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遺跡探索
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〈探索当日〉
「やあやあ、久しぶりだったけどご機嫌はいかがかなレディ?」
テントで旅の疲れをいやした次の日の朝、遺跡の前で私たちは魔術研究局からの連絡を待っていると、律義にも時間ピッタリに局長は通信を入れてくる。
相も変わらずふざけた調子であったが、その目には前よりも濃いクマが浮かんでいる。
「また徹夜ですか局長?」
「まぁね、君というブレーンがいなくなってしまうと、仕事は全部僕一人でやる羽目になるからね! 本当はグータラ仕事を誰かに押し付けたいんだけどそうもいかなくて。ほら、僕人望ないから」
「はぁ、その軽口が少しでも改善されれば幾分かましになるとは思うんですけどねぇ。まぁ、体力が限界なのはいいですけど、途中で居眠りとかしたら騎士団長にチクりますからね」」
「そこのところは大丈夫さ、三日や四日徹夜したくらいで転寝をするようなら、魔術研究局局長なんて役職任せてもらえないよ! 気にせずに遺跡の調査に当たってくれ。僕はこっちから君をバックアップする……一応、ほかの人たちにも通信をつなげておいたんだけど、ギルドの方々は聞こえているのかな?」
「あぁ、聞こえていますよ局長殿……。大事な部下の安全は保障します、その代わり支払いはしっかりお願いしますぜ」
「そりゃあもう。なんでもお金で解決できるなら糸目はつけないさ、それが大事な依存……部下の身の安全ともなればなおさらさ」
「そりゃありがたい。金さえもらえれば俺たちは何も文句はありませんよ、そちらの指示に従いましょう」
アッガスはそういうと、通信を続けながら遺跡の入り口前へと足を運ぶ。
黒色の石で作れたキューブ状の遺跡は、まるで一つの石をくりぬいて建物にしたかのようにつなぎ目も何もなく、
その表面を時折光の筋が伝い上っていく。
触れるとひんやりとし、その光に触れても何も起こりはしないが、その不気味な出で立ちと、真っ暗な入口は生き物の口なのではないかと錯覚してしまうほど恐ろしくおぞましい。
「いつもと変わらない異世界の遺跡のように見えるけど……やけにシンプルだね」
通信機越しに私の視界を共有する局長は、私と似た感想を漏らす。
「ええ、シンプルですが、何かありそうです」
今までいろいろな異世界の遺跡を探索した。
転生者の建築様式はとても独特で、おおよそこの世界のどこの国にも類する建物はなく、それが異世界の物かこの世界の物かの判別は容易である。
しかし、それでも誰かが住んでいたのだろうと思わせる痕跡も、その建物がどんな目的で作られたのかもなんとなく理解できた。
だが今回のこれはその痕跡もなければ、なんのための建物なのかも不明だ。
ただの立方体。シンプルだが、ゆえに異常性が伺える。
「現場にいる君もそう感じるならば、おそらく何かあるのかもしれない危険はないとは思うけど、重要な情報があるかもしれない、慎重に頼むよ、サクヤ君」
局長も何かを映像越しに感じたのか、息をのむ音が耳元で響く。
「はい……では、探索を開始します」
「内部の構造をスキャンして、マップを作成することはできないけど、彼女の周りの情報を通じてマッピングをすることはできるし、半径十メートル範囲くらいならこちらで罠の探知等はできるから、安心して中に入ってくれたまえ」
「そりゃあ心強い、頼みますよ、局長殿」
アッガスさんは口ではそういうものの、さほどあてにはしていないといった様子で大剣を取ると、そのまま先行して遺跡の中へと入っていく。
長年大地の中に閉じ込められていたというのに、老朽化はそこまで進んでいない遺跡は、私たちを拒むことなく、進入を許したのであった。
「ふむ、暗いな」
中に入ると、そこには闇が広がっていた。
地表に出てきた建物だというのに、窓の一つもないのか、一筋の光もその建物の中には差し込んでおらず、一メートル先も見渡せない状況であり、腰に備えていたランタンのみが、その空間の中での唯一の明かりとなっていた。
「松明を」
アッガスさんはそういうと、ランタンから松明に火を移し、掲げる。
そこには迷宮が広がっていた。
家具や人が住まうような施設は見受けられず、ただ一本の通路が広がっており、数メートルもいかない間に、意味があるようには見受けられない曲道がある。
「つくりはこの世界のダンジョンに近い、無意味に曲がり角を増やして、方向感覚を狂わせるのが狙いだ。罠があるという報告もあるけど、これはもしかしたら転生者にとっても重要な場所かもしれないよ」
興奮気味に語る局長。その言葉に私もひとつ胸を高鳴らせ、自分も松明をもって壁や床を調べる。
「壁や床には、特に文字とかしかけはなさそうです……どうやら奥に進まないと何もなさそうですね」
「そのようだね……とにかく奥に進んでみるしかないだろう。 罠があればこちらで探知するけど、念のため気を付けて」
「はい」
