のような、甲高い音が私たちの馬車に突き刺さるように響き、同時にアッガスさんは大剣を取り顔色を変える。

「この音は?」

 私は、突然の音に不意にアッガスさんに質問をすると、アッガスさんは窓から顔をだし。

「外を馬で先行しているやつらからの合図だ……どうやら仕事の時間らしい」

 そう呟いた。

 つられて窓から外を覗いてみると、確かに遠くに何か獣の群れのようなものが見える。

 馬でもサイでもない……独特な形状をした鳥のような姿……。

「あれは……」

「コカトリスだな、ここいらじゃ滅多にない大物だ、おおよそ地揺れに驚いて逃げてきたんだろう。おい馬車を止めろ、迎撃する!」

「はーいよーっと」

 流石はギルドの精鋭といったところか、魔物の群れとの遭遇にも慌てることなく、運転手は冷静に馬をなだめて馬車を止め、アッガスさんは大剣をもってゆるりと馬車の外に出る。

 私もそれにつられて、外に出るが、すでにギルドの方々はコカトリスと交戦中のようで、皆が皆それぞれの方法で襲い掛かる群れを防いでいる。

「そこで見ててくれよ嬢ちゃん! ~悠久の風~のボス、アッガスが一番勇敢で仕事をしていましたって証言してもらわねえとならねえんだからな!」

 アッガスはそうにやりと笑うと。

『そっちに行ったぞ!!』

 側面部から声が上がり、声の方より奇声を上げてこちらに迫るコカトリスの姿があった。
見た目は巨大な鶏であり、尾は蛇の猛毒を持つ草原の魔物……その力は強く、尾の蛇の毒はサイクロプスでさえも死亡させるほどの猛毒。

 旅の商人に恐れられる魔物の一つであり、群れなどと遭遇したら逃走をするのが定石だ。

 だが。

「任せろぉ!!」

 アッガスさんは大声を響かせ、同時に刃を振り上げる。

 身の丈ほどの大剣、重厚で刃物というよりも鈍器に近いその剣をアッガスさんは軽々と持ち上げ。

【くけええーぇ!】

 飛び掛かるように翼を広げ襲い掛かるコカトリスに向かって真正面から振り下ろす。

【戦技・鬼人斬!】

 切る、というよりかは叩き潰すという表現が一番しっくりくるだろう。

 そんな轟音とともに、目前にあったコカトリスは、吹き飛ばされ両断される。

「まだまだあぁ!」

 それだけではない、続けて走る二匹目、三匹目も刃の勢いは収まることなくコカトリスが次々に宙を舞っていく。

「……ふぅ! これは、支払いにボーナスもつけてもらえるよな!嬢ちゃん!」

 瞳を輝かせ、コカトリスの死亡を確認し、アッガスはそう笑いながら大剣の血をぬぐう。

 流石は、ギルドの冒険者たちを束ねる存在というべきか……騎士団であっても一個小隊を引き連れて討伐に当たる怪鳥を……単身、しかもただの一振りで三匹も撃退するなんて。

『こっちも終わったぞー』

 そんな声が遠くから響き、周りを見てみるともはやその草原に立っているコカトリスは一匹もいなかった。

 彼の実力……いや、彼らの実力は疑いようもない。

 私はそんな安堵に息を一つついたのであった。

                     ◇

 コカトリスの肉はその場で解体され、食料として馬車で運ぶことになった。

 血抜きや加工に時間がかかってしまい、出発時には夕方になってしまっていたが、アッガスさんいわく、こういった妨害も織り込み済みであるとのことらしい。

 その次の日から、本格的に旅が再開したわけであるが、そこからの道中は平和そのもの。
本来であれば、ゴブリンの襲撃やオオカミの群れと何度か鉢合わせになることが多いのだそうだが……コカトリスの襲撃が幸いしたのだろう。その匂いにおびえて、このあたりの魔物が近づいてくることはなく、オオカミの遠吠え一つ聞くことなく、私たちは目的地のノエールズ地方へと侵入をした。