局長の言葉に私は一つうなずいて、アッガスさんたちとともに迷宮の奥へと歩を進めていった。
◇5
「やあやあ、久しぶりだったけどご機嫌はいかがかなレディ?」
テントで旅の疲れをいやした次の日の朝、遺跡の前で私たちは魔術研究局からの連絡を待っていると、律義にも時間ピッタリに局長は通信を入れてくる。
相も変わらずふざけた調子であったが、その目には前よりも濃いクマが浮かんでいる。
「また徹夜ですか局長?」
「まぁね、君というブレーンがいなくなってしまうと、仕事は全部僕一人でやる羽目になるからね! 本当はグータラ仕事を誰かに押し付けたいんだけどそうもいかなくて。ほら、僕人望ないから」
「はぁ、その軽口が少しでも改善されれば幾分かましになるとは思うんですけどねぇ。まぁ、体力が限界なのはいいですけど、途中で居眠りとかしたら騎士団長にチクりますからね」」
「そこのところは大丈夫さ、三日や四日徹夜したくらいで転寝をするようなら、魔術研究局局長なんて役職任せてもらえないよ! 気にせずに遺跡の調査に当たってくれ。僕はこっちから君をバックアップする……一応、ほかの人たちにも通信をつなげておいたんだけど、ギルドの方々は聞こえているのかな?」
「あぁ、聞こえていますよ局長殿……。大事な部下の安全は保障します、その代わり支払いはしっかりお願いしますぜ」
「そりゃあもう。なんでもお金で解決できるなら糸目はつけないさ、それが大事な依存……部下の身の安全ともなればなおさらさ」
「そりゃありがたい。金さえもらえれば俺たちは何も文句はありませんよ、そちらの指示に従いましょう」
アッガスはそういうと、通信を続けながら遺跡の入り口前へと足を運ぶ。
黒色の石で作れたキューブ状の遺跡は、まるで一つの石をくりぬいて建物にしたかのようにつなぎ目も何もなく、
その表面を時折光の筋が伝い上っていく。
触れるとひんやりとし、その光に触れても何も起こりはしないが、その不気味な出で立ちと、真っ暗な入口は生き物の口なのではないかと錯覚してしまうほど恐ろしくおぞましい。
「いつもと変わらない異世界の遺跡のように見えるけど……やけにシンプルだね」
通信機越しに私の視界を共有する局長は、私と似た感想を漏らす。
「ええ、シンプルですが、何かありそうです」
今までいろいろな異世界の遺跡を探索した。
転生者の建築様式はとても独特で、おおよそこの世界のどこの国にも類する建物はなく、それが異世界の物かこの世界の物かの判別は容易である。
しかし、それでも誰かが住んでいたのだろうと思わせる痕跡も、その建物がどんな目的で作られたのかもなんとなく理解できた。
だが今回のこれはその痕跡もなければ、なんのための建物なのかも不明だ。
ただの立方体。シンプルだが、ゆえに異常性が伺える。
「現場にいる君もそう感じるならば、おそらく何かあるのかもしれない危険はないとは思うけど、重要な情報があるかもしれない、慎重に頼むよ、サクヤ君」
局長も何かを映像越しに感じたのか、息をのむ音が耳元で響く。
「はい……では、探索を開始します」
「内部の構造をスキャンして、マップを作成することはできないけど、彼女の周りの情報を通じてマッピングをすることはできるし、半径十メートル範囲くらいならこちらで罠の探知等はできるから、安心して中に入ってくれたまえ」
「そりゃあ心強い、頼みますよ、局長殿」
アッガスさんは口ではそういうものの、さほどあてにはしていないといった様子で大剣を取ると、そのまま先行して遺跡の中へと入っていく。
長年大地の中に閉じ込められていたというのに、老朽化はそこまで進んでいない遺跡は、私たちを拒むことなく、進入を許したのであった。
「ふむ、暗いな」
中に入ると、そこには闇が広がっていた。
地表に出てきた建物だというのに、窓の一つもないのか、一筋の光もその建物の中には差し込んでおらず、一メートル先も見渡せない状況であり、腰に備えていたランタンのみが、その空間の中での唯一の明かりとなっていた。
「松明を」
アッガスさんはそういうと、ランタンから松明に火を移し、掲げる。
そこには迷宮が広がっていた。
家具や人が住まうような施設は見受けられず、ただ一本の通路が広がっており、数メートルもいかない間に、意味があるようには見受けられない曲道がある。
「つくりはこの世界のダンジョンに近い、無意味に曲がり角を増やして、方向感覚を狂わせるのが狙いだ。罠があるという報告もあるけど、これはもしかしたら転生者にとっても重要な場所かもしれないよ」
興奮気味に語る局長。その言葉に私もひとつ胸を高鳴らせ、自分も松明をもって壁や床を調べる。
「壁や床には、特に文字とかしかけはなさそうです……どうやら奥に進まないと何もなさそうですね」
「そのようだね……とにかく奥に進んでみるしかないだろう。 罠があればこちらで探知するけど、念のため気を付けて」
「はい」
局長の言葉に私は一つうなずいて、アッガスさんたちとともに迷宮の奥へと歩を進めていった。
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