「遺跡の調査の間は、キャンプで拠点を作ってそこで生活をすることになる。ある程度の食料や生活用品は持ってきちゃいるが……何せこの人数だからな、適宜補給係は国境付近の町まで物資の買い出しに向かってもらうことになる。馬車でもおそらく往復で半日はかかるが、残念ながらこの辺りで一番近い町はそこしかない」

 日は傾き、草原はオレンジ色に染め上げられるころ、目的の場所が近づいてきたためか、アッガスさんは馬車の中にいる人たちとともに打ち合わせを始める。

「遺跡の調査ってどれぐらいかかるんです? サクヤ様」

 隣でその説明を聞いていると、不意に冒険者の一人がそんな質問を私に投げかけて来た。

「スケッチだけでは何とも言えません。ただ長くて一週間……短くても三日ほどはかかると思います」

「まぁ妥当な期間だな。遺跡の危険度は、現地からの情報ではCランク。罠はちらほらあるものの、魔物はほとんど出ないそうだ」

「となると、遺跡は老朽化していて、大人数で入ると重要な資料が破損してしまう可能性があります……少人数で探索に当たり、残りは拠点の防衛をお願いしたいんですけれど」

「ごもっともな意見だ、俺たち冒険者は壊すのは得意だが、調べ事じゃからっきしだからな。危険も少ないみたいだし、同伴は俺ともう二人ほどの人員で行こう。残りは拠点の確保と、地揺れでどれだけの影響がこの辺りに出てるかの調査だ」

 アッガスの言葉に、私はきょとんとする。

「……そんな調査も依頼されていたんですね?」

「まぁな、近場にまとまっているクエストは、まとめて回収するほうが効率的だろう?」

 物のついで扱いされているともいうが……しかし地揺れによる影響の調査は我々騎士団から見ても重要な役割でありデータであるため何も言うまい。

 私はこくりとうなずくと、ギルドの人々も話がまとまったとうなずき返して打ち合わせは終了をする。

と。

「到着だーよーっと」

 馬の嘶きと同時に、運転手の声が響き渡り馬車が停車する。
 
 どうやら目的地に到着をしたようであり、私は馬車の窓から外を覗いてみると。

「……これは……」

 そこに建てられてあったのは遺跡。

 まるで最初からそこに建ってたとでも言いたげにそびえたつそのキューブ型の遺跡は、この世界に存在する建築物とは到底思えない形状であり、のどかな草原の風景を侵食するかのようにそびえたつ。

 つなぎ目も、くみ上げた様子も何もないまるで、その建物の形をした石をくりぬいたかのような形。

 つくりはシンプルであるが、その形や異様さは、私が今まで見てきた異世界の造形物の中でも飛びぬけて異質であり、その建物を見た私は息をのむ。

 地揺れにより発生した断層から発見されたものとばかり思っていた私であったが、あたりに断層はなく、まるで地面からせせりあがってきたかのよう。

 草原の中にぽつりと遺跡は立っているが、あちらこちらに地割れが起こっていることや、遺跡の周りの土が不自然に盛り上がっていることから、状況的にもこれが地揺れの影響で出現したことは理解できるが、どうしてこのような出現の仕方をしたのかまでは、誰も説明はできないであろう。


嫌な予感がする。


 異質な出で立ち、そして何よりもその建物から放たれる不気味な気配に私は理由は分からないが全身に怖気が走る。

「よーし、この辺りにテントを立てるぞ。 日が暮れてからだと何かと厄介だ、沈み切る前に終わらせちまえ」

【へーい】

 しかし冒険者たちはその異質さを気にすることもなく、てきぱきと馬車から荷物やテントを引っ張り出し遺跡探索の準備を進めていく。

 見慣れているからか、それともこれを異質と感じられないのか……。

「どうしたんだ嬢ちゃん? ぼーっとして」

「あ、いえ……すみません手伝います」だが、私はそのことを聞くことができず……そのまま流されるままにテントの設置の準備を手伝うことにしたのだった。

                 ◇4
